Power BIライセンス変更とMicrosoft Fabricへの移行

本記事のポイント

    1. Power BI で廃止されるのは「Premium per Capacity」だけ
    2. EA を持つ企業は、契約の終了日まで P-SKU を更新できる
    3. 最初にすることは、既存のレポートが移行後も同じ結果を返すかの確認

Power BI のライセンスが2つの点で変わりました。ひとつは価格です。2025年4月1日から、商用の顧客を対象に、Pro は1ユーザーあたり月額10米ドルから14米ドルへ、Premium Per User(PPU)は20米ドルから24米ドルへ上がりました。Power BI の提供開始からおよそ10年で初めての改定です。もうひとつは、容量単位で契約する Premium per Capacity(以下、P-SKU)の販売終了です。新規の購入は2024年7月1日に締め切られ、後継の Microsoft Fabric(F-SKU)への移行が進んでいます。判断の期限は、Microsoft との契約の形態によって変わります。

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1. 期日と条件


対象 期日 内容
新規の顧客 2024年7月1日 Premium per Capacity(P-SKU)が購入の画面から外れた
EA を持たない既存の顧客 2025年1月1日 この日まで P-SKU を更新できた。以降は更新できない
EA を持つ顧客 契約の終了まで 年次で P-SKU を更新できる。契約の終了後は Fabric へ移る
Pro と PPU の価格(商用の顧客) 2025年4月1日 Pro が月額10米ドルから14米ドル、PPU が20米ドルから24米ドルへ

廃止されるのは Premium per Capacity だけです。 Pro と PPU は廃止されません。ここを取り違えると、社内の議論がかみ合わなくなります。なお Microsoft は、ソブリンクラウドの顧客は現時点では影響を受けないとしています。

価格の改定は、既存の商用顧客には2025年4月1日以降の契約の更新時から適用されます。新規の顧客には、2025年4月1日以降の購入から適用されます。Microsoft 365 E5 または Office 365 E5 の年間契約で年払いの場合など、条件によって扱いが異なるため、自社の契約条件を確認してください。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

自社の期限は、契約の形態で決まります。まず調達の担当部門に、Microsoft との契約が Enterprise Agreement かどうかを確認してください。EA であれば、P-SKU を使える期限は契約の終了日です。そのため、判断の期限はそれより前になります。移行の設計、検証、切り替えに必要な期間を終了日から引くと、意思決定の期限の目安になります。設計と検証を並行して進める場合は、この目安より後ろにできます。EA でない場合、P-SKU の更新はすでにできません。

 

2. Microsoft Fabric とは何か


Microsoft Fabric は、Power BI Premium の機能をすべて含んだ上で、扱える処理を増やしたプラットフォームです。データの取り込み、加工、保存、分析、可視化を同じ基盤の上で行えます。

OneLake

Fabric の中心にあるのが OneLake です。組織全体でひとつのデータレイクを共有するという考え方です。表形式のデータの保存形式は Delta Parquet に統一されているため、どのワークロードも同じデータをそのまま読めます。画像や文書などのファイルも置けます。ショートカットで参照する場合、データは元の保存先に残ります。

保存の場所と形がそろうため、部門ごとにデータが分断される状態を、保存の側から解消できます。同じデータを複数の場所に複製する必要も減ります。ただし、導入するだけで分断がなくなるわけではありません。ワークスペースをどう分けるか、誰にどの権限を与えるか、どのデータを誰が所有するかは、別で決める必要があります。

費用の面

F64 以上の容量に置いた Power BI のコンテンツは、Viewer ロールの利用者であれば、無償の Fabric ライセンスでも閲覧できるため、閲覧する人数が多い組織ほど、Pro ライセンスの本数を減らせます。

一方、F64 より小さい容量(F2、F4、F8、F16、F32)では、閲覧する利用者にも Pro、PPU、または個人向けのトライアルが必要です。また、Fabric 容量に置いたワークスペースで Power BI のコンテンツを作成したり共同編集したりする人には、容量の大きさにかかわらず Pro または PPU が必要です。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

費用の比較は、現在の Pro ライセンスの本数だけでは成り立ちません。必要な F-SKU の大きさを先に見積もってください。同時に実行する処理の量、レポートの更新頻度、扱うデータ量から容量を決め、その容量の費用と、減らせる Pro ライセンスの費用を比べます。既存の Premium 容量があれば、その使用率の記録が候補を絞る基準になります。

