CRMシステムとMAツールの高度なデータ連携基盤を構築し、
見込み顧客の行動を可視化
データに基づく精度の高い営業アプローチで成約率を向上
リード情報とMAツールの連携によってデータドリブンな営業活動の「勝ち筋」が明らかに
(左より)
株式会社トーシンパートナーズ
情報システム部 システム管理課 課長代理
秋山 卓雄 氏
株式会社トーシンパートナーズ
マーケティング部 マーケティング課 主任
中野 英明 氏
企業名:株式会社トーシンパートナーズ
「不動産の新たな価値を創造し、一人ひとりの豊かな暮らしと、活力ある社会を実現する」をミッションに、投資用マンションを販売。土地の仕入れから企画、販売、管理、アフターフォローまでの一貫体制を強みとする。近年はアプリ内の行動でポイントが獲得できる入居者向けアプリのほか、物件オーナーが所有物件に関する問い合わせをできるチャットサービスなども提供している。
精度の高い見込み顧客の発掘に向けて
リード情報とMAツールのデータ連携が課題に
MA導入の背景について
都心部を中心に単身者向けマンションの企画・開発・販売を手がけるトーシンパートナーズ。グッドデザイン賞をはじめ国内外の建築賞やデザイン賞において数多くの受賞歴を誇る資産運用型マンションの「ZOOM」を展開する同社では、顧客(マンションオーナー)にマンションの1室を販売し、顧客はその部屋を賃貸することで収入を得ることで資産形成を支援するというビジネスモデルで成長を続けている。
年金問題が深刻化する中、老後の資金確保、相続税対策、子どもや孫などの家族の住居用、利回りの獲得などの目的で、安定収入が見込めるマンション経営を検討する人は近年増加している。同社の営業担当者やマーケティング担当者にとっては、こうした投資に関心のある経営者や医師といった富裕層、また30代~50代の会社員・公務員に的確にアプローチし、販売契約につなげるまでがミッションとなる。
展示会の来場者、新聞・雑誌広告からの問い合わせ、またWebサイトやSNSを経由して獲得した見込み顧客のリード情報は、2014年に導入したCRMシステム「Dynamics 365」で管理をしていた。その後、販売力のさらなる強化に向けて本格的なメールマーケティングが必要と考えた同社では、アドビシステムズのMAツール「Marketo」の導入を決定。同時に2つのツール間のデータを連携させるため、Marketoの豊富な導入実績を持つ日商エレクトロニクスに提案を依頼した。マーケティング部 マーケティング課 主任の中野英明氏は、その経緯について次のように振り返る。
「Dynamics 365には過去20数年分、数万件のリード情報が蓄積されていますが、不動産という単価の高い商品を扱っている性格上、商談のリードタイムは総じて長くなることが多くあります。そのため、見込み顧客の購買意欲がいつホットになるかも把握しにくく、営業担当も顧客のアクティビティを追い切れずに商談の機会を逸してしまうこともありました。そこで、MarketoによるDMで見込み顧客とのつながりを維持しながら、アクティビティに応じて的確にアプローチするマーケティング施策を実施するためには、両ツールのデータ連携が必要となりました」
中野氏コメント:「データ連携の結果、見込み顧客の行動が可視化され、明確なデータに基づく営業活動が実践できるようになりました」
精度の高い営業アプローチを支える
高度なデータ連携基盤
顧客に対する適切なアプローチに必要なデータを集める連携手法
MarketoとDynamics 365のデータ連携に向けて、トーシンパートナーズが日商エレクトロニクスに支援を要請するに至った背景について、情報システム部 システム管理課 課長代理の秋山卓雄氏は次のように説明する。
「マーケティング部門として、適切なお客様に、適切なタイミングでアプローチしたいという要求があります。しかし、そのためにシステム間で連携させないといけないデータとその手法などは、わからないことが多くありました。日商エレクトロニクスからは、具体的なデータ連携方法も提示していただき、疑問や不安を解消することができました」
