Microsoft Inspire 2023 のキーノートまとめ
目次
1.Microsoft Inspire とは
Microsoft Inspireは、Microsoftが毎年開催しており、主にパートナーエコシステム向けのイベントになります。Microsoft Inspireの主な目的は、最新のテクノロジー、製品、サービスに関する情報を共有し、ビジネスの成長や成功を促進するための情報を提供することです。
今年のキーノートではBing Chat Enterprise、Microsoft 365 Copilotの価格、Microsoft Sales Copilot、Power Automate Process Miningなど40 を超えるアップデートが発表されました。
2. Microsoft Inspire 2023の注目点をご紹介
Bing Chat Enterprise
多くの企業がAIを盛り上げている一方、企業データのセキュリティについて懸念を抱いています。
こういった懸念により、多くの企業は仕事でAIの利用を禁止しています。
このBing Chat Enterprise の登場により、企業の機密データは外部に流出することはなくなります。
データは保存されないし、Microsoft 社員の誰もデータを見ることはできません。
AI Model のトレーニングに使われることもありません。
Microsoft 副社長の Yusuf Mehdi氏がデモ実演を行い二つの機能が紹介されました。
・Multi model visual search
・Bing Chat Enterprise
Multi Model Visual Search は GPT4 を活用して、テキストと同様にイメージが利用可能になります。
Bing Chat Enterprise にイメージをアップロードして、「建物に施されたレリーフの中で、興味深い建築的要素は何ですか?」と質問してみると
Bing Chat は画像を検出し、これは「カルトゥーシュ」と呼ばれる装飾であり、中央にある世界地図は大航海時代を表していると思われると回答。
また、企業の機密情報となる入札情報とともに、架空企業のContoso本社ビルの入札のための提案の文章を書いてと指示すると、Bing Chat は、機密情報を加味した文章を提示してくれます。
さらに他のビルと比較をお願いすると、Web上からデータを取得し、機密情報とともに比較表を作成してくれます。
最後に機密情報と一般に公開されているデータを比較してSWOT分析をさせます。
今回の入札案件のビルと、パブリックに公開されているビル情報を比較したSWOT分析結果を返してくれます。
これまで、機密情報を含めてChatGPTを利用すると、モデルの学習に使われたりと、機密情報が流出する危険性がありましたが、Bing Chat Enterprise の登場により、情報漏洩リスクなしでChatGPTが利用できるようになりました。
現在プレビュー版で、Microsoft 365 E5、E3、Business Premium、Business Standard のライセンスを持つ組織は追加費用なしで利用できます。
将来的にスタンドアローンのプランが用意され、1 ユーザーあたり月額 5 ドルで利用できるようになるそうです。
Microsoft 365 Copilot の価格
今回のInspire でMicrosoft 365 Copilot の価格が公開されました。
Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、Business Premiumを利用している組織は、一般提供開始時に1ユーザーあたり月額30ドルで利用可能になります。
Microsoft Sales Copilot
Sales Copilot は商談のサマリや、Outlookメールの文脈に応じたメールの作成、CRMツールと連携したミーティングの準備機能が追加されました。
営業担当者の一連のプロセスをデモで実演していました。
Outlook の予定表をみれば、顧客が何を重要視しているのかといった情報を、過去のメールやCRMツールからAIが抽出して表示してくれます。
これによって、営業担当者は、準備や無駄な会議で時間を費やす必要なく、業務の効率化が実現できるとのこと。
予定表から、顧客情報の収集はできたので、ミーティング用の資料を作ってみます。
Microsoft Sales Copilot は Microsoft 365 Copilot とシームレスに連携できるので、
顧客のCRMの情報と、既存のドキュメントに基づいたプレゼンテーションを作成することができます。
Power Point上でCopilot に
「CRMのデータを使ってプレゼンテーションを作って」とお願いすると、自分の担当している案件が提示されるので選択します。
案件情報が提示され、Copilotが「プレゼンテーションに取り入れたい他の資料はあるか?」と聞いてくるので、wordドキュメントを渡します。
CRMの案件情報と、wordドキュメントの情報をベースとしたプレゼンテーションが作成されました。
これで顧客とのミーティングの準備ができましたね。
Teamsでミーティングすれば、リアルタイムに商談のヒントをくれます。
