HCIとは

本記事のポイント

    1. HCIは各ノードの内蔵ディスクをソフトウェアで束ね、標準構成では外部のSANやNASを必須としない
    2. ノードを追加すると、CPU・メモリとストレージ容量が同時に増える
    3. 必要な資源だけを個別に増やしにくいため、片方だけ伸びる環境では余剰が出る場合がある

HCIは、サーバーとストレージをソフトウェアで統合し、インフラ全体を一体的に管理しやすくする構成です。標準的な構成では外部の共有ストレージを必須とせず、ノードを追加するとCPU・メモリとストレージ容量が同時に増えます。VMware環境の見直しで候補に挙がるのは、仮想化ソフトウェアだけでなく、ストレージや運用の構成も見直せるためです。ただし、必要な資源だけを個別に増やしにくいという制約もあります。仕組みと制約の両方を押さえたうえで、自社の構成に合うかを判断してください。

 

1. HCIの仕組み


従来の3層構成

これまでのオンプレミス環境は、次の3つを別々に用意する構成が一般的でした。

  • サーバー(CPUとメモリ)
  • ストレージ(SANやNAS)
  • ネットワーク(接続と制御)

それぞれを別のメーカーから調達し、保守の契約も別々に結びます。ストレージが足りなくなればストレージだけを増設でき、CPUやメモリが足りなくなればサーバーだけを追加できます。この分離が、3層構成の利点であり、同時に管理する対象が増える原因でもあります。

HCIの構成

HCI(ハイパーコンバージドインフラ)では、各ノードにCPU、メモリ、内蔵ディスク、仮想化ソフトウェアをまとめて持たせます。複数のノードをクラスターとして動かし、各ノードの内蔵ディスクをソフトウェアで束ねて、分散ストレージのプールとして扱います。

標準的な構成では外部の共有ストレージを必須としません。ノードを1台追加すると、CPU・メモリとストレージ容量が同時に増えます。製品によっては、仮想マシン、ストレージ、クラスターを一つの管理画面で扱えます。

従来の3層構成とHCIの構成の違いを示す図

比較項目 従来の3層構成 HCI
拡張単位 サーバーとストレージを別々に追加できる ノード単位で追加する構成が基本
管理 製品ごとに設計・運用が必要 一体的に管理しやすい
ストレージ SANやNASなど外部装置を利用 ノード内蔵ディスクをソフトウェアで統合
向いている環境 CPU・メモリと容量の増え方が異なる環境 CPU・メモリと容量が近い割合で増える環境
注意点 構成や運用が複雑になりやすい 必要のない資源まで追加する場合がある

VMware環境との対応

VMware環境には、vSphere(ESXi)で仮想化し、外部のSANやNASをストレージに使い、vCenterで管理する構成があります。必要に応じてvSANやNSXを組み合わせるなど、複数の製品で全体を構成する場合もあります。

HCIは、サーバー、ストレージ、仮想化、管理を一体的に構成・運用しやすくします。この違いが、導入後の運用の手間と拡張のしかたに影響します。

なお、VMwareにもvSANによるHCI構成があります。HCIとVMwareは対立する概念ではありません。HCIかどうかは、サーバーやストレージなどの機能を、各ノードとソフトウェアで一体的に構成・管理するかで判断します。製品によっては、外部ストレージを接続できる場合もあります。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

HCIが自社に合うかを見るには、直近3年間のCPU・メモリの使用率とストレージ使用量の推移を確認してください。両者が近い割合で増えている環境では、ノード追加による拡張が無駄なく効きます。ストレージだけが急に増えている環境、逆にCPU・メモリだけが逼迫している環境では、片方が余る場合があります。この推移が、過剰投資が起きるかどうかを判断する材料になります。

 

2. HCIの利点


構成をシンプルにしやすい

専用の外部ストレージを前提とした設計が不要になり、構成をシンプルにしやすくなります。ただし、HCIでもノード間通信や冗長性を考慮したネットワーク設計は必要です。

ノードの追加で拡張できる

必要になった時点でノードを追加すれば、CPU・メモリとストレージ容量を同時に増やせます。最初に大きな構成を組む必要がなく、投資を分けやすくなります。

管理を一体化しやすい

製品によっては、仮想マシン、ストレージ、クラスター全体を一つの画面で扱えます。製品ごとに分かれていた手順を減らしやすくなります。

運用を自動化しやすい

障害が起きたときのデータ再配置や、更新の適用などを自動化できる製品があります。担当者が手作業で行う工程を減らせます。

ストレージ設計の負担を減らしやすい

SANのゾーニングやマルチパスの設計といった、ストレージ固有の知識が必要な作業を減らせます。運用が不要になるわけではありませんが、少人数の体制でも回しやすくなります。

 