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3. Fabric で使える主な機能


Fabric への移行は、ライセンスの切り替えだけで終わりません。Power BI 以外のワークロードを同じ基盤で扱えます。なお、P 容量でも Fabric を有効にすれば、これらのワークロードを使えます。

Direct Lake

OneLake 上のデータを Power BI のレポートから直接読む方式です。データを取り込む方式と、都度問い合わせる方式の中間にあたります。データを複製しないため、元のデータの更新がそのまま反映されます。読み出しの速さは、取り込み方式に近くなる場合があります。データ量やモデルの構成によっては、この方式が使えないことがあります。SQL 分析エンドポイント経由の構成では、条件によって都度問い合わせる方式へ切り替わります。

ショートカットとミラーリング

ショートカットを使うと、Amazon S3、Google Cloud Storage、Azure Data Lake Storage などに置いたデータを、移動させずに参照できます。対応先は更新されるため、利用の前に現在の一覧を確認してください。オンプレミスのデータを参照するには、オンプレミスデータゲートウェイの設置が必要です。ミラーリングは、Snowflake などのデータベースの変更を OneLake 上に反映します。対象のオブジェクトの種類によって、継続的に複製するもの、ショートカットで元の場所を参照するもの、一定の間隔で同期するもの、対応していないものに分かれます。導入の前に、自社で使っているオブジェクトが対象かどうかを確認してください。

Data Factory

多数のデータソースに接続できます。対応する接続先の一覧は Microsoft が公開しています。データの取り込みと加工の処理を、この上に組みます。Bronze、Silver、Gold の段階でデータを加工するメダリオンアーキテクチャは、Data Factory 単体の機能ではなく、Fabric 全体で構成する設計の型です。

Activator と Real-Time Intelligence

Activator は、データの変化を検知して処理を実行するしくみです。在庫が一定の数を下回ったときに担当者へ通知する、といった処理をコードを書かずに設定できます。Real-Time Intelligence は、IoT機器やストリーミングのデータを扱います。

Copilot

自然文からクエリやレポートの下書き、データ処理の流れを作る機能です。データ処理の専門知識がない利用者でも、扱える範囲が広がります。使える処理は、組み込まれているワークロードによって変わります。利用には有料の容量が必要で、テナントの管理者による設定と、対応するリージョンであることも条件になります。出力の正しさは保証されないため、内容を評価できる担当者が確認する前提で使います。トライアルの容量そのものを Copilot の課金元にはできません。有料の容量を割り当てた利用者であれば、トライアルのワークスペースでも Copilot を使える場合があります。

アクセス制御

管理者は、行レベル、列レベル、オブジェクトレベルでアクセスを制御できます。この3つは上下の関係にある段階ではなく、それぞれ別の制御です。どの方式を使えるかは、対象のアイテムの種類と、データへの接続の方式によって変わります。すべての制御がすべてのアイテムで使えるわけではありません。Microsoft Purview の感度ラベルと組み合わせて、データの分類にもとづく保護をかけることもできます。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

移行の前に確認しておくのは、既存のレポートが移行後も同じ結果を返すかどうかです。移行後にも確認はできますが、問題を抱えたまま本番を切り替えると、業務が止まります。利用頻度の高いレポートから順に、移行前の環境と移行後の環境で同じ条件の数字を突き合わせてください。60日間の無料トライアルはこの確認に使えます。ただし開始にはテナントの管理者による許可が必要で、テナントごとの上限や対応するリージョンの制約もあります。Copilot のように、有料の容量を割り当てた利用者でなければ使えない機能もあります。

 

4. Fabric を検討する価値がある企業


次のいずれかに当てはまる場合、移行を検討する価値があります。

  • Premium per Capacity を使っており、EA の終了日が近い
  • Power BI のレポートを閲覧するだけの利用者が多く、Pro ライセンスの本数が費用の大半を占めている
  • Microsoft 365 をすでに広く使っている(既存の環境との統合が進めやすい)
  • ノーコードやローコードでデータ処理を組みたいチームがいる(データの担当者以外も扱える)
  • データの管理を集中させたい(OneLake で保存先をそろえられる)
  • AWS や Google Cloud のデータも併せて扱っている(ショートカットでクラウドをまたいで参照できる)
  • Power BI とは別に、データの取り込みや加工の基盤を持っている

