目次
今回は、2019年にMicrosoftからリリースされたサービス「Azure VMware Solution(AVS)」について紹介いたします。
- Azure VMware Solution(AVS)って何?
- どんなメリットがあるの?
といった疑問を持たれている方や、
- 既存のオンプレミスVMware vSphere環境のクラウド化を検討している
という方は、是非参考にしていただけますと幸いです。
1.Azure VMware Solution(AVS)とは
「Azure VMware Solution」とは、Microsoftが提供するクラウド「Microsoft Azure」で提供されるサービスの一つで、「VMware vSphere環境」をフルマネージドで利用できます。
日本では2020年12月より東日本リージョンで提供を開始し、2021年11月には西日本リージョンでもご利用いただけるようになりました。
Azure VMware Solution 概要資料ダウンロードはこちら >>
AWSでも同様のサービス 「VMware Cloud on AWS(VMC)」が提供されているので、ご利用中の方はこれのAzure版、というのがイメージしやすいかもしれません。
ただ、VMware Cloud on AWSとは異なり、Azure VMware Solutionは、Microsoft 1st Partyのサービスで提供されます。(VMCの場合は、全てAWSが管理/運用するのではないようです。)
つまり、VMware vSphere環境の運用、維持、サポートはMicrosoftが行います。
VMwareの問い合わせをMicrosoftに行う。すごい時代ですね!
Azure VMware Solution(AVS)とVMware Cloud on AWS(VMC)の違いについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
「AVS vs VMC」VMWare環境をクラウド化する2つのサービスの違いを徹底比較 >>
2.Azure VMware Solution(AVS)の5つのメリット
「なぜAVSをわざわざ使う必要がある?」という疑問を持たれる方は多くいらっしゃると思います。
実際、Azure VMware Solutionをご紹介した際には必ず聞かれます。
結論から言うと、仮想マシンやDBを使うだけであれば、Microsoft Azure上のサービス(IaaSで提供される仮想マシン、PaaSで提供されるDatabaseなど)を普通に利用することが、コスト、柔軟性、迅速性、拡張性など様々な面でメリットが大きいです。
じゃあ、Azure VMware Solutionを使うメリットは?についてですが、最も大きいポイント5つを紹介します。
①スピーディーかつシンプルにクラウド移行ができる
Azure VMware Solutionは、HCX Enterpriseが標準提供されています。
そのためVMware HCXにより、現行のオンプレミスのIPアドレスおよびMACアドレスをそのままにL2延伸が可能です。つまり、オンプレミスの既存ネットワークセグメントをそのままクラウドへ拡張することができます。
またHCX vMotionやBulk Migrationなどにより、オンプレミスからAzureへワークロードのマイグレーションを行うことができます。
HCX vMotionでは、仮想マシンを無停止で移行できる手段です。業務で使用しているサーバーは止められないなど、ビジネス上ダウンタイムを許容できないシステムで特に有用です。
「そのままのIPで」オンプレからMicrosoft Azureに「止めずに移動」ができるのです!
すごいですね!
②レガシーOSの継続利用ができる
お客様の様々な事情で、Microsoft Azureではサポートされない、更に言うとメーカーサポートも切れているOSを既存VMware vSphere環境で使用されているケースがございます。
現状、VMware vSphere上で稼働しているのであれば、Azure VMware Solutionで稼働しないわけはない!ということで、仮想マシンの塩漬けのために一部のオンプレミスリソースを残す必要はありません。
Azure VMware Solutionを利用して、クラウド上で仮想マシンを塩漬けにする、というアプローチが可能です。
③VMware vSphereのプライベートクラウドが使える
システム観点からは、長年使ってきたVMware vSphereを継続活用したいというお客様が多いです。しかし、HWのサポート、リプレース、ハイパーバイザーのアップグレードなどの対応負荷軽減、サービス開発速度の短縮、グローバルスケールへの対応など、様々な課題を抱えています。
クラウドサービスはこういった課題が解決できるソリューションを多く持っていますが、お客様が提供するサービスによってはパブリックなクラウドサービスの活用がNGで結局オンプレミスにとどまることもあります。しかし、Azure VMware Solutionは、お客様専用ノードで構成されたプライベートなVMware vSphere環境が構成できるため、閉じた環境でパブリッククラウドのメリットが享受できる、究極のハイブリッドクラウドサービスです。
また、他のユーザーが同じ環境に入ってこないので、自分たちで確保されたリソースの中で安定してワークロードを稼働させることが可能です。
④Azure上でもvCenterが使える
Azure VMware Solutionでは、プロビジョニングされたすべてのプライベートクラウドに、VMware製品のvSphereクライアント、NSX-Tマネージャー、HCXなどが標準提供されます。これにより、Azure上でもVMware製品のツールを使用することができます。たとえばVMの作成などは引き続きvCenterから利用可能です。
これまで培ってこられたスキルやツール、プロセスなどの資産をそのまま活用し、オンプレとクラウドの運用の共通化を実現できますね!
