データサイロとは。原因と解消に必要な考え方

本記事のポイント

    1. 「データサイロ」とは、部門ごとのシステムがつながらずデータが孤立した状態
    2. サイロを残したままでは、部門をまたいだ数字が合わない
    3. 解消にはツールの入れ替えではなく「データマネジメント」と「データガバナンス」が要る

「うちにはデータがある。しかし、それを活用できていない」。当社が相談を受けるなかで、CIOやIT責任者からよく聞く言葉です。ERPにもCRMにも会計システムにもデータは蓄積されています。それでも、分析の担当者が全社を横断した分析をしようとすると、データが使えません。場合によっては、CIO自身が自社のデータの全体像を正確に把握できていないこともあります。原因はツールの性能ではなく、データが部門ごとに分断され、互いにつながらないまま孤立していることにあります。この状態をデータサイロと呼びます。

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1. データが使えない構造的な原因


部門ごとに異なるシステムやツールが導入され、それぞれのデータが互いに接続されないまま孤立している。これがデータサイロです。

営業部門はSalesforceを、マーケティング部門はHubSpotを、経理部門はSAPを使っています。各システムは、その部門の中では十分に機能しています。ただしシステムどうしのデータ連携は限られており、全社を横断してデータを結合し、分析することは難しいのが実情です。

部門ごとに孤立したシステム

分断そのものと並んで問題になるのが、これを誰が解消するのかが決まらないことです。情報システム部門はデータを技術的に管理していますが、各データの業務上の文脈や背景までは把握していないことが多くあります。一方、業務の担当者はデータの統合を情報システム部門の仕事と考え、自分たちの役割だとは考えていません。

この結果、データサイロの解消は誰の担当でもなくなり、検討が動かないまま止まります。

 

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分断が引き起こす問題をたどると、いずれも同じところに行き着きます。同じ顧客や同じ取引を、各システムでどう識別しているかです。取引先コードが部門ごとに違う、名寄せのルールがない、どちらを正とするかが決まっていない。この3点のどれかで止まっている状態を、当社は繰り返し見てきました。件数を数えたものではなく、相談の場で聞いた範囲の傾向です。ツールの検討に入る前に、この3点を確かめる価値があります。

 

2. サイロが引き起こす4つの問題


データサイロは、日々の業務に次のような影響をもたらします。

レポートの数字が合わない

経営会議で営業部門と経理部門がそれぞれ「売上」を報告すると、数字が合いません。集計する期間の定義が違うのか、対象の範囲が違うのか。会議の時間が数字の突き合わせに費やされ、本来議論すべき意思決定に進めません。

顧客の全体像が見えず、機会を組織として捉えられない

顧客データが部門ごとに分断されているため、顧客の全体像が見えません。たとえば、ある顧客がサービスAを使っていることを、サービスBの担当チームが知りません。こうなると、組み合わせの提案も、契約を広げる提案も、組織として機会を捉えられません。

新しいシステムを入れるたびに統合作業が積み上がる

新しいシステムやツールを導入するたびに、既存データとの統合作業が発生します。データの定義や形式がばらばらなため、統合のたびに大量の手戻りが生じ、プロジェクトの期間と費用が膨らみます。

業務ルールが担当者のファイルにしか残らない

各部門が独自の表計算ファイルで業務ルールや計算のしかたを管理している例は、非常に多く見られます。その結果、重要な業務の知識が特定の担当者の手元のファイルに埋もれ、異動や退職とともに失われるリスクを常に抱えることになります。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

4つの問題のうち、経営層がその場で気づきやすいのはレポートの不整合です。残る3つは、担当者や情報システム部門は気づいていても、経営会議には上がってきません。営業担当者が取りこぼした商談は記録に残りません。情報システム部門が作り直した変換の仕様は設計書の中にとどまります。担当者しか知らない判断基準は、その担当者が異動すれば社内から消えます。経営層に伝えるには、この3つのうちどれが自社で起きているかを、担当者や情報システム部門に確かめるところから始めてください。

 

3. 解決の方向性


必要なのは、組織全体でデータを計画的に管理し、統制し、提供するためのしくみです。これをデータマネジメントと呼びます。

データマネジメントは、11の知識領域にまたがる取り組みです。データの品質管理、メタデータ管理、マスターデータ管理などがこれに含まれます。この11という区分は、DAMA International の知識体系 DAMA-DMBOK 第2版が示す DAMA ホイールによります。