例えば競合他社と比較した製品の強みなど。
これで商談はうまくいって、その後メールでのフォローアップが必要ですね。
宿題事項や、次のステップについてメールします。
CRMの情報やメモなどからミーティングのサマリを作成してくれます。
ここに提案書と価格情報も添付して送信すれば、ミーティング後の数秒でメールがお客さんに届きますね。
一つの顧客に費やしていた、コミュニケーションや準備の数時間の作業を削減することができます。
CRMは主要なSalesforceやDynamics 365 などで動作します。
Power Virtual Agent
続いてPower Virtual Agent のデモ。
市民開発者として顧客のサポートエージェントを作成してみます。
Power Virtual Agent 画面内で、製品に関するドキュメントやFAQがあるSharepointサイトをデータソースとして追加します
コンテンツをアップロードするだけで、ボットのフローや会話のトピックなどなにも設定していません。
データソースとなるコンテンツから情報を集めてAIが調整し、回答を生成します。自社データをつかってChatGPTっぽいことができます。
プラグインもあるのでServiceNowやDynamics 365 とか追加してチケット管理や価格の提示もできます。
これまで、この手のチャットボットを構築するにはかなりの時間を要していましたが、簡単に作成できてしまいます。
ただこれはあくまで市民開発レベルですが、裏側ではAzure AI Studioとつながっているので、プロの開発スタッフと連携しプロンプトのトレーニングも可能となっています。
Power Automate Process Mining
Power Automate といえばRPAツールであり業務自動化ですね。
このProcess Mining は業務プロセスを分析して、ユーザーに改善提案してくれる機能です。
今回のデモシナリオは、自身の業務プロセスのどこに問題があって、どのように改善すれば分からず、Generative AI を使って改善してみるというものです。
以下は、何かを購入して代金を支払うという業務プロセスになっています。
何かを購入することを決めて、ベンダーにお金を払うまでの処理ですね。
非常に複雑ですが、AIをつかって、どこにボトルネックがあるか聞いてみます。
AIの回答によると、承認プロセスのコンプライアンスチェックがボトルネックになっていることが分かりました。
ではどのようにこの問題に対処すればよいでしょうか。
これもまたAIが提案してくれます。
Power AutomateやPower Appsを使ったフローの自動化を提案してくれます。
Azure Migrate
クラウドを利用することでAIによるDXに繋がるのであれば、オンプレミスからクラウドへの移行も支援が必要ですね。
そこでAzure Migrate の評価機能にも強化が入ったようです。
Azure Migrateの画面で、オンプレミスからAzure に移行することで、インフラの維持コストを最大67%削減でき、年間で約200万ドル節約できるといことが分かります。
このお金で、顧客のさらなるイノベーションに再投資することもできますね。
またセキュリティの話も大切です。Azure Migrateで、オンプレミスとAzure のセキュリティ管理コストを比較し、56%節約できることが分かりました。
MetaとMicrosoftのパートナーシップ
Meta社が開発する大規模言語モデルのLlamaがAzure とWindows でサポートされることが発表されました。
Azure AI Studioによるデモがありました。
AI Studio上でLlamaシリーズのモデルを選択できます。
サンプルの入力と出力データがあるので簡単にデプロイして試してみることができます。
ここで重要なのが、デプロイした環境はプライベートなサンドボックス環境になるので、
モデルを微調整しアプリケーションに対してより効果的なモデルにカスタマイズすることができます。
またAzure AI Studio にはAIのベストプラクティスに沿ったContent Safety機能があるので、
ベストプラクティスに沿っているかも確認できます。
デプロイしたモデルから最適な回答を受け取るために、プロンプトエンジニアリングも重要です。Azure AI ではLang、Chang、Semantic Kernelなど一般的なフレームワークから、Pythonを使用することもできます。
Windowsにも組み込まれているのでローカル開発して実行できます。
この記事を書いた人
- 髙橋 和輝
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テクニカルマーケターとして、新技術の検証、ブログ執筆、セミナー講師を行っております!
学生時代はアプリ開発に興味がありましたが、インフラ、セキュリティ事業を経て、現在はクラウド屋さんになっております。
コロナ禍前は、月1で海外旅行にいくなどアクティブに活動していましたが、最近は家に引きこもってゲームが趣味になっています。
宜しくお願い致します!
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