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Azure Migrateとは
Azure Migrateはオンプレや他のクラウドで稼働しているマシンのAzure移行を支援するサービスです。以前は「Migrate Project」という名前のAzure移行診断サービスとして提供されていましたが、新たに機能が追加されて「Azure Migrate」として生まれ変わりました!
2019/7/12時点で確認できている情報をお届けします。
Azure Migrateでなにができる?
Azure Migrateが提供する主な機能は次の3つです。
- 移行元マシン群の検出機能:移行元マシンの検出と移行診断に利用するメタデータの収集
- クラウド移行時の評価機能:Azure移行可否の判断および適切なサイジングとコストの算出
- マシンのクラウド移行機能:エージェントレスでのAzure移行の実施と移行状況の追跡
これら3つの機能が統合されたサービスとなっており、Azureへ移行する手助けをしてくれます。しかも、これらの機能を提供するためのツールは、Microsoft標準のツールをはじめとして複数のベンダーから提供されており、移行元環境や利用したい機能によってツールを選別できます。なお、Microsoft標準ツールは無料で利用することができます。
今回はMicrosoftの標準ツールを使用したオンプレVMの検出・評価・移行について紹介します。
Microsoft標準ツールの特徴
Microsoft標準ツールはMigrateアプライアンスと呼ばれ、検出と評価はHyper-V環境とvSphere環境を、移行はvShepre環境のみをサポートしています。物理マシンや他のクラウドで稼働しているマシンはサポートしていません。それらのマシンを移行したい場合は他ベンダーのツールを利用する必要があります。
Migrateアプライアンス自体は無料で利用することができます。ただし、移行時に利用する他のストレージや移行後のVMのサービス利用料は発生するので誤解しないよう注意してください。
Azure Migrateでの移行の流れを紹介
Azure Migrateで移行をするための環境準備
Azure Migrateを利用するためにいくつかの準備が必要です。まずAzureで準備しなければいけないのは次の要素です。
- Azure Migrateおよび移行後のVMを展開するためのAzure サブスクリプション
- サブスクリプションの「共同作成者」権限をもったAzure ADユーザー
- Azure ADにアプリを作成する権限を持ったAzure ADユーザー
前述の通りMigrateアプライアンスはHyper-V環境とvSphere環境をサポートしています。それぞれの環境でインターネット接続とMigrateアプライアンスを展開するためのリソースが必要です。
また、移行元環境としてはそれぞれ次のバージョンをサポートしています。
- Hyper-V:Windows Server 2012 R2, Windows Server 2016
- ESXi:v5.5以上
- vCenter:5.5, 6.0, 6.5, 6.7
この他アカウントの権限やAzure Migrateとの通信に使用するポートの許可など細かい確認点があります。
MigrateアプライアンスはAzure Migrateのプロジェクトを作成した後、Azureポータルからダウンロード可能です。VHDやOVFテンプレートとしてダウンロードできます。
オンプレVMの検出とメタデータ収集
移行評価に利用するために、MigrateアプライアンスがオンプレVMのメタデータを収集してAzure Migrateへ送信します。収集される情報はVM表示名・CPUコア数・メモリサイズ・ディスクサイズなどの構成データと、CPU使用率・メモリ使用率・ディスクIOPSなどのパフォーマンスデータの2種類があります。
パフォーマンスデータは定期的に収集され、収集期間が長いほどデータの信頼度が上がります。Azure Migrateでは十分な信頼度のデータを集めるために最低でも1日以上の時間をおくことが推奨されています。
移行適性と最適なサイジングを評価
Migrateアプライアンスが収集したメタデータをもとにAzureへの移行適性判断・VMのサイジングとランニングコスト算出を行えます。
移行適性判断
移行適性判断では構成データからオンプレVMがAzure VMと互換性があるかを判定します。互換性は利用するリソースサイズやOSのサポート状況をもとに判断されます。移行可能か条件付きで移行可能と判定された場合は、Azureで稼働させる想定のサイジングとコスト算出が行われます。
