Microsoft Build 2024キーノートまとめ(日本語)
こんにちは、双日テックイノベーションの鈴木です。5月21日からBuildが開催されていますね。
私は日本からのオンライン参加ですが、セッションはチェックしていますので内容をまとめたいと思います。
まずは、Day1のキーノートです!
目次
- 1.Microsoft Build とは
- 2.オープニング
- 3. アップデート情報
- 新しいカテゴリ、Copilot + PC
- Windows Copilot Runtime
- AIインストラクチャのアップデート
- NVIDIAとのパートナシップ
- AMDとのパートナシップ
- アップデート:Azure Maia
- パブリックプレビュー:Azure Cobalt
- OpenAIとのパートナシップ
- 一般提供:GPT-4o
- 一般提供:GPT-4o on Azure AI
- 新しいMaaS(Models as a Service)
- Hugging Face とのパートナーシップ
- 一般提供:Azure AI Studio
- パブリックプレビュー:Rreal Time Intelligence in Microsoft Fabric
- パブリックプレビュー:Microsoft Fabric Workload Development Kit
- AI Search
- プライベートプレビュー:GitHub Copilot Workspace
- パブリックプレビュー:GitHub Copilot for Azure
- アナウンス:Microsoft Copilot connectors
- アナウンス:Team Copilot
1.Microsoft Build とは
「Microsoft Build」は、主に開発者向けのカンファレンスで、Microsoftの様々なサービスの中でも特に開発者向けのサービスに対するアップデートや新サービスの発表が行われます。
今年は5月21日~5月23日の間、シアトルとオンラインで開催され、シアトル会場では最新の技術トレンドやベストプラクティスについても議論されるセッションもあるそうです。
今年は、Day0で早々にCopilot+ PCが発表、Day1のキーノートでは、GitHub Copilot、Azure AI Studio、Microsoft Fabricなど、「Copilot Stack」のすべてのレイヤーに対するアップデートが発表されました。
2.オープニング
開発者向けイベントの開幕として、開発者へのリスペクトを表明する始まりでした。
以下、一部サマリです。
Win32が初めて話題になったときと同じような、今までの常識が変わる瞬間に立ち会っていると感じる。データセンターの消費電力や冷却層からNPUに至るまで、あらゆる層が変化している。
今はまさにシステムの黄金時代といえるが、何がその原動力になっているのか?
それを考えるとき、スケーリング則に立ち返る。
* スケーリング則:時間と費用を投下すれば高い性能が実現する、というOpenAI社発の論文に記載された法則
スケーリング則の効果により、テキスト、音声、画像、ビデオなどの新しいインターフェイスが誕生し、複数のアプリやデバイス間でデータを共有できるようになったことで認知負荷が軽減され、複雑なタスクを正しく処理できるようになった。特に印象に残っているのは開発者たちの姿。彼らは前述の技術を応用し周りの世界を変えてきた。
例えば、インドの農家が政府の農業補助金についてGPT-3.5を使って推論したこと。わずか数か月前に西海岸で開発されたフロンティアモデルが、インドの開発者よってインドの田舎の農家の生活を直接改善するために使われた拡散速度に驚いた。
また、タイではGPT-3.5と4を使ってRAGでやったことのすべてを最適化していた。数週間前に発売されたばかりのものについて、タイの開発者が専門家として会話をしていた。これら民主化の力を目撃し、この業界にいる理由や仕事に深い意味を感じている。
このインパクトを世界にもたらすために真剣に取り組んでいる皆さんに心から感謝したい。
3. アップデート情報
それでは、ここからは、キーノートで言及されたアップデートやアナウンスをまとめていきます。
新しいカテゴリ、Copilot + PC
Microsoftは、昨年から3つのプラットフォームを構築しています。
1つ目は人の行動を支援するMicrosoft Copilot、
2つ目はAIアプリケーションの構築、ソリューションとエクスペリエンスを支援するCopilot Stack、
3つ目は、新しいカテゴリ、Copilot+PC
です。
Copilot+ PC自体についての詳細はキーノートでは語られませんでしたが、前日の発表ではかなり話題になりました。
Copilot+ PCとは、Day0で発表されたAI時代の新しいWindows PCです。
「あの時のあの資料なんだっけ…?」を簡単に見つけだる「Recall」機能や、ライブや録音済みの音声に対してキャプションを付けられる機能など、これまでのPCでは実現できない、より効率的にタスクをこなせる機能が追加されます。
Windows Copilot Runtime
Windows Copilot Runtimeにより、WindowsがAIアプリケーション構築に最適なプラットフォームに返信します。
