VMware移行の選択肢

本記事のポイント

    1. 移行先はパブリッククラウド、HCI、別の仮想化基盤、VMware の継続の4つ
    2. 同じパブリッククラウドでも、そのまま持ち込む場合と載せ替える場合で難度が違う
    3. 費用と運用スキルと移行の難度、この3つとも満たす選択肢はない

VMware の移行先を調べると、Azure VMware Solution、Amazon EVS、Nutanix、HPE Morpheus VM Essentials といった名前が並びます。どれも「VMware の代替」として紹介されるため、横並びの選択肢に見えます。実際には、VMware の運用をそのまま持ち込むものと、仮想化基盤ごと置き換えるものが混ざっています。移行の難度も費用の出方も変わります。

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1. 検討が始まる理由


Broadcom による買収後、VMware のライセンスは永続からサブスクリプションへ移り、課金の単位も CPU ソケットから CPU コアへ変わりました。1つの CPU につき最低16コアとして数える規則もあります。同じ構成を使い続けても、更新の時点で費用が変わります。

ただし、検討の理由は費用だけではありません。当社が相談を受ける範囲では、次の3つが重なっています。

  • ライセンス体系が変わり、契約の前提が変わったこと
  • 更新の費用が想定を超えること
  • 数年先のシステム構成をどうするかという判断が、更新の時期と重なったこと

3つ目が入るため、「更新するかどうか」の判断が「今後どこに基盤を置くか」の判断と一体になります。更新の可否だけを見て決めると、数年後にもう一度同じ検討をすることになります。

ライセンス変更の内容そのものは、別の記事で扱っています。

 

 

2. 移行先の4つの選択肢


パブリッククラウド

クラウドへの移行には、性格の違う2つの経路があります。

1つは、VMware の環境をそのままクラウドに持ち込む経路です。 Azure VMware Solution(AVS)と Amazon Elastic VMware Service(Amazon EVS)が該当します。どちらもクラウド事業者が用意した専用のハードウェア上で VMware Cloud Foundation を動かすため、IPアドレスの変更も、運用手順の書き直しも、担当者の再教育も基本的に不要です。Amazon EVS は2025年8月5日に一般提供が始まりました。

もう1つは、VMware から離れてクラウド側の基盤に載せ替える経路です。 Azure Virtual Machines や Amazon EC2 への移行がこれにあたります。仮想マシンの形式から作り直すため、移行というより再設計に近い作業になります。

Microsoft は、VMware から Azure Virtual Machines への評価と、VMware から AVS への評価を、Azure Migrate で別々に用意しています。AWS も、EC2 への移行、AWS のサービスへの作り替え、VMware の継続という複数の経路を示しています。どちらの事業者も、単一の移行先を提示していません。

HCI

オンプレミスを維持したまま、仮想化の層を入れ替える選択肢です。Nutanix が代表的な製品です。

ESXi から Nutanix の AHV への移行に加えて、Nutanix Cloud Clusters(NC2)としてクラウド上に同じ基盤を置くこともできます。オンプレミスとクラウドの間で仮想マシンを移動させる機能もあり、移行後に配置を変える余地が残ります。

HCI そのものの説明と、VMware との詳しい比較は別の記事で扱っています。

オンプレミスの別の仮想化基盤

オンプレミスを維持したまま、仮想化基盤を別の製品に置き換える選択肢です。HPE Morpheus VM Essentials が該当します。

KVM をもとにした仮想化基盤に、仮想マシンの管理と自動化の機能を組み合わせた製品です。2025年に提供が始まりました。従来から選択肢だった Hyper-V や KVM と比べると、管理の機能まで含めて1つの製品として提供される点が違います。

VMware の継続

何もしないという意味ではありません。現行のライセンス体系に合わせて、構成、契約、容量を作り直したうえで使い続ける選択肢です。

コア数の少ない CPU を多数並べた構成では、最低16コアの規則により、使っていない分の費用が積み上がります。この構成のまま継続すると費用が上がります。継続を選ぶ場合は、ホストの集約や機種の見直しが前提になります。

VMware の移行先4つと、それぞれの移行の性格を示す図

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

4つを並べる前に、いま動いている仮想マシンのうち、更新の時期までに動かせないものを洗い出してください。停止できる時間が限られている業務、外部との接続が固定されている業務、保守の契約が製品指定になっている業務が該当します。この一覧が、選べる範囲を決めます。全体の移行計画から入ると、動かせない仮想マシンが後から出て、計画を組み直すことになります。

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3. 比較する3つの観点


費用

単純な比較はできません。傾向は次のとおりです。

パブリッククラウド HCI オンプレミスの別基盤
初期の費用 機器の購入が不要なため小さい 機器の購入が必要 機器を流用できる場合がある
継続してかかる費用 使った量に応じて変わる 契約した規模でほぼ一定 ライセンスの費用がほぼ一定
費用の見通し 使い方によって動く 立てやすい 立てやすい