ホイールの中心に置かれているのがデータガバナンスです。データについての方針、手順、標準、役割を決め、組織全体でデータの一貫性と信頼性を保つための規律で、次の4つを含みます。

  • データの定義と用語をそろえること
  • データの所有者(オーナー)と管理者(スチュワード)を決めること。オーナーは業務の側が担い、何を正とするかを決めます。スチュワードは、その業務の内容を理解した担当者が担い、決まった定義どおりに保たれているかを見ます
  • データの品質を何で測るか、品質が基準に届かないときに誰が何をするかを決めること
  • アクセス権限とセキュリティ方針を決めること

データガバナンスを情報システム部門だけのものにしないことが大事です。データの意味や活用のしかたを最もよく理解しているのは業務の担当者です。したがって、データの所有権は業務の側が持ち、情報システム部門はそれを技術的に支えます。この役割分担ができて初めて、データガバナンスは機能します。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

情報システム部門が全社のデータを対象にオーナーを決めようとすると、データごとにどの部門が持つかを、関係部門の間で調整して回ることになります。対象を絞る方法があります。部門をまたいで使う指標をいくつか選び、その指標に限って、業務の側がオーナーを、情報システム部門がスチュワードを引き受けます。誰が何を決めたかを一覧にして、情報システム部門が維持します。対象の指標は、そのあとで少しずつ増やせます。

 

4. よくある質問


Q. データサイロは、なぜツールの入れ替えでは解消しないのですか。
新しいシステムを入れても、そこに入るデータの識別のしかたと定義が部門ごとに違うままなら、情報システム部門がデータをつなぎ直す作業は残ります。入れ替えで変わるのは器であって、器に入るデータの決めごとは変わりません。先に決めるのは、どの顧客とどの取引を同じものとして扱うかです。

Q. データガバナンスから始めれば、他の領域は後回しでよいのですか。
後回しにするというより、順序があります。誰が何を決めるかが固まらないと、品質を測る基準も、マスターデータの正をどれにするかも決められません。ただしガバナンスの整備が全部終わるまで他を止める必要はなく、対象を絞れば並行して進められます。

Q. 定義が部門間で折り合わないときは、どうしますか。
部門をまたいで定義が食い違う場合、当事者どうしでは決着がつかないことがあります。先に、食い違ったときに誰が判断するかを決めておいてください。当社が支援した範囲では、この立場を決めていなかった場合に、定義の議論が部門間で止まりました。件数は多くなく、業種や規模もそろっていないため、傾向として受け取ってください。

Q. データサイロは、システムを1つにまとめれば解消しますか。
解消しません。1つのシステムに集めても、そこに入るデータの定義が部門ごとに違えば、同じ「売上」が複数の意味を持ったまま並びます。集約の前に、何を正とするかを決める必要があります。

 

5. まとめ


データサイロが解消されていなければ、BIツールを入れ替えても、クラウドに移行しても、AIを導入しても、同じ問題が形を変えて繰り返されます。

データがあるのに使えない状態を脱するには、ツールの選定よりも先に、業務の側と情報システム部門がデータマネジメントとデータガバナンスの枠組みを整えることが不可欠です。これは技術のプロジェクトではなく、業務の側と情報システム部門が協働して取り組む組織変革のプロジェクトです。

「ツールは入れたが、データの分断は解消されていない」と感じているのであれば、まずはデータガバナンスのあり方を見直すところから始めてください。

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6. この記事の出典


  • データマネジメントは11の知識領域にまたがり、DAMA ホイールの中心にデータガバナンスが置かれている。
  • 一次情報は DAMA International, *DAMA-DMBOK: Data Management Body of Knowledge, 2nd Edition*(Technics Publications、2017年)。日本語版は『DAMA-DMBOK データマネジメント知識体系ガイド 第2版』(日経BP、2018年)。

11の知識領域は次のとおり。データガバナンス、データアーキテクチャ、データモデリングとデザイン、データストレージとオペレーション、データセキュリティ。続けて、データ統合と相互運用性、ドキュメントとコンテンツ管理、参照データとマスターデータ、データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス、メタデータ、データ品質。DAMA ホイールは知識領域の区分を示す図であり、DMBOK にはこのほかに、知識領域を取り巻く環境要素や活動の分類も示されている。本文が挙げているのは知識領域の区分だけ。