※2023年12月時点では、オンプレミスのvCenter Serverを使用してプライベートクラウドを管理するこはできません。
⑤Azureネイティブサービスとの統合ができる
Azure VMware Solutionでは、Azureネイティブサービスとの統合もできますので、AzureのIaaSをはじめ、Microsoft 365や各種データベース、AI(人工知能)、IoTなどの機能を提供するAzure PaaSサービスを活用しアプリケーションのモダナイゼーションなどDXの加速といったことも実現できます。
例えば、Microsoft Azure Backup Server (MABS) を用いて AVS上の仮想マシンをバックアップすることができます。また、仮想マシンで構成されたデータベースをPaaSのSQLデータベースでモダナイズをして、AVS上の仮想マシンに展開されたアプリケーションから利用することなども可能となっています。
3.Azure VMware Solution(AVS)の構成
Azure VMware Solutionは、Microsoft Azureのデータセンター内でお客様専用の物理Node上で提供されます。
ハイパーバイザーはもちろんVMware ESXi、ストレージはvSAN、ネットワークはNSXで構成されています。物理ノードのストレージ領域はSSDで構成されているので、AVS上の仮想マシンに対して高いIOPS、低いディスクレイテンシが提供される構成になっています。
オンプレミスとAzure間は、IPsec VPNもしくは専用線(Express Route)で接続することができ、接続するとオンプレミスのVMware vSphere環境とAVSでL2延伸ネットワークが実装できます。
上記のメリットでも少しお伝えしましたが、この状態でvMotionによるライブマイグレーション / コールドマイグレーションが実施できます。
このオンプレミス / Microsoft Azure間ネットワークは、AVSではなくAzure自身のサービスになりますが、AVS利用時にはオンプレミスに配置したサーバーとの疎通も発生し、ここで十分な通信速度が得られなければサービス品質の低下を招いてしまうため、このクラウド接続部分のネットワークは肝となります。
4.Azure VMware Solution(AVS)の価格
Azure VMware Solutionは、仮想マシンの数に関係なく、ホストノード単位で1時間ごとの従量課金で料金が発生します。
料金は以下表の通りとなりますが、こちらは1ノードの費用ですので最小構成の3ノードで利用する場合、×3の費用となります。追加時は1ノードずつ追加が可能です。
こちらの料金には、VMware プライベートクラウドに必要なライセンスもすべて含まれていますので別途調達する必要はありません。
長期のご利用の場合、1年または3年予約をつかっていただくことで大幅な割引になります。だいたい3年予約で、50%の割引が可能となっています。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/azure-vmware-cloudsimple/
※現在日本で利用できるのはAV36のみとなります。
5.Azure VMware Solution(AVS)のユースケース
①大規模VMware vSphere環境のクラウド化
これまでは、クラウド化をご検討頂いた際に、止められないシステムや、オンプレで稼働しているサーバーのIPアドレスの変更が厳しいシステムはオンプレに残さざる終えない、、、ということが多々ありました。
アプリケーションの構成上、仮想マシンのIPアドレスをベースに通信を行うような仕様になっている場合、IP変更に伴って、アプリの仕様変更、設計、実装、試験などなどが発生してしまい、これがまた費用も時間もかかってしまうから、、というのが理由です。
しかし、前述の通りAzure VMware Solution(AVS)を活用することでこのような課題は解消し、クラウドへの移行が容易にできるようになります!
当社が支援させていただきましたお客様は、2~3ヵ月ほどでAVS環境の引き渡しが完了しています。
大規模なVMware vSphere環境をクラウド化する際には、Azure VMware Solutionが最適解となることが多いといえそうですね!
②事業継続計画(BCP)と災害対策(DR)
災害対策ソリューションとして実績豊富な Site Recovery Manager (SRM) が、AVS を正式サポートしています。
「オンプレミス ↔ Azure VMware Solution間」や東日本リージョン ↔ 西日本リージョンなどの「複数 Azure リージョン間」でのDR (Disaster Recovery)でSite Recovery Manager (SRM) をご利用いただけます。
③段階的なクラウド化の足がかりとして
Azure VMware Solutionを採用することでBCP/DR対策などの課題を解決しつつ、ハイブリッド化によるデータセンターの拡張、スピーディーかつシンプルなクラウド移行の実現による既存データセンターの縮小や廃止、さらには将来的にアプリケーションのモダナイゼーションを進めていくという段階的なクラウド化の足がかりとしても最適なソリューションです。
6.まとめ
Microsoft社からリリースされた、VMware vSphereが使えるサービス「Azure VMware solution」の概要について紹介させていただきました。オンプレミスから延伸したハイブリットクラウドとしての活用、DRサイトとして、また、VMware vSphereにパブリッククラウドがもつ柔軟性、迅速性、拡張性をもたせる、といった様々な使い方が期待できるソリューションです。
特に日本市場では、プライベートクラウドとしてVMware vSphereをご利用のお客様が多くいらっしゃいますので、リプレースや拡張にマッチしそうですね。
遅かれ早かれクラウドの利用へ目を向けていく必要が出てきます。
こういったサービスを上手く活用し、ハイブリットにクラウドをご利用いただけるよう当社は皆様をご支援していきたいと考えておりますので、引き続き、Azure VMware Solutionならびに、当社をよろしくおねがいします!
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
Azure VMware Solution 概要資料
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この記事を書いた人
- Azure導入支援デスク 編集部
-
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