VMwareからAzureへの移行方法とユースケース

VMwareのライセンス体系の変更や保守費用の増加は、仮想化基盤を見直すきっかけになります。移行先の候補となるMicrosoft Azureには、既存のMicrosoft製品と連携できることや、VMware環境を維持したまま移行できる利点があります。 移行方法によって、必要な作業や費用、移行後の運用は異なります。本記事では、Azureへの移行を検討する背景と代表的な4つの方法を解説し、企業のユースケースを交えてAzureを選んだ理由や移行後の効果を紹介します。

関連記事:VMwareの移行先を選ぶ際の比較

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1. VMwareからAzureへの移行を検討する背景


VMware環境の見直しには、保守費用だけでなく、運用負荷や業務の変化への対応も関わっています。

Broadcom買収による影響

BroadcomによるVMware買収後、ライセンス体系や製品構成の変更が発表されました。永続ライセンスからサブスクリプションへの移行や、更新時の費用増加への懸念が、既存環境を見直すきっかけとなっています。

参考:VMwareのライセンス変更に関する公式案内

業務の変化とクラウドの利用

DXの推進やリモートワークへの対応に伴い、インフラにも柔軟性や拡張性が求められます。オンプレミスの既存構成では対応が難しい場合、必要に応じてリソースを増減できるクラウドが選択肢になります。

なかでもAzureは、既存のMicrosoft製品との親和性が高いクラウドです。Windows ServerやActive Directoryを利用している企業にとって、既存環境との連携を保ちながら移行を進められる点が利点です。VMware環境をAzure上で継続して利用できるAzure VMware Solution(AVS)も、Azureを選ぶ理由の一つです。

参考:Azure上でのActive Directoryの構築

 

2. VMwareからAzureへ移行する4つの方法


VMwareからAzureへの移行には、目的やシステム上の制約に応じて4つの代表的な方法があります。まず、それぞれの特徴を比較します。

方法 特徴 移行難易度の目安 費用の考え方 向いている企業
リフトアンドシフト 既存の仮想マシンをほぼ変更せず移行 低い 初期費用を抑えやすい。運用費用は構成次第 クラウド移行を優先し、短期間で移行したい企業
リプラットフォーム 基本構成を維持し、一部を最適化 中程度 一部の改修費用が必要。運用費用の削減を図る 運用負荷や費用を改善しながら段階的に移行したい企業
リファクタリング クラウド向けにアプリケーションを改修・再設計 高い 初期の開発費用が大きい。長期的な最適化を図る 開発体制があり、拡張性・可用性を高めたい企業
AVSの活用 VMware環境をAzure上で継続 改修が少なく、比較的低い 最低構成分の基盤利用料とライセンス費用が必要 既存の運用スキルやツールを活用したい企業

難易度はアプリケーションの変更範囲を中心とした目安です。実際の作業や費用は、システムの構成・規模・接続先によって異なります。

リフトアンドシフト

既存の仮想マシン構成やアプリケーションをほぼ変更せずにAzureへ移行する方法です。大規模な改修を伴う方法より短期間で移行できるため、まずクラウドへの移行を優先したい場合に適しています。

一方、既存の構成を引き継ぐだけでは、クラウドに適したリソースの使い方にならないこともあります。移行後に構成や利用状況を見直し、運用費用を最適化することが前提になります。

リプラットフォーム

アプリケーションの基本構成を維持しながら、一部をクラウド向けに最適化する方法です。たとえば、データベースの基盤管理をサービス提供者が担うマネージドサービスへ移行し、運用負荷や費用の改善を図ります。

既存構成をほぼ変更しないリフトアンドシフトに比べ、サービスの変更によって運用を改善する余地があります。全面的な再設計ほどの改修負担はないため、既存のアプリケーションを使い続けながら改善を進めたい企業に適しています。

リファクタリング

クラウドの特性を活用するために、アプリケーションを改修・再設計する方法です。アプリケーションを実行環境ごとまとめるコンテナ化や、機能ごとに独立したサービスへ分けるマイクロサービス化などを検討し、拡張性や可用性の向上を図ります。

ただし、開発工数が増え、期間も長くなるため、中長期的なシステム更改や開発計画に合わせて検討する必要があります。

※構造の再設計は、Microsoftの移行戦略の分類では「リアーキテクト」に当たります。

Azure VMware Solution(AVS)の活用

AVSは、VMware環境をAzure上で利用するサービスです。既存の運用スキルやツールを活用できるため、アプリケーションや運用の変更を抑えながらクラウドへ移行できます。

AVSへ移行した後、システムごとにAzureの各種サービスへ段階的に移行することも可能です。既存環境の継続利用と、将来のクラウド活用を両立する方法として検討できます。

費用は仮想マシン単位ではなく専用基盤の構成に応じて発生するため、少数の仮想マシンを移行する場合も最低構成分の費用が必要です。規模に応じた費用の比較では、AVSの料金条件を確認し、基盤利用料にVMwareのライセンス費用を加えて試算します(料金条件は2026年9月5日確認)。

