移行先の向き不向きを整理する

本記事のポイント

    1. 向き不向きを決めるのは、既存の環境と運用の体制と規制の3つ
    2. Azure が向くのは、Microsoft 製品が中心でインフラを自社で持たない企業
    3. Nutanix が向くのは、オンプレミスを維持したまま運用の手間を減らしたい企業
    4. VMware の継続が現実的なのは、停止時間を確保できない業務を多く抱える企業

移行先を4つまで絞ったところで、検討が止まることがあります。機能の比較表は作れても、どの列が自社にとって重いのかが決まらないためです。向き不向きを決めるのは製品の機能ではなく、既存の環境、運用を担う人数、規制の3つです。この3つを先に確認すれば、4つのうち検討の対象になるのは1つか2つに絞れます。

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1. 機能の比較だけでは決まらない


VMware の依存を減らす動きは、一部の企業に限った話ではありません。CloudBolt が2026年1月に北米の従業員1,000人以上の企業のIT意思決定者302人を対象に実施した調査では、86%が VMware の利用を減らしていると回答しました。ただし、一度に全部を移す動きではありません。同じ調査では、54%が VMware を使い続けながら依存を減らすと答えています。Gartner は、2028年までに VMware のワークロードの最大35%が他の基盤へ移るという予測を示しています。

移行先を機能で比べると、どれも要件を満たしているように見えます。判断が止まるのは、比較の前提が企業ごとに違うためです。

  • 既存の環境: Windows が中心か Linux が中心か。ストレージとネットワークをどう組んでいるか
  • 運用体制: 現在の基盤を何人で運用しているか。クラウドの設計を担える担当者がいるか
  • 規制と制約: データを自社の設備に置く必要があるか。応答時間の制約があるか

移行そのものにかかる工数も、比較表には出てきません。 仮想マシンの変換、ネットワーク構成の見直し、運用手順の作り直しが発生します。この工数を見ずに選ぶと、移行の途中で計画を組み直すことになります。

 

2. Azure が向いている企業


Microsoft 製品を中心に使っている企業

Entra ID による認証、Windows Server、SQL Server、Microsoft 365 をすでに使っている場合、Azure との組み合わせで設計できる範囲が広くなります。Windows Server と SQL Server のライセンスを Azure に持ち込める仕組み(Azure ハイブリッド特典)もあり、条件によっては費用を抑えられます。

インフラを自社で持たない方向に進む企業

Azure への移行は、VMware の置き換えというより、インフラを自社で持つかどうかの判断です。機器の調達も保守も不要になる代わりに、費用は使った量に応じて変わります。費用の管理のしかたそのものが変わります。

段階を踏む場合は、まず Azure VMware Solution(AVS)に現在の環境をそのまま移し、そのあとで Azure の標準的なサービスへ移す進め方が取れます。

拠点の分散と災害対策に設備を持ちたくない企業

Azure は各地にリージョンを持ちます。海外拠点向けのシステムをその地域のリージョンに置けるほか、復旧やバックアップ、複数リージョンを使った冗長構成の仕組みも用意されています。オンプレミスで同じことをする場合、拠点ごと、また復旧先ごとに設備を用意することになります。

ただし、これらは契約すれば自動的に対策になるものではありません。 どの範囲をどのくらいの時間で復旧させるかは、利用する側が設計します。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

Azure を検討する場合、クラウドの費用を誰が見るかを先に決めてください。従量の課金では、使った量が翌月の請求に出ます。オンプレミスのように年度の予算で固定されないため、月ごとに確認して調整する担当が要ります。この担当を決めずに移すと、想定を超えた請求が出たあとで気づくことになります。

 

3. Nutanix が向いている企業


オンプレミスを維持する前提がある企業

データを自社の設備に置く必要がある、応答時間の制約が厳しい、規制でクラウドの利用が限られる。こうした条件がある場合、クラウドへの全面移行は選べません。オンプレミスを維持したまま基盤を入れ替える形が現実的になります。

