Power BIによるBIトランスフォーメーション

本記事はPowerBI MVP 石川陽一氏からの寄稿記事です。
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ユーザーストーリーを念頭に

あなたが視覚化したPower BIレポートを閲覧するのは誰でしょうか?仕事仲間ですか?関連部署ですか?それとも、上司?経営者?利害関係者?外部の方々?… 公開したい方の実像やレポートを視るタイミングによって、大元のデータソースはどんなデータが必要か、更新の自動化はどうしたらよいのか、どうやってPower BI サービスと連携するシステム間連携になるのか等が変わってきます。

いろいなことを突き詰めて考えていくと、頭の中がいっぱいになってきてわからなくなったり、優先順位がつけられなくなったりして混乱することもあるでしょう。よくわからなくなってきたら、最初に立ち返って「〇〇さん(Who)が、どのように(How)Power BIレポートを見て、〇〇に役立つようにしたかった」と、当初のユーザーストーリーに立ち返えることをおススメします。そして、ユーザーの一人でもある、自分自身がそのレポートあるといいね!と思えるのかも大事です。

一人のPower BIレポートを作成する人から始まり、データの整理や視覚化でできることが増えてくると共有による世界の夢もふくらんできます。さて、「社内外のいろいろなデータに分析しやすい形でアクセスし」、さらに一歩踏み込むにはどこに向かうとよいでしょうか?

実は要領よく歩んでいかないと「データの収集と整理に8割の時間を取られる」という一般的な苦悩に落ちいってしまいます。これらを見ていきましょう。

Power BIはベストプラクティス志向で

Microsoftから提供されるPower BIのドキュメントはこちらです。こちらのドキュメント類に限らずMicrosoftが提供するドキュメント類「Docs(ドックス)」は常にアップデートされます。英語のドキュメント、日本語化も逐次レベルアップ、内容の最新化等どんどん変わり、まるで生物が成長するように私は感じます。オススメの使い方としては、英語、日本語とも併読して、何が主張なのか肌で感じることです。URLの一部がen-usが英語、ja-jpが日本語です。

ドキュメントがコロコロと変わるのはイヤですか?もしそのようなことを思われるのでしょうか、進化しない成長しないのがイヤということでしょうか。クラウドはお願いしていなくても絶えず進化し続けてサービスとして受けられるものです。そういった進化にあったドキュメントが絶えずアップデートされるのは、かなり普通ではないでしょうか。

さてそんなPower BIドキュメントページの2022/3現在のスッキリした一覧を見ると、どれもこれも興味深いテーマ毎に進みやすくなっています。

さらに下部を見ると、キラッと光るコーナー「ベストプラクティスのガイダンス」があります。

ベストプラクティスは王道、その王道を理解して進んでいくのが近道です。一方、そこから先に進んでいくと、難しいIT用語が飛び交い、チンプンカンプンになることもあるかもしれません。そういった時は、社内外の詳しい人のサポートが助けになることもあるでしょう。

ユーザー部門とシステム部門の役割の整理からCoEの発想へ

前述のガイダンスから、下部にある3つのガイダンスが、BI利用の初期段階から本格化に向けてのステップで重要になってくるものと考えます。くどいですが、これらのコンセプトものは、英日、両方視ることが必須です(日本語直訳の部分でよくわからないことがあるので)。

(1)導入ロードマップ

前回のブログ(Power BIの権限の考え方)でも、Visioによる概要図とともに触れました。

導入ロードマップ・概要図:Visioの機能で、Ctrl + クリックで英語、日本語のDocsに移動可能

データカルチャーを作ることがトップにあり大事なのですが、それについで大きな要素となっているのが、センター オブ エクセレンス(略してCoE)です。そちらについてもガイドの中に(3)として個別にピックアップされており、こちらは後述します。