クラウドは初期の費用が小さい代わりに、運用の設計次第で継続の費用が動きます。 移行しただけで費用が下がるわけではありません。オンプレミスの構成をそのままクラウドに持ち込むと、使っていない時間の分まで払うことになります。

運用に必要なスキル

クラウドへ移す場合、ネットワーク、権限、費用の管理をクラウドの流儀で設計し直します。VMware の運用経験がそのままは通用しません。

HCI は、仮想マシンを画面から作成し、リソースを割り当て、稼働状況を監視するという運用の流れが VMware と近く、当社が支援した範囲では担当者が引き継ぎやすい選択肢でした。ただし操作の手順と用語は製品ごとに違うため、再教育は必要です。

オンプレミスの別基盤は、製品によって管理の考え方が変わります。クラウドに近い運用をオンプレミスで行う設計になっているものもあり、その場合は設計の知識が要ります。

移行の難度

表は、仮想マシンに何をするかで並べています。作業の重さが、そのまま移行の難度になります。

選択肢 仮想マシンに行う作業 補足
VMware の継続 動かさない 構成と契約の見直しが中心
AVS / Amazon EVS 動かすが、変換しない VMware の構成をそのまま持ち込める
HCI 動かすが、変換しない 移行ツールで移せる。運用の流れは近い
オンプレミスの別基盤 形式を変換する 運用手順も作り直す
クラウド側の基盤へ載せ替え 作り直す 移行ではなく再設計に近い。停止時間の調整も要る

クラウドを選ぶ場合、この2つの経路のどちらを指しているかで難度が変わります。 社内で「クラウドに移す」と言うときに、AVS や Amazon EVS を指しているのか、Azure Virtual Machines や Amazon EC2 を指しているのかを確認してください。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

3つの観点に順位を付けてから比較に入ってください。3つとも満たす選択肢はありません。更新までの期間が短ければ移行の難度が優先され、期間があれば費用と運用が優先されます。順位を付けずに比較表を作ると、どの列を見ても決め手がないという結論になります。

 

4. よくある質問


Q. AVS と Azure Virtual Machines への移行は、何が違いますか。
AVS は Azure 上の専用ハードウェアで VMware をそのまま動かす形です。仮想マシンも運用手順も変えずに済みます。Azure Virtual Machines への移行は、仮想マシンを Azure の形式に変換する作業を伴います。移行の難度と、移行後の運用の両方が変わります。

Q. 複数の選択肢を組み合わせられますか。
組み合わせられます。基幹システムはオンプレミスに残し、新しく作るシステムはクラウドに置くという分け方が取れます。ただし、どちらに寄せるかを決めないまま進めると、両方の運用が続き、費用も担当者の負担も二重になります。最終的にどちらへ寄せるかを先に決めてください。

Q. 移行の検討にはどのくらいの期間が要りますか。
対象の仮想マシンの数と、選ぶ移行先によって変わります。検証、設計、移行の3つの工程があり、いずれも短縮には限度があります。更新の時期から逆算し、残りの期間で選べる範囲を先に確認してください。

 

5. まとめ


VMware の移行先は、パブリッククラウド、HCI、オンプレミスの別の仮想化基盤、VMware の継続の4つです。このうちパブリッククラウドは、VMware をそのまま持ち込む経路と、クラウド側の基盤に載せ替える経路に分かれます。

比較するのは費用、運用に必要なスキル、移行の難度の3つです。3つとも満たす選択肢はないため、どれを重く見るかを先に決めます。更新までの期間が短ければ、移行の難度が事実上の制約になります。

どの選択肢が自社に合うかは、既存の環境と、残せる運用体制によって変わります。ケースごとの向き不向きは、別の記事で扱っています。

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6. 出典


  • Amazon Elastic VMware Service(Amazon EVS)は2025年8月5日に一般提供が始まった。VMware Cloud Foundation を AWS 上の EC2 ベアメタルインスタンスで動かす。
  • 出典は AWS の発表「AWS Announces General Availability of Amazon Elastic VMware Service」(2025年8月)。
  • 掲載ページは press.aboutamazon.com
  • HPE Morpheus VM Essentials は KVM をもとにした仮想化基盤で、2025年に提供が始まった。
  • 出典は HPE の製品ページ hpe.com
  • Azure Migrate には、VMware から Azure Virtual Machines への評価と、VMware から AVS への評価が別々に用意されている。
  • 出典は Microsoft Learn の Azure Migrate のドキュメント learn.microsoft.com

この記事を書いた人

斉藤 朋子
斉藤 朋子