運用の手間を減らしたい企業

従来のオンプレミス環境では、サーバー、ストレージ、ネットワークをそれぞれ別に管理していました。Nutanix はこれらをソフトウェアで統合し、1つの画面から管理できます。複数の製品の管理画面を行き来する作業が減ります。

運用が不要になるわけではありません。 監視も、容量の管理も、障害への対応も残ります。減るのは、製品ごとに分かれていた手順の数です。

VMware への依存を減らしたい企業

Nutanix は自社のハイパーバイザーである AHV を提供しています。VMware の製品を使わずに仮想化基盤を構成できます。ESXi から AHV への移行を支援するツールも用意されています。

 

4. オンプレミスの別基盤が向いている企業


HPE Morpheus VM Essentials のように、オンプレミスを維持したまま仮想化基盤だけを置き換える製品もあります。

向いているのは、既存のハードウェアを使い続けたい企業です。仮想化のライセンスだけを入れ替えるため、機器の更新時期と切り離して検討できます。

複数のハイパーバイザーを併用したい企業にも合います。KVM を使いたい部分と、Hyper-V を続けたい部分が混在している構成をまとめて管理できます。

ただし、設計と運用を自社で担える体制が要ります。 仮想マシンの形式を変換する作業も発生します。VMware から移す難度は、Nutanix より高くなります。

移行先4つと、それぞれが向いている企業の条件を示す図

 

5. VMware の継続が現実的な企業


移行しないという判断も選択肢です。仮想マシンを動かさないため、移行に伴う停止時間も、検証の工数も発生しません。

現実的になるのは、次の条件が重なる場合です。

  • 停止できる時間が限られている業務を多く抱えている
  • 保守の契約が VMware を前提にしているシステムがある
  • 更新の時期まで期間がなく、検証と移行を終えられない

ただし、従来と同じ構成のままでは費用が上がります。 コア数の少ない CPU を多数並べた構成は、最低16コアの規則により割高になります。継続する場合も、ホストの集約と契約の見直しが前提です。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

4つのうちどれが向いているかを決める前に、動かせない仮想マシンの数を数えてください。停止時間を確保できない業務、外部との接続が固定されている業務、保守の契約が製品を指定している業務が該当します。この数が多ければ、選べるのは VMware の継続か、環境をそのまま持ち込める選択肢に絞られます。数が少なければ、4つすべてが検討の対象になります。

 

6. よくある質問


Q. 複数の選択肢は、どのように組み合わせますか。
基幹システムはオンプレミスに残し、新しいシステムはクラウドに置く分け方が取れます。ただし、最終的にどちらへ寄せるかを決めないまま進めると、両方の運用が続きます。監視する対象も、費用を確認する画面も二重になります。

Q. 機能の比較表は、いつ作りますか。
既存の環境と運用体制を確認したあとです。順序が逆になると、要件を満たす製品が複数残り、そこから先に進めません。

Q. 判断に迷った場合、何を優先しますか。
更新までの期間です。期間が短ければ、移行の難度が事実上の制約になります。停止時間を確保できない業務が多い場合も同じです。期間に余裕がある場合は、費用と運用体制で判断できます。

 

7. まとめ


移行先の向き不向きを決めるのは、既存の環境、運用を担う体制、規制の3つです。機能の比較表は、この3つを確認したあとで作ります。

Azure は、Microsoft 製品が中心で、インフラを自社で持たない方向に進む企業に向きます。Nutanix は、オンプレミスを維持したまま運用の手間を減らしたい企業です。オンプレミスの別基盤は、既存のハードウェアを使い続けたい企業と、複数のハイパーバイザーを併用したい企業に合います。VMware の継続は、移行の停止時間を確保できない業務を多く抱える企業で現実的になります。

いずれの場合も、動かせない仮想マシンの数が選べる範囲を決めます。まずその数を確認してください。

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この記事を書いた人

斉藤 朋子
斉藤 朋子