VMwareと併存させながら段階的に移行する

本記事のポイント

    1. 動かせない仮想マシンがある限り、新旧を併存させる期間は必ず発生する
    2. 併存の期間が長いほど、両方のライセンス費用が重なって総額が増える
    3. 当社と HPE の共同検証では、基本的な仮想化の性能と運用は実用に足りた

移行の計画を立てても、動かせない仮想マシンが必ず残ります。OS が古い、特定のドライバーに依存している、保守の契約が ESXi だけを対象にしている。こうした仮想マシンを抱えたまま一括で移すことはできません。VMware をすぐに廃止せず、新しい環境と併存させながら順に移す進め方について、当社が HPE と実施した共同検証の結果とあわせて示します。

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1. 一括移行が止まる理由


動かせない仮想マシンが残る

長く動き続けているアプリケーションを載せた仮想マシンは、別のハイパーバイザーにそのまま移せません。OS の版が古い、特定のドライバーに依存している、メーカーの保守が ESXi だけを対象にしている、といった理由によります。

VMDK 形式のディスクを別のハイパーバイザー向けに変換しても、仮想マシン側のドライバー構成や起動の設定がそのままでは動きません。Windows の仮想マシンでは、移行の前に VirtIO ドライバーを入れておく必要があります。 この準備の工数が、見積もりから漏れやすい部分です。

NSX による高度なネットワーク仮想化や、vSAN の特定の機能に依存している構成では、移行先で同じことをどう実現するかを個別に検証します。

停止時間を確保できない

技術的な条件だけではありません。基幹の業務システムでは、計画停止すら取れないことがあります。停止時間をゼロに保つ移行手順の設計だけで、相当な工数がかかります。

日常の運用を担当しながら移行プロジェクトを並行して進める体制も、確保しにくい状況が続きます。VMware 以外のハイパーバイザーの運用経験がないため、検証に踏み切れないという声もあります。

この2つが重なると、移行の必要は認識していても着手できない状態が続きます。

 

2. 併存させて段階的に移す


一括で移すことのリスク

すべての仮想マシンを一度に新しい基盤へ移す方式は、規模が大きいほどリスクが上がります。数百台の環境では、アプリケーション間の依存関係が複雑で、移行の順序を決めるだけで数か月かかることがあります。移行後の動作確認の工数も積み上がります。問題が起きたときに元に戻す手順も、事前に用意します。

失敗したときの影響が計画全体に及ぶ点も、一括移行の難しさです。

順序

現実的なのは、VMware 環境と新しい環境を一定期間併存させ、順に移す進め方です。

  1. 新しく必要になる仮想マシンは、新しい環境で作る。既存の VMware 環境はそのまま維持する
  2. 開発環境、検証環境、情報系のシステムなど、停止しても影響の小さいものから移す。ここで移行の実績と、運用担当者の習熟を積む
  3. 基幹系と、レガシーな資産を載せた仮想マシンについて、移す、作り直す、廃止するのいずれかを個別に判断する

3段階目では、移せるものは新しい環境へ移し、保守や依存構成の問題で移せないものは VMware 環境で維持しながら作り直しの計画を進めます。使わなくなったシステムは整理します。この判断には、アプリケーションの更改時期、メーカーの保守の状況、移行の費用とリスクを合わせて見ます。

VMware と新環境を併存させて段階的に移行する3つの段階を示す図

併存期間中の費用

併存の期間は、両方の費用が発生します。 ただし VMware のライセンスは、移行が済んだ分だけ段階的に減らせる場合があります。減らせるかどうかは契約の形態によるため、更新の前に販売代理店に確認してください。

併存の期間をどこまで短くできるかが、総額を左右します。 期間を決めずに始めると、両方の費用を払い続けることになります。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

併存を始める前に、いつまでに何台を移すかを段階ごとに決めてください。台数と期限を決めずに始めると、移しやすい仮想マシンだけが移り、残りが VMware 環境に残ったまま併存が続きます。当社が支援した範囲では、段階ごとの台数と期限を決めていた企業のほうが、併存の期間を短く抑えられました。

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3. 併存を支える製品


HPE Morpheus VM Essentials は、この併存と段階移行を想定した製品です。HPE が2024年8月30日に Morpheus Data 社の買収を完了し、同社の技術をもとに開発されました。

VMware の直接の代替というより、VMware と新しいハイパーバイザーを1つの管理画面で扱いながら、移行の速度を自社で決められるようにする位置づけです。

提供されるハイパーバイザーは KVM(Kernel-based Virtual Machine)をもとにしており、高可用性、仮想マシンの無停止移動、負荷の分散配置、データの保護、外部ストレージへの対応を備えます。ライセンスは CPU ソケット単位です。 米国での参考価格は、サポートを含めて1ソケットあたり年間600ドルとされています。VMware の CPU コア単位の課金と比べると、コア数が増えても費用が変わらない点が違います。

VMware 環境の管理機能は無償で使えます。既存の ESXi クラスターを登録すれば、両方の環境を1つの画面から扱えます。

上位の製品への移行も用意されており、Nutanix、Hyper-V、Kubernetes、パブリッククラウドを含む環境の管理まで範囲を広げられます。

 