また、データ連携基盤が稼働しはじめた後も連携項目を追加したり、改修したりする作業の発生が想定されるため、継続的なサポートが充実していた点も評価のポイントになったという。
2021年1月にスタートしたデータ連携基盤の構築プロジェクトは、4月までの約3カ月で完了した。当初はMarketoとDynamics 365の双方向の連携を考えていたが、バッチ更新時にデータがバッティングする課題が見えてきたため、途中からは片方向からの更新とした。
「プロジェクトを進めてみて初めてわかることもありましたが、日商エレクトロニクスの支援を通じて柔軟に対応しながら、スピード感を持って進めることができました」(秋山氏)
データ連携基盤の構築に向けた
日商エレクトロニクスの手厚いサポート
短期プロジェクトの過程では、日商エレクトロニクスから提供された連携項目の設定シートが大きな役割を果たした。
「システム間でのリアルタイムに近いデータ連携自体が初めての経験で、どのデータをどのように結びつけていいかがわかりませんでした。設定シートによって、どのデータを渡したいかチェックを付けるだけで対応することができます。このシートは要件定義書としても機能するので、常に関係者間で最新情報を共有しながらプロジェクトを進めることができました」(秋山氏)
導入過程では、その他にもMarketoから吐き出されたCSVデータをDynamics 365に取り込むための連携ツールが日商エレクトロニクスから提供されるなど、要所要所のサポートがスムーズな導入につながった。
社内でも情報システム部とマーケティング部が密に連携し、日々意見をすり合わせた。中野氏は「マーケティングや営業からの要望に対して、情報システム部門からはさまざまな提案が出されました。SMSやLINEなどのコミュニケーションツールのデータをマーケティング活動に活用するといった施策もその1つです。これは、他部署と連携することの重要性を再認識したことにより、今後も社内の意見を積極的に取り入れて、マーケティングの成果を高めていきたいという新たなマインドから生まれたものです」と語る。
データに基づく営業活動から生まれる
社内のデータ活用の好循環
現在、MarketoとDynamics 365は日中の時間帯で20分に1回の間隔でバッチ連携(差分更新)している。データ連携の結果、Marketoで実施した施策の状況はDynamics 365上にすぐに反映され、営業担当者はそこから新たなヒントを得ることができる。
「顧客がどのような行動をとり、どのようなことに関心を持っているかが可視化されたことで、明確なデータに基づく営業活動が実践できるようになりました。これまでデータは一部の人間だけが見るものでしたが、社内に共有することで、さらに新しいリクエストがくるようになり、データ活用の好循環が生まれています」(中野氏)
秋山氏コメント:「今回のデータ連携基盤の成果を踏まえて、今後もさまざまなシステム、データの連携の施策を打ち出していきます」
システム連携をさらに拡大し
データドリブンな施策を強化
今後について、トーシンパートナーズではMarketoとDynamics 365間のデータ連携項目の追加、更新、改修を継続しながら、広告の成果測定ツールや販売管理システムなど、その他のシステムとの連携も検討していく考えだ。これにより、顧客がどのような経緯でトーシンパートナーズを知り、契約の確定まで至ったのかが詳しくわかるようになり、データドリブンなマーケティング、営業活動の「勝ち筋」をつかむことが可能になる。
「今後はビジネスに活かすための全社的な情報分析・活用の基盤が求められていきます。一般公開されているデータを含めて、現場の担当者が使いやすいデータ活用環境を整備していくことも情報システム部のミッションです。この中では、今回のデータ連携基盤構築のノウハウが生きてくるはずです。日商エレクトロニクスには現在の環境の安定的な運用と同時に、私たちのミッションの実現に向けた新たな提案を期待しています」(秋山氏)
不動産ビジネスのデジタルトランスフォーメーションに向けて、同社のデータ連携基盤は今後もさらなる進化を遂げていくはずだ。