当てはまる項目が少ない場合でも、必要な機能やデータ量によって判断は変わります。価格の改定分だけを見て決めるのではなく、上の項目に照らして検討してください。

 

5. よくある質問


Q. Pro のライセンスも使えなくなるのですか。
使えます。販売が終了したのは Premium per Capacity(P-SKU)だけで、Pro と PPU は続きます。2025年4月1日に価格は変わりましたが、提供そのものは終わっていません。

Q. 判断の期限はいつになりますか。
契約の終了日は、P-SKU を使える期限です。意思決定はそれより前に済ませることになります。移行の設計、既存レポートの確認、切り替えの作業に必要な期間を、終了日から引いてください。

Q. EA の契約が数年先まで残っている場合、着手はいつになりますか。
契約の終了日までは年次で更新できます。ただし移行の設計、検証、切り替えには期間がかかるため、終了日の直前に着手すると選択肢が減ります。終了日から作業期間を引いた日を、意思決定の期限として置いてください。

Q. F64 にすると、誰の Pro ライセンスが不要になりますか。
閲覧するだけの利用者です。Viewer ロールであれば無償のライセンスで足ります。レポートを作成する人と、共同で編集する人には、引き続き Pro または PPU が必要です。

 

6. まとめ


Power BI のライセンス変更は、Pro と PPU の価格改定と、Premium per Capacity の販売終了という2つの内容です。廃止されるのは Premium per Capacity だけで、Pro と PPU は続きます。

EA を持つ企業は、契約の終了日まで P-SKU を更新できます。その日が移行の期限であり、判断の期限は移行の作業期間を引いた日になります。

Premium per Capacity を使っている企業にとって、この変更は避けて通れません。移行は SKU の入れ替えにとどまらず、OneLake、Direct Lake、Data Factory、Activator といった選択肢が加わります。

費用の増加として処理するか、データ基盤を見直す機会にするか。この判断は情報システム部門だけで完結せず、経営層を含めた議論が必要です。

最初の作業は、既存のレポートが移行後も同じ結果を返すかの確認です。60日間の無料トライアルをこの確認に充てられます。

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7. 出典


  • Pro は月額10ドルから14ドル、PPU は20ドルから24ドル。2025年4月1日から。
  • 出典: Microsoft「Important update to Microsoft Power BI pricing」(Power BI ブログ、2024年11月12日発表)。掲載ページ powerbi.microsoft.com
  • 新規購入の終了は2024年7月1日。EA を持たない既存顧客の更新は2025年1月1日まで。EA を持つ顧客は契約の終了まで年次で更新できる。
  • 出典: Microsoft「Important update to Power BI Premium licensing」。掲載ページ microsoft.com
  • ソブリンクラウドの顧客が影響を受けない旨も同じページに記載がある(現時点では Microsoft Fabric を利用できないため)。
  • F64 以上では、Viewer ロールの利用者が無償の Fabric ライセンスで Power BI のコンテンツを閲覧できる。F64 より小さい容量では閲覧にも Pro、PPU、または個人向けトライアルが必要。
  • 出典: Microsoft Learn「Microsoft Fabric のライセンスと容量について」。掲載ページ learn.microsoft.com
  • Data Factory が接続できるデータソースは170を超える。
  • 出典: Microsoft Learn「Connector overview」(Fabric Data Factory)。掲載ページ learn.microsoft.com
  • Fabric の無料トライアルは60日間。Copilot はトライアル容量では利用できない。
  • 出典: Microsoft Learn「Fabric トライアル」および Copilot の要件のページ。
  • 3節の各機能(Direct Lake、ショートカット、ミラーリング、Data Factory、Activator、Real-Time Intelligence、Copilot、アクセス制御)の仕様。
  • 出典: Microsoft Learn の各機能のページ。Direct Lake の概要、OneLake のショートカット、Fabric のミラーリング、Data Factory の概要、Activator とは、Real-Time Intelligence の概要、Fabric の Copilot、Fabric のセキュリティ。

この記事を書いた人

伊丹 優花
インフラ、Data&AIのマーケティング担当