まず、Windows Copilot Libraryは、すべてのAI機能を新しいエクスペリエンスの統合に役立ちます。
すぐに活用できるローカルAPIで簡単にアプリケーション構築を行えるようになるのです。
これには、スタジオエフェクト、クリエイティブエフェクター、 テレプロンプター、音声フォーカスなどのローコードとの統合も含まれます。
活用できるモデルは40以上であり、その中には、SLMs(小規模言語モデル)の最新モデルが含まれるそうです。
さらに、Copilot Libraryを使用すると、デバイス上のデータを使用してアプリケーション内にRAGを簡単に組み込むこともできます。
これにより、セマンティック検索ができるようになります。
また、Windows Direct MLを通じて、PyTourchと新しいweb Neural Networkフレームワークのネイティブサポートが一般提供されました。
ネイティブPyTourchのサポートにより、何千ものOSSモデルがWindowsですぐに立ち上がり簡単に使い始められるようになります。
さて、Microsoftはプラットフォーム企業であり、インフラストラクチャからデータまでのツールアプリケーションの拡張性までエンドツーエンドスタックを構築することを目標としています。
そこでここからは、膨大なアップデートを下記の「Copilot Stack」に沿って紹介します。(下から行きます。)
AIインストラクチャのアップデート
まずは一番下のインフラストラクチャーからです。さすがプラットフォームベンダー、進化のスピードと規模がすごいです。
Azureはリージョンが60以上あり、クラス最高のAIインフラをどこでも利用できるようにしています。(ちなみに、日本は1番最初に投資されました。)
また、来年までにデータセンタを100%再生可能エネルギーで運用することを目標におき順調に進めているそうです。
Microsoftのインフラストラクチャーは…、
- データセンターからネットワークまで、すべてのレイヤーで電力の効率化を図っている
- データセンタはAIワークロード専用に構築されているため、効率的にエネルギーを使い、AIのコストと消費電力を削減します。
- 最高のアクセラレーションAIハードウエアにより最高のパフォーマンスを実現する
- カスタムIAハードウエアとサーバ設計によりネットワーク、リモートストレージ、ローカルストレージのスループットを高速化する
と、様々進化しています。
また、昨年11月にはトレーニング用のごく小さなAIコンピュータを発表しましたが、この6か月でその30倍のスーパーコンピューター能力をAzureに導入することができました。
世界中にスケールし、使える国を4倍に増やしたのです。
ワークロードごとに最適化したAIアクセラレーターは、下記のパートナー企業とともに提供しています。
例えばGPT-4は、発表以来、12倍安くなり、6倍の速さになりました。
NVIDIAとのパートナシップ
これらは、NVIDIAとの深いパートナーシップからはじまりました。
NVIDIAとのパートナシップにより、Copilot Stack全体にわたり、ハードとソフトの両方のイノベーションを起こしてきました。
実際、最新のH2ハンドレッドをAzureに導入、Blackwell GPUのB1ハンドレッドとCB200格子柄を提供する最初のクラウドプロバイダーとなり、現在は、GPTと5つのSML(小規模言語モデル)をトレーニングしています。
さらに多くのMicrosoftクラウドとの統合が進んでいます。
例えば、DGC CloudがMicrosoft Fabricとも統合されることを発表しました。
つまり、FabricデータへのフルアクセスでDCG Cloudを利用して、開発者が産業用AIソリューションを構築することができるようになるのです。
AMDとのパートナシップ
AMDも例外ではありません。
Microsoftは、ND MI300XアクセラレータをベースとしたVMを一般提供するはじめてのクラウドソリューションプロバイダーとなります。
これにより、GPT-4の性能と最高のコストパフォーマンスが提供されます。もうすで最初のクラスターは稼働し始めているとのこと。
アップデート:Azure Maia
Azure Maiaは、AI向けのアクセラレータでり、AIの学習や推論を高速に実行できるチップです。
CopilotもしくはAzure OpenAI Serviceを使用している場合はすでに一部のプロンプトがMaiaハードウエアを介して行われているそうです。
パブリックプレビュー:Azure Cobalt
半年前、ARMベースのコンピューティングプロセッサであるCobaltを発表しました。
これにより、クラウドネイティブアプリとその開発が改善されます。Teamsなどのサービスに関する数十億の会話をすでに強化しており、すでにMongoDB、Snowflakeなどが利用しているそう。
さらに、最新のベンチマークでは、最大40%強化されたパフォーマンスで提供されると結果が出たそうです。他のどのARMベースのVMよりも優れたパフォーマンスを提供しています。
つづいて、Copilotスタックの「基盤モデル(Foundation Model)」について話を移します。
OpenAIとのパートナシップ
Azure AