STech I 向井です。
昨今、VMwareのライセンス体系変更やBroadcom社による買収の影響で、仮想化基盤のコストが上昇し、従来通りVMwareを使い続けることに課題を感じるケースが増えています。こうした背景から、Nutanix AHVへの移行を検討する企業様が増えている傾向にあります。
Nutanix社は、VMwareからAHVへの移行を簡単に実現できる無償ツール「Nutanix Move(以降『Move』)」を提供しています。Moveは仮想マシンの移行に加えて、3rdパーティ製ファイルサーバ(NASストレージ)からNutanix Files(Nutanix社が提供するファイルサーバ。以降『Files』)への移行もスムーズに行えます。
本ブログでは【準備編】と【実践編】の2回に分けて、Moveを用いた3rdパーティ製ファイルサーバからFilesへの移行手順を紹介します。今回は【準備編】です。
なお、MoveやFilesについては以下の記事も参考にしていただければ幸いです。
- Nutanix Files フォルダ構成について考える | 双日テックイノベーション(STech I)
- HCI選定に悩んだら? ESXiやHyper-Vからの移行も容易! 注目の「Nutanix Move」 | 双日テックイノベーション(STech I)
目次
1. Nutanix Filesへの移行の流れ
Moveについては過去のブログでも触れましたが、VMware ESXiやHyper-Vなどの環境からスムーズに移行するためのツールとして無償で提供されています。さらにMoveは仮想マシンの移行だけでなく、ファイルサーバ移行にも対応しており、幅広いシナリオで利用可能です。
Moveでのファイルサーバ移行の主な特徴は以下の通りです。
- SMB(CIFS)およびNFSの移行をサポート
- プロキシ等不要で、ファイルサーバ(ソース)から直接データを取得
- アクセス制御(ACL)を維持したまま移行
Moveを用いたファイルサーバ移行のフローは以下になります。
- 環境準備
移行先にMove-VMとFilesを構築し、共有フォルダを作成しておきます。
※Filesへの移行単位は共有フォルダごとです。 - Migrationプラン作成
- 移行元(ソースファイルサーバ)と移行先(ターゲットファイルサーバ)を登録します。
- 移行元の共有フォルダと、移行先の共有フォルダを登録します。
※Filesへの移行単位は共有フォルダごとです。 - 移行するタイミングがあればスケジュール設定します。
- Migrationプラン実行
作成したプランに基づき、Moveがファイルサーバのデータ転送を開始します。データ転送完了後は24時間ごとに同期を行います。 - カットオーバー
移行完了後、カットオーバーを行います。
この移行を図示すると次のようになります。
Moveによる仮想マシン移行とファイルサーバ移行の違いは以下の通りです。
- ファイルサーバ移行:事前にFiles側の共有フォルダを作成しておく必要があります。
- カットオーバー:
<仮想マシン移行> カットオーバー完了まで移行先に仮想マシン(の実体)が表示されません。
<ファイルサーバ移行> カットオーバー前(データ転送完了後)に移行先へデータが転送され、アクセスできる状態になります。移行元・移行先のデグレ防止の観点から、最終差分転送のタイミングでは移行元のReadOnly化や、カットオーバー後に移行元を見えなくする等の考慮が必要です。 - 切り替え後の考慮:ファイルサーバのカットオーバー処理(タスク)では最終差分のみが行われます。そのためカットオーバー後は、ファイルサーバパスの切り替えや、既存と同じアクセスパスを利用する場合の対応なども別途検討が必要です。
2. まとめ
ファイルサーバ移行を検討されている方にとって、Filesへの移行はMoveを活用することで効率的かつスムーズに実施可能です。
MoveはSMB(CIFS)およびNFSの共有フォルダ移行をサポートしており、プロキシ設定は不要、アクセス権(ACL)を保持したまま移行できます。
また、従来のRobocopyを用いた移行と比較すると、Moveには以下のようなメリットがあります。
- オプション設定の煩雑さを解消:Robocopyでは /COPYALL、/SEC、/MIR など多数のオプションを正しく組み合わせる必要がありますが、MoveではGUIで設定でき、ACL保持などの要件を満たしやすくなります。
- 並列処理の自動最適化:Robocopyの /MT のようなスレッド調整を意識せずに、並列処理を自動で最適化できます。
- スクリプトやバッチ管理が不要:移行対象をGUIでまとめて指定でき、バッチ作成や実行順序・エラー処理の管理負担を軽減できます。
次回は、実際の移行画面や移行後の切り替え手順について紹介したいと思います。
この記事を書いた人

- ttmukai
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STech Iでオンプレミスのインフラ基盤であるサーバ・ストレージの設計・構築・導入まで一貫して担当しています。
携わっている主な製品は、Nutanix、HPE、VMwareです。オンプレミスだけではなく、ハイブリッドクラウド環境(オンプレミス・パブリッククラウド連携)にも携わっております。