4. 当社と HPE の共同検証の結果


以下は、当社が HPE と共同で本番に相当する環境を構築して行った検証の結果で、第三者による評価ではありません。HPE ProLiant サーバーを使った複数ノードの構成で、ESXi 環境と新環境を併存させ、業務アプリケーションに相当する複数の仮想マシンを動かした状態で評価しています。

性能と安定性

CPU とメモリの性能は、VMware 環境と同等でした。ストレージの入出力も実用上十分な性能です。連続稼働と高負荷時の資源の管理についても、実用水準の動作を確認しました。

運用

初期のセットアップは画面の指示に沿って進められます。管理画面はブラウザーから操作し、仮想マシンの作成、管理、資源の監視を行えます。vCenter を使ってきた管理者であれば、操作の流れは短い期間で把握できる構成です。高可用性による切り替えと、1台ずつ順に更新する動作も確認しました。

移行ツールは、vCenter Server を管理側に登録したうえで、画面から移行の作業を実行します。移行中は移行元の vCenter 側で OVF の書き出しが行われ、完了後に新しい環境で仮想マシンが起動します。

現時点で残る作業

移行ツールには、前後の手作業が残ります。 当社の検証で確認した内容は次のとおりです。

対象 必要な作業
Windows の仮想マシン 移行の前に VirtIO ドライバーを入れる。移行の後に VMware Tools を手動で無効にする
Linux の仮想マシン open-vm-tools の無効化は不要。ネットワーク設定の確認は必要
対応する OS 移行ツールが対応するのは Windows Server 2022 以降(2026年4月時点)。対象外の OS は別の手順が要る

大規模な環境での実績と、高度なネットワーク仮想化の機能は、今後の拡充を待つ部分です。HPE はおよそ1か月に1度の周期で新しい機能を提供しており、製品の成熟は進行中です。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

移行ツールの対応 OS は、検証の時点と導入の時点で変わります。自社の仮想マシンを OS の版ごとに数え、対応表と突き合わせてください。対象外の仮想マシンが何台あるかが分かれば、別の手順が必要な範囲と、その工数が見積もれます。全体の台数だけで計画を立てると、この分が後から加わります。

 

5. 見落としやすい点と、事前に行う検証


1つ目は、仮想マシンの間の依存関係です。 アプリケーション間の通信経路、共有ストレージの参照、VLAN の設計を、移行の前に棚卸しします。見落とすと、移行後の障害として現れ、原因の特定に時間がかかります。

2つ目は、ネットワーク構成の違いです。 ESXi と KVM ではネットワーク仮想化の設定方法が違います。仮想スイッチの設定、VLAN のタグの付け方、NIC の割り当てを、移行先に合わせて設計し直します。移行ツールを使った場合でも、手作業での確認と修正が残ります。

3つ目は、バックアップと災害対策の設計です。 現在のバックアップ製品が新しい環境で使えるかを事前に確認します。使えない場合、その入れ替え費用が移行の見積もりに加わります。

4つ目は、運用手順書です。 併存の期間は、両方の環境の手順が必要になります。担当者の記憶だけで管理している手順は引き継げません。移行の作業と並行して、手順書の整備と担当者への引き継ぎを進めてください。

事前の検証

本番に相当する負荷での検証は、移行の前に行います。確認するのは次の4点です。

  • 実際の業務に近い条件での性能
  • 移行ツールの動作(対象の仮想マシンの容量、OS、構成ごとに)
  • ノードの障害とネットワークの切断を想定した動作
  • 運用を担当する人による操作の確認

規模の見積もりには、HPE が無償で提供している HPE CloudPhysics を使えます。現在の環境の負荷を分析し、移行後に必要な資源を把握できます。

 

6. よくある質問


Q. 併存の期間はどのくらいが目安ですか。
対象の台数と、動かせない仮想マシンの数によって変わるため、一律の目安は示せません。決めるべきなのは期間そのものではなく、段階ごとに何台を移すかと、その期限です。この2つが決まれば、期間は結果として決まります。

Q. VMware のライセンスは、移行した分だけ減らせますか。
契約の形態によります。減らせる場合と、契約期間中は数量を変えられない場合があります。併存の計画を立てる前に、販売代理店に確認してください。

Q. 移行ツールが対応していない OS はどうしますか。
別の移行手順を用意することになります。仮想マシンを作り直してデータだけを移す方法もあります。対象の台数によっては、その仮想マシンだけ VMware 環境に残す判断も現実的です。

Q. 検証にはどのくらいの規模が必要ですか。
本番と同じ規模である必要はありません。ただし、実際に動かす業務に近い負荷をかけられる構成にしてください。負荷をかけない検証では、性能と安定性を確認できません。

 

7. まとめ


VMware からの移行は、一度に置き換えるものではありません。動かせない仮想マシンと、停止時間を確保できない業務がある限り、併存の期間は発生します。

進め方は3段階です。新規の仮想マシンを新しい環境で作り、停止しても影響の小さいシステムから移し、基幹系とレガシー資産は個別に判断します。段階ごとに台数と期限を決めてください。決めずに始めると、移しやすいものだけが移り、併存が続きます。

当社と HPE の共同検証では、基本的な仮想化の性能と運用は実用水準でした。移行ツールには、Windows の仮想マシンでの VirtIO ドライバーの事前導入や、対応 OS の制限といった前後の作業が残ります。自社の仮想マシンを OS の版ごとに数え、対象外が何台あるかを先に確認してください。

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この記事を書いた人

斉藤 朋子
斉藤 朋子