詳しくは、Azure VMware Solutionの概要資料をご覧ください。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

移行方法を費用で比較する際は、改修や動作試験などの初期費用と、移行後の利用料・保守費用を分けて試算してください。運用費用は同じ利用期間でそろえると、初期費用を含めた総額で比較できます。

すべてのシステムに同じ移行方法を適用する必要はありません。次の事例では、移行できるシステムとオンプレミスに残すシステムを分け、段階的にAzureへの移行を進めています。

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3. VMwareからAzureへの移行ユースケース


当社が支援した企業の事例をもとに、検討のきっかけ、これまでの移行による効果、他の選択肢との比較、今後の方針をご紹介します。社名・業種・規模を特定できる情報は掲載していません。

検討のきっかけ

同社は、オンプレミスのVMware環境を中心にインフラを運用していましたが、2015年頃から段階的にAzureへの移行を進めていました。ただし、次の理由から全面移行には至らず、Azureとオンプレミスを併用していました。

  • OSが古く、クラウドへの移行が難しいシステムがあった。
  • オンプレミスを前提としたシステム連携があり、通信や構成に制約があった。
  • 一部のシステムは、業務要件上クラウド化が難しかった。

その後、BroadcomによるVMware買収に伴って保守費用が増加し、オンプレミスに残るシステムの運用を見直すことになりました。同社が検討したのは、次の3つの選択肢です。

  • 高額な保守費用を支払い、VMware環境を継続する。
  • 他の仮想化基盤へ移行する。
  • 保守を見直しながら、Azureへの移行をさらに進める。

検討の結果、同社は業務を継続できる範囲で保守を見直し、Azureへの移行を進めることにしました。すぐに移行できないシステムはオンプレミスに残し、保守契約の見直しとバックアップ体制の整備によってリスクを抑えています。

移行による効果

これまでのAzureへの移行で、同社には主に4つの運用上の改善がありました。

  • 属人化の解消 VMware環境では特定の担当者2名に運用が依存しており、体制を継続できるかという不安がありました。Azureへの移行後は、操作性の向上と作業の標準化が進み、特定の担当者に依存しない運用が可能になっています。
  • 運用負荷の軽減 インフラの構築・管理が簡素化され、高度な専門知識を持つインフラ専任者を継続して確保しなくても、限られた人員で安定した運用ができるようになりました。
  • 障害対応の負担軽減と安定性の向上 同社は従来より障害の発生頻度が減ったと感じており、日常の障害対応にかかる負担も軽減したと評価しています。
  • BCP対応の強化 従来は自社で設計・運用していたバックアップや災害対策に、Azureの機能を利用するようになりました。同社は、可用性や冗長性を確保するための対策を以前より効率的に実施でき、事業継続計画(BCP)への対応にも効果があったと評価しています。

他の選択肢との比較

同社は、Azure以外の移行先としてNutanixとHyper-Vも検討しました。

Nutanixは移行ツールが整備されており、同社は移行の難度を比較的低いと評価しました。一方、費用面で大きな優位性はなく、オンプレミスでの運用を継続する点が課題となりました。同社はHyper-Vを費用面では有利と評価したものの、利用したいサービスへの対応や拡張性には制約があり、将来の柔軟性に懸念がありました。

これらを比較した結果、同社は仮想化基盤の置き換えに加え、クラウドへの移行を進める方針を重視しました。Azureについて評価したのは、次の点です。

  • 既存のMicrosoft製品との親和性が高く、移行後の運用を想定しやすい。
  • 段階的な移行が可能で、オンプレミスとも併用しやすい。
  • 将来的にPaaSなどの利用を広げる基盤として適している。

移行作業や費用の面でも、Azureは現実的な選択肢と判断されました。同社は、クラウドの利用を前提とした中長期的なインフラ戦略として、Azureへの移行を選択しています。

今後の方針

今後2〜3年で、オンプレミスに残るシステムの更改時期に合わせて、Azureへの移行を進める計画です。

また、仮想マシンを利用するIaaS中心の構成から、アプリケーションの実行基盤をサービスとして利用するPaaSへの移行も検討しています。セキュリティ対策と運用の効率化を目的に、システムの更改時期に合わせて段階的に構成を見直す方針です。

 

4. まとめ


VMwareからAzureへの移行は、今後のIT戦略の柔軟性を高める選択肢です。既存環境を活用しながら段階的に移行し、将来のPaaS利用などへつなげられます。特に、次のような課題や方針を持つ企業に適しています。

  • VMwareの保守費用の増加に課題を感じている。
  • オンプレミスでの運用からクラウドへ移行したい。
  • クラウドの利用を段階的に広げたい。

自社に適した移行方法や、移行にかかる費用・影響を事前に把握したい企業に向けて、双日テックイノベーションでは現状可視化から今後の方針整理までを支援しています。

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この記事を書いた人

斉藤 朋子
斉藤 朋子