(2)実装計画

Power BIを本格化利用する、といっても組織の規模感によって取り組める規模や、業種の特性によってセキュリティの考慮の程度も相当違うでしょう。そういった組織特性を考慮しながら、Power BIの各種機能実装の全体像を描いていくのが実装計画(Implementation Planning)です。こちらには、個人、チーム、部門、企業といった利用レベルの違い毎に多数のシナリオが用意されています。

一番シンプルな、セルフサービスBIである個人BIのシナリオでも「BIでデータの見える化をしたいだけなのに、難しいシステム構成図でてきたな?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。たとえば、分析に利用しやすいように、データソースをメダリオン・アーキテクチャーで構成しなおすにはどうしたらよいのか?などなど…. (メダリオン・アーキテクチャーについては同社ブログ「データ活用に必要な5つの要素とは?課題と実現方法を解説」を参照)ビジネス 部門の方であれば、ITの専門家のヘルプが欲しいところですよね。

(3)センター オブ エクセレンス(CoE)

一口にITの専門家といっても、専門領域が分かれており、データ周りのすべてがわかる、こなせるというわけではありません。そこで出てくるのが、CoEの発想です。タイトルのリンクについては、こちらのみ英語のページのDocsにリンクしており、CoEのページのトップに位置づけられるものです。「Microsoft’s BI transformation」というタイトルとなっています。そうです、今世の中をにぎわしているデジタルトランスフォーメーション(DX)のXの話で、Microsoft自身も経験して行き着いた姿です。

数年前のMicrosoftでさえ以下のような状態であったとのこと。以下は本文からの抜粋です。

  • 一貫性のないデータ定義、KPI等で、かなり混乱
  • アナリストがデータの収集と整理に75%の時間を浪費
  • 78%のレポートがオフライン環境!

これらを変えたBI トランスフォーメーションの核となる、CoEはチーム体制です。IT部門の中でも、プラットフォームのエンジニア、データの分析のモデル設計・開発をリードするエンジニア等役割分担があった上で、ビジネス部門と対話できる社内コミュニティの育成等にも取り組むことが必要です。

BI活用の成功には、IT部門とビジネス部門の良好な関係やビジネス部門の積極的なITへの関与が必須となるでしょう。このような融合したチームでの取り組みはフュージョン開発とも言います。

そこには、Power BIのことのみならず、データソースの特性の理解や連携の仕方、データ精度の保証、公開管理等セキュリティの施し方も必須になってくるでしょう。

トランスフォームのその先に

CoEの尽力により、有益なPower BIデータセットが利用しやすい形で組織に提供されていれば、Power BI DesktopやPower BI サービスで利用できるのはもちろん、使い慣れたExcelからもアクセスできるようになります。

BI トランスフォーメーションした結果、また新しいツールを使っていくことだけでなく、長年使い慣れたExcelをPower Pivot、DAX、Power QueryといったいわゆるモダンExcelの形式としても使っていけます。

今回までの計3回のブログで、さまざまな観点でPower BIの企業利用のあれこれについて述べてきました。Power BIに関することの範囲は本当に広いです。わたしのブログの話をたたき台に、さらに深いところをググって情報収集する、コミュニティ活動に参加して学ぶ、専門家・企業に相談するといったことに取り組まれるとよいと考えます。そして、一歩も二歩も先に行くPower BI利用に進めることを願っております。お読みいただき誠にありがとうございました。

この記事を書いた人

石川陽一
石川陽一
日立製作所子会社SEを経て、1999 年にカブドットコム証券(現auカブコム証券)の立ち上げに参画、日本初のフル Windows 等オープン系金融機関の IT を担当。2004 年 執行役(2012年まで)、2013 年 システム監査・内部監査統括、2017 年 サイバー等情報セキュリティ統括、2020 年 システム統括役員補佐(現職)。デジタルトランスフォーメーション、ゼロトラストセキュリティなどの取り組みを主導。
副業として、アント・キャピタル・パートナーズでAI・DX担当、Udemyで「Power BIの基本」を配信。2019 年より、公私ともに、Power Platform を活用中。2021年9月にMicrosoft MVP for Data Platform - Power BI を受賞。