3. HCIの制約


利点だけで判断すると、導入後に想定と違う結果になる場合があります。次の5点は、検討の段階で確認してください。

CPU・メモリとストレージ容量を個別に増やしにくい

これがHCIの代表的な制約です。ノードの追加でCPU・メモリとストレージ容量が同時に増えるため、片方だけが足りない環境では、使わない資源にも費用を払うことになります。CPUの使用率は低いのにディスクだけが逼迫している環境では、過剰な投資になる場合があります。

既存の製品・運用との互換性

SANを前提に組んだ設計や、既存の運用ツールがそのまま使えるとは限りません。バックアップ製品、監視ツール、資産管理の仕組みが移行先に対応しているかを、個別に確認します。

一方だけが伸びる環境では3層構成が有利な場合がある

CPU・メモリとストレージ容量のどちらか一方だけが大きく伸びる環境では、それぞれを別に増やせる3層構成のほうが無駄が少なくなります。当社が支援した範囲でも、この形の環境では3層構成を残す判断になりました。HCIがすべての環境で有利になるわけではありません。

製品による選択肢の広さの違い

ハードウェアとソフトウェアの結び付きが強い製品では、選べる機器が限られます。将来の調達や構成変更に制約が出ないか、対応ハードウェアの一覧とあわせて確認してください。

移行の難度

VMwareから移す場合、設計の考え方が違うため、再設計が必要になる部分があります。仮想マシンをそのまま移せる範囲と、作り直す範囲を先に切り分けます。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

制約のうち自社に効くものを確かめるには、現在使っているバックアップ製品と監視ツールの一覧を作り、それぞれのHCI対応状況を調べてください。対応していない製品があると、その入れ替え費用が移行の見積もりに加わります。この確認を後回しにすると、移行の途中で追加の予算が必要になる場合があります。

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ESXiやHyper-VからHCIへ移行する際の考え方を紹介します

 

4. VMware依存を見直す観点から見たHCI


Broadcomによる買収後、ライセンス体系の変更、パッケージ単位の購入、契約条件の見直しが続いています。1社の製品に構成を寄せていることの影響を見直す動きが広がっています。

HCI製品の代表例の一つであるNutanixは、自社のハイパーバイザーであるAHVを標準で提供し、複数のクラウドとの連携機能を持っています。導入を検討する際は、対応ハードウェア、既存のバックアップ・監視製品との互換性、移行方法、5年程度の総コストを確認し、他の選択肢と比較することが重要です。

ただし、依存がなくなるわけではありません。移行先の製品に対する依存が新しく生まれます。見直すのは依存の有無ではなく、依存先を変えることで何が改善し、何が新しい制約になるかです。

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HCIを選ぶ前に確認したいこと

  1. CPU・メモリとストレージ容量が、今後どのような割合で増えるか
  2. 必要なノード数と、1台故障した場合に残りのノードで負荷を受けられるか
  3. 現在利用しているバックアップ・監視・資産管理製品が対応しているか
  4. 将来のハードウェア調達や構成変更に制約が出ないか
  5. VMwareからそのまま移行できる範囲と、再設計が必要な範囲はどこか
  6. 導入費用、ライセンス、保守、移行工数を含む5年程度の総コストはいくらか

 

 

5. よくある質問


Q. HCIにすると、運用はどう変わりますか。
監視も、容量の管理も、障害への対応も残ります。減るのは、製品ごとに分かれていた手順の数と、ストレージ固有の設計作業です。

Q. 3層構成と比べて、費用はどう変わりますか。
環境によります。ハイパーバイザーのライセンスと外部ストレージの保守が不要になる場合がある一方、初期のハードウェア調達と移行の工数が発生します。5年程度の総額で比べてください。

Q. VMwareを残したままHCIを使う場合、どうなりますか。
製品・構成によっては、HCI基盤へ移行したうえでESXiを残す構成も取れます。VMwareのライセンス費用は残りますが、外部ストレージの保守を見直せる場合があります。対応可否と費用は、導入前に確認してください。

 

6. まとめ


HCIは、サーバーとストレージをソフトウェアで統合し、インフラ全体を一体的に管理しやすくする構成です。標準的な構成では外部の共有ストレージを必須とせず、ノードの追加でCPU・メモリとストレージ容量が同時に増えます。管理を一体化しやすく、ストレージ固有の設計作業も減らせます。

一方で、CPU・メモリとストレージ容量を個別に増やしにくいという制約があります。片方だけが足りない環境では、使わない資源に費用を払うことになる場合があります。CPU・メモリとストレージ容量のどちらか一方だけが大きく伸びる環境では、3層構成のほうが無駄が少なくなる可能性があります。

判断の材料になるのは、直近3年間のCPU・メモリとストレージの使用量の推移、既存のバックアップ・監視ツールの対応状況、そして5年程度の総コストです。これらを確認したうえで、HCIが自社の運用と拡張方針に合うかを判断してください。

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CPU・メモリとストレージの増え方をもとに、構成を整理します

この記事を書いた人

斉藤 朋子
斉藤 朋子