Azure VMware Solution(AVS)で実現するプライベートクラウド

※2020年12月23日更新

サーバーのリプレース等に伴い、オンプレミスからクラウドへの移行を考える企業が年々増えています。クラウドへの移行戦略はいくつかあり、アプリケーションの位置づけによって取り得る戦略が変わってきます。その中にはIPアドレスを変更できないなど様々な事情で既存のアプリケーション実行環境をそのまま移行したいというニーズも多いのですが、実際にはアプリケーションの変更を伴うケースが大半でした。
しかしVMwareユーザーであれば、オンプレミス環境をほぼそのままの形でプライベートクラウド化し、しかもMicrosoft Azureのサービスとも簡単に連携できるサービスがリリースされました。それがAzure VMware Solution(以下、AVS)です。
本稿では、AVSの概要とサービス内容およびAzureとの連携について解説します。

※本稿の内容は2020年10月19日時点で公開可能な情報に基づいています。
※本稿の内容には、2020年10月19日時点で開発中または一般提供サービス前のサービスや機能の説明が含まれています。

Microsoft Azureの全体像とAVSの位置づけ

Microsoft Azure(以下、Azure)は、Microsoftがグローバルで提供する世界最大級のパブリッククラウドです。世界中に60を超えるリージョンが存在し、そのうち2つは日本にあります。セキュリティについては万全を期しており、年間10億ドルのサイバーセキュリティ投資を行っています。Azure自体のセキュリティ強化はもちろんのこと、地元警察と連携しながらダークネットを追い詰めて撲滅するといった活動も行っています。また世界中の93の第三者機関からのコンプライアンス認定を受けています。日本であれば、例えばFISC(金曜情報システムセンター)のセキュリティ認証を受けています。

MicrosoftがOSや開発ツールを提供してきた歴史があるため、コンテナ、ウェブサービス、データベース等のPaaSの充実ぶりは定評があります。最近ではAI、アナリティクス、IoTなどの最新テクノロジーを実現するプラットフォームも提供しています。IaaSに関しても世界トップクラスです。AVSは、このIaaSサービスの1つと位置づけられます。運用管理と認証・セキュリティもAzureが重視するサービスです。

Microsoft Azureのブロック図 Microsoft Azureのブロック図

AVSの3つの特長と5つの価値

AVSの3つの特長

AVSの主な特長は3つあります。
大きく以下の3つの特長を持っています。

  • 1st Partyサービス、すなわちWMware社の正式な認証・認定を受けたサービス
  • 既存プライベートクラウドとの互換性(例えばIPアドレスをそのままに移行することが可能)
  • Azureネイティブサービスと統合(AWSからネイティブサービスを利用可能)

つまり新しいVMや移行可能な対象はIaaSで稼働させ、一方でIaaSへの移行が難しいケース(IPアドレスを維持したままの移行やダウンタイムなしでの移行、あるいはRed Hat 3 or 4、Windows 2000といったレガシーOSの移行)はAVSへ移行するといった選択が可能だということです。しかもAVSはAzureと密に統合されていますから、そのまま移行したシステムの周辺システムをクラウドネイティブに変更していくことも可能です。

AVSの5つの価値

AVSには大きく5つの価値があります。

Azure VMware Solution ならではの5つの価値 Azure VMware Solution ならではの5つの価値

1)グローバル

2020年9月末のリリース時では、米国東部、米国西部、西ヨーロッパ、オーストラリア東の4つのリージョンに展開されました。
その後12月1日より東日本リージョンでの一般提供が開始されました。現在提供されているリージョンは、図に青色の丸で示した6カ所です。水色のリージョンは来年3月までに順次展開される予定です。

Azure東日本リージョンでの一般提供開始 Azure東日本リージョンでの一般提供開始

東日本リージョンでの提供価格は、こちらのウェブページで見積もることができます。

ノード単位の時間課金なので、使い方によってはかなり低価格になる可能性があります。

2)VMwareプライベートクラウド環境と高い互換性

vSphere ClientやPower CLIなどVMwareネイティブ運用機能は当然そのまま利用できます。ネットワーク環境のNSX-Tとも完全な互換性があります。ハイブリッド構成を構築するHCXも標準搭載されており、L2延伸やvMotionも問題なく適用可能です。これまで社内で蓄積していたスキルセット、プロセス、ワークフロー、スクリプト等のノウハウや資産が無駄になりません。

