「パソコンが遅いんだけど」「プリンターが動かない」「Excelの使い方、ちょっと教えて」日々の業務の中で発生する、こうした”困りごと”。ヘルプデスクがあっても、総務が機器を管理していても、ネットワーク担当が別にいても、「とりあえず情シスに聞いてみよう」となる風潮に、心当たりはありませんか?

本来情シスの役割は企業のIT戦略の立案やシステム改善の推進といった、経営に直結する領域にあるはず。それなのに雑多な業務に追われ、戦略的な仕事に手が回らないのでは、本末転倒です。

では、情シスが「便利屋」にならず、本来の役割に集中するにはどうすれば良いのでしょうか?

なぜ情シスが「便利屋」になってしまうのか?

この問題の背景には、「情シスなら何でもできる」という社内の誤解があります。たしかに、ITやシステムに関する知識が豊富で、柔軟に対応してくれる情シスは頼りになる存在です。しかし、それが慢性化すると、次第に”全部お願いすればいい部署”になってしまうのです。

この誤解が定着してしまう原因は、主に以下の3点にあります。

1:問い合わせ先が分からない——ITリテラシー不足

社内には「どこに何を聞けばいいのか?」という明確なガイドラインがない場合が多く、ユーザーは自己解決できず、最終的に情シスに頼ってしまいます。FAQの整備や案内不足も一因です。

2:情シスが過去に対応してきた——頼られすぎる文化

善意で「とりあえず対応」していたことが、「情シスなら何とかしてくれる」という思い込みにつながり、いつの間にか対応がルーチンワーク化してしまいます。

3:役割分担が曖昧——問い合わせが情シスに集中する

社内で「誰が何を担当するか」が定義されていない状態では、確実に答えてくれそうな情シスに問い合わせが殺到します。すると「PCのパスワードリセット」や「プリンターの設定」など、本来は他部署で対応できる内容まで情シスに任されてしまいます。

つまり、情シスが”便利屋”になっているのではなく、”便利屋にならざるを得ない環境”が生まれてしまっているのです。

では、どうすれば情シスが本来の業務に集中できる環境を作れるのでしょうか?

情シスの役割を取り戻す!業務線引きの実践法

解決策としては、「情シスの本来の役割を定義し、業務を正しく分担する」ことが近道となるでしょう。実践する方法を、以下の3ステップにまとめました。

STEP1:「情シスがやるべき仕事」と「他部署で対応できる仕事」を明確にする

まずは現在の業務を棚卸しし、以下のように分類します。

・情シスが担当すべき業務:IT戦略、システム設計・管理、セキュリティ対策

・他部署で対応可能な業務:機器の物理管理、パスワード再発行、簡単な操作説明など

・アウトソースできる業務:定型的な問い合わせ対応、サーバー監視、保守作業など

STEP2:業務の役割分担ルールを作り、社内に周知する

整理した業務をもとに、「問い合わせ対応の流れ」を作成します。例えば、次のようなステップを踏むとよいでしょう。

1:現状の問い合わせ内容をリストアップ

2:適切な担当部署を明確に分類

3:対応フローを図にまとめて社内に共有

さらに、FAQやチャットボットなどを導入し、「自己解決できる環境」を整えることも重要です。まずは自分で調べる、簡単な対応はヘルプデスクへ、という一連の流れが浸透すれば、本来情シスの対応範囲外にある問い合わせは確実に減少します。

STEP3:便利屋から脱却し、情シスが「本来の役割」に集中する環境を作る

役割分担と仕組みが整えば、「システム改善」「IT戦略」「データ活用」など、企業の成長に貢献する業務にシフトできるようになります。

そのためにも、問い合わせ対応のルール化&削減を進め、情シスが本来やるべき仕事に時間を割ける体制を作ることが重要です。作った体制を継続させるために、業務の棚卸しを定期的に実施し、新たな業務を適切に振り分けましょう。

「便利屋」から脱却し、企業を支える戦略部門へ

情シスが真に企業価値を高める存在であるためには、「情シスが本来するべき仕事」と「そうではない仕事」の線引きが必要です。

他部署と役割分担ルールを作り、社内に周知すること。問い合わせ対応を減らし、戦略的な業務に時間を確保すること。これらを徹底することで、情シスは単なる”便利屋”ではなく、”IT戦略を担う情シス”として再定義されるはずです。

今こそ、役割を見直すタイミングです。情シスの価値を再認識し、そのポテンシャルを最大限に活かしましょう。

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この記事を書いた人

STech I_伊丹
インフラ、Data&AIのマーケティング担当