Global Reachとは
Global ReachはExpressRoute回線を相互に接続し、オンプレミス拠点間でプライベートネットワークを実現できるサービスです。
Global Reachを利用すると、Microsoftが世界中に敷設している安定性の高いMicrosoft Azureのバックボーンネットワークを利用した拠点間通信が可能となります。これによって通信キャリアが提供する国際IP-VPN網などを代替した閉域網接続を実現できます。
従来のExpressRoute
ExpressRouteはオンプレミス拠点とMicrosoft Azureを接続するネットワークサービスです。閉域網を利用してAzure上に作成した仮想ネットワークやAzureの各種サービスへ接続することができます。
ただし、複数の場所でExpressRoute回線を契約している場合でも、オンプレ拠点間の通信は行えません。オンプレ拠点から通信できるのはExpressRoute回線と接続している仮想ネットワークかMicrosoftクラウドサービスだけです。
Global Reachでこう変わる
Global Reachを利用するとExpressRoute回線を相互にリンクしてオンプレミス拠点間でのプライベートな接続を構築できます。Global Reachを構成したExpressRoute間でMicrosoft Azureのバックボーンネットワークを介して通信を行えます。
Global Reachによってサービスプロバイダーが提供する国際IP-VPNなどのWAN接続サービスを補完し、世界各地のブランチオフィスを閉域網で接続できます。また、米国内などで国内のブランチオフィスをリンクしたグローバルネットワークが構築済みの場合でも、Global Reachを使用して日本や香港などのブランチオフィスを現地のサービスプロバイダーを利用して自社のグローバルネットワークに接続できます。
構成要件
システム要件
Global Reachを利用するためには、異なるリージョンに作成した複数のExpressRoute回線が必要となります。異なる2つのリージョンに接続された回線をたがいに接続して構成します。東日本リージョンとUS西部リージョンの接続など、異なる地政学的地域間でGlobal Reachを有効にするためにはPremium Add-Onが必要です。東日本リージョンと西日本リージョンの接続など、同じ地理的リージョンにある場合はPremium Add-Onは不要です。
また、3つ以上のすべてのExpressRoute回線で互いに通信するためには、フルメッシュネットワークを構成するためにすべての回線ペアでGlobal Reachを構成する必要があります。
サポートされるリージョン
2019年5月現在、ExpressRoute Global Reachは次の場所でサポートされています。
- オーストラリア
- カナダ
- フランス
- 香港特別行政区
- アイルランド
- 日本
- 韓国
- オランダ
- イギリス
- 米国
Global Reachをためしてみる
検証構成
Global Reachを試せる環境を触らせてもらえることになったので、以下の構成で試してみたいと思います。日本リージョン内の接続なのでPremium-Add Onは不要です。
スループット計測
以下3通りのフローでスループットを計測してみました。計測ツールはNTTtcpです。
- 東日本拠点ー東日本Azure
- 東日本拠点ー西日本Azure
- 東日本拠点ー西日本拠点
検証結果は以下のとおりです。
東日本Azure | 西日本Azure | 西日本拠点 | |
---|---|---|---|
東日本拠点 | 170.0Mbps | 45.2Mbps | 45.0Mbps |
東日本拠点ー東日本Azure以外のフローでは、ExpressRouteの細い方の帯域にスループットが引きづられています。
西日本Azure向けと西日本拠点向けのフローではスループット性能に遜色がありません。安定したネットワーク通信ができることがわかると思います。
Global ReachのSLAはどれくらい?
ExpressRouteのSLAは99.9%以上です。このSLAはプロバイダーエッジ(もしくはカスタマーエッジ)からMSEEまでの通信品質を保証するものです。プロバイダーエッジからカスタマーエッジまでは各回線事業者の提示するSLAに従います。
また、MSバックボーンネットワーク内の通信帯域に関しては帯域保障はされていません。
ExpressRouteの料金って?
ExpressRouteは契約する帯域速度によって利用料金が変わります。詳しくは以下の公式ページをご確認ください。
また、ExpressRouteの料金は大きく分けるとMicrosoftに支払うAzureサービス料金と、通信事業者に支払う回線利用料に別れます。回線利用料は通信事業者ごとにプランが異なるので確認しましょう。Azureサービス料金は2パターンで算出できます。
従量課金制の場合
従量課金制の場合、ExpressRoute回線、Virtual Networkゲートウェイ、ExpressRouteを利用した通信量によって料金を算出できます。
例えば、200 MbpsのExpressRoute回線と標準VNetゲートウェイ(帯域幅:1 Gbps)で月に10 TBの通信を行った場合は以下のようになります。
16240 + 21.28 * 730 + 5.6 * 10240 = \89,118.4
ゲートウェイの料金は月間730時間稼働としています。ExpressRouteでの通信料金は日本リージョンが含まれるゾーン2では、1 GBあたり5.6円となります。これは、Azureのデータセンターから出ていくトラフィックにのみ課金が発生します。
定額制の場合
定額制の場合、ExpressRoute回線、Virtual Networkゲートウェイによって料金を算出できます。
先程と同じく200 MbpsのExpressRoute回線と標準VNetゲートウェイ(帯域幅:1 Gbps)で構成した場合は以下のようになります。
145600 + 21.28 * 730 = \161,134.4
従量課金と比べて高くなってしまいましたが、常時大量の通信が見込めたり、利用料を定額にしたい場合にはこちらのプランが良いでしょう。
Global Reachを利用する場合
Global Reachを利用するExpressRoute回線ごとにGlobal Reachアドオンの料金が発生します。この費用も帯域幅ごとに料金が異なります。
また、Global Reachの場合は送受信両方のトラフィックに対してゾーンごとの通信量が発生します。ゾーン2の場合、送受信1 GBごとに\12.32が発生します。
広がるMicrosoftクラウドを活用したネットワーク
Azureは今回紹介したGlobal Reach以外にも魅力的なネットワークサービスに力を入れています。Azureデータセンターをつなぐ、世界トップクラスのネットワークを活用したサービスを利用できるって魅力的ですよね!
もちろんこの恩恵を一番近くで受けられるのはAzureを利用したサービスです。クラウド事業者が提供するグローバルネットワークを使えば、様々なクラウドサービスをもっと効果的に利用することができます。クラウド時代の新しいネットワークの形を検討している方は是非ともAzureの利用を検討してみてください。
この記事を書いた人
- Azure導入支援デスク 編集部
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