3)Azureネイティブサービスとの統合

AVSをAzureネイティブのサービスと統合して利用すればでシステムを最適化・強化できること。いくつかの例を後述します。

4)Azureファミリー

AVSはAzureファミリーとして位置づけられるため、Azure独自のコストメリットを享受することが可能です。具体的には、拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)の無償提供、オンプレミスで利用中のWindows ServerおよびSQL Serverライセンスの活用(Azureハイブリッド特典)、1年間または3年間の予約によるAVSノード割引き(最大53%オフ)などです。

5)Microsoft 1st Partyソリューション

AVSはMicrosoft 1st Partyソリューションとして一貫したサポートを受けられます。お客様へのサポートと契約につきましては、Microsoftが単一窓口になります。AzureはもちろんVMware環境特有の事象を含むあらゆるレイヤーのインシデントにMicrosoftが対応します。問題の切り分けもMicrosoftが対応します。VMware社のサポートが必要な場合でも、エンジニアはバックエンドで連携して対応に当たりますが、窓口は常にMicrosoftです。

お客様とMicrosoftの責任範囲を図に示します。基本的にはvSANまでがMicrosoft、ゲストOSからがお客様の責任範囲となります。ただしパラメタ変更やポリシー設定など構成管理については、NSX-Tからがお客様の責任範囲となります。

またAVSはMicrosoftのパートナー企業から購入することもできます。日商エレクトロニクスではAVSが適しているかを含めた事前のアセスメントやAVS導入後の運用・サポート提供していますので、AVS移行を失敗したくない、運用負荷を下げたいという場合は、是非パートナー企業の支援もご検討ください。

Azure VMware Solution責任分解モデル Azure VMware Solution責任分解モデル
※赤枠がパートナー企業提供範囲

AVSの基本構成

AVSの構成イメージでは、一般的にオンプレミスにVMware基盤が存在し、Azure側にはお客様向けにシングルテナントの専用区画を用意します。オンプレミスと専用区画との間はExpressRouteでの接続を推奨しています。Azure内ではお客様専用区画とAzureネイティブサービスを高速バックボーン回線で接続しています。これによりお客様システムとAzureサービスの連携による、よりリッチなシステムを実現することができます。

Azure VMware Solution 構成イメージ Azure VMware Solution 構成イメージ

パッケージ仕様は以下の通りです。

Azure VMware Solution パッケージ仕様Azure VMware Solution パッケージ仕様

Azureサービスとの統合によるシステムの最適化・強化

AVSとAzureネイティブサービスを統合・連携することで、お客様のプライベートクラウド環境をより最適化・強化することができます。代表的なユースケースとしては、運用管理、セキュリティ、アプリケーション基盤、データ保護などの最適化・強化が挙げられます。
いくつか具体例を見ていきましょう。

Azureストレージサービスと統合

まずストレージサービスとの統合による最適化です。ファイルサーバーのデータ領域を、用途に応じてAzureの様々なストレージサービスに移行し、vSANストレージ容量を最適化しつつ、運用とコストの最適化も図ることができます。
Azure VMware Solution Azureストレージサービスと統合

Azureデータベースサービスとの統合

次に、Azureデータサービスとの統合による最適化です。フロントエンドは仮想化環境のまま、バックエンドのデータベースワークロードをAzureに移行することができます。これによりシステムのモダナイズやライセンスコストの最適化が容易に行えます。
Azure VMware Solution Azureデータベースサービスとの統合

Azure VMware Solution Azure PaaSサービスとのさまざまな連携方法

AVSとAzure PaaSサービスとは様々な連携方法が可能です。代表的な2つの例を示しましょう。1つはAVSと直接接続する方法です。この方法ではAzure PaaSもインターネットから直接接続されることになります。これではセキュリティに難がある場合には、仮想ネットワークゲートウェイ経由でAzure PaaSと接続します。この方法では、Azure PaaSとのインターネット経由での接続は禁止されPrivate Link経由でしか接続できなくなります。

データバックアップもAzureのMABS(Microsoft Azure Backup Server)で可能になります。これによりバックアップのコストダウンが図れる可能性があります。さらに柔軟なバックアップを希望される場合には、COMMVAULT、VERITAS、VEEAMなどのサードパーティのソリューションを利用もサポートしています。
Azure VMware Solution Azure PaaSサービスとのさまざまな連携方法

以上、見てきましたように、AVSを活用することでオンプレミスとパブリッククラウドをシームレスに連携できます。同時に、Azure PaaSとも連携することでお客様のシステムの最適化および強化を無理なく簡単に実現することができます。

VMwareユーザー様は、是非一度AVSをご検討ください。

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この記事を書いた人

Azure導入支援デスク 編集部
Azure導入支援デスク 編集部
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