移行不可能かデータが不足して判定できなかった場合は、サイジングとコスト算出は行われません。条件付きで移行可能か移行不可能と判断された場合には、移行を妨げている問題の解決策やOSのサポート状況が案内されます。
サイジング
Azure VMのサイジングでは構成データやパフォーマンスデータをもとにしてAzure VMのサイジングが行われます。サイジング評価時に算出の対象とするVMシリーズやディスクの種類(Premium SSD/Standard SSD/Standard HDD)をプロパティで指定できます。
評価の方式には2種類あり、オンプレの構成データをそのまま利用する「オンプレベース方式」と、パフォーマンスデータをもとに実際の利用状況に合わせた値を算出する「パフォーマンスベース方式」があります。パフォーマンスベース方式では「快適性係数」を指定することで、将来的なシステム負荷の増大に合わせたバッファを含めることができます(算出スペックの1倍~2倍、10%単位で指定)。
ランニングコスト算出
算出されたAzure VMのサイジングデータをもとにランニングコストの算出が行われます。コスト算出に関してもプロパティで費用の算出に関係する項目を指定することが可能です。指定可能な項目はターゲットリージョン・サブスクリプションプラン・月間の稼働時間(日数と時間を指定)・算出通貨などです。ほかにも、長期的にAzure上で稼働するVMにおすすめの予約インスタンス(Reserved Instances)やハイブリッドベネフィットの適用を想定した算出も可能です。
この他にLog Analyticsと連携してService Mapを使ったVM間のプロセス依存関係を可視化できます。エージェントがVMのプロセスと通信状況を監視し、関係性をマッピングします。依存関係のあるVMをグルーピングすることで効率的な移行の計画を立てるのに役立ちます。
ポータル操作でAzureへ移行
ターゲットリージョンを指定し、オンプレVMをAzureへ移行することが可能です。Migrateアプライアンスで移行をサポートするのはvSphere環境のみですが、エージェントレスで移行を実行できるのが大きな特徴です。なお、Azureへ移行するVMにはゲストOS内であらかじめAzureの環境に合わせたいくつかの設定が必要です。
移行プロセスは全てAzureポータルから行えます。移行ターゲットの設定を行うと、Migrateアプライアンスによって移行対象のVMデータのレプリケートが実行されます。移行ターゲットの設定には、前項の評価機能で算出したサイジングデータを利用するか、手動で設定できます。移行データは初回同期後、差分データが同期されます。
ターゲットリージョンのストレージアカウントへVMデータのレプリケートが完了すると、移行の準備が整います。移行の前にはテスト移行を実行でき、本番環境に影響を与えずに移行を試すことができます。テスト移行は何度でも実行可能です。
オンプレVMがAzureで問題なく稼働することを確認できたら本番移行を開始します。本番移行時はオンプレVMをシャットダウンしておくことが推奨されます。シャットダウン後、すべてのデータが同期された状態で移行を実施します。
Azure Migrateを触ってみて
一度Migrateアプライアンスを展開した後はAzureポータルで操作が完結するのが非常に便利でした。評価のプロパティはターゲットリージョンや移行対象のVMシリーズに加えて、予約インスタンスやハイブリッドベネフィットの想定も柔軟に可能でした。パフォーマンスデータをもとにした正確なスペックが算出でき、移行時にそのデータを流用できるのもシームレスでよかったです。特にストレージのIOPSなどはクラウド移行後の想定外のボトルネックに陥りやすい点ですので、根拠のある指標を利用できるのは利点です。
今回はMicrosoftの標準ツールを使用してみましたが、すでにAzure Migrateには3rdパーティ製の評価・移行ツールが提供されています。その中には今回のツールでは対応していなかった物理マシンや他クラウドで稼働するマシンであったり、Hyper-VマシンのAzure移行をサポートしているものもあります。様々な環境からのAzure移行がサポートされています!
ただし、可用性セットやVNETの構成は利用者自身が行う必要があります。最低限でもAzureのお作法的な構築ナレッジを持っておく必要はあるでしょう。当社ではAzureの新規環境構築をはじめ、オンプレからのAzure移行を支援できます。クラウドへの移行を検討している、Azureで既存のマシンを動かせるか確かめたい、といったご要望があればぜひとも当社にお声がけください。
この記事を書いた人
- Azure導入支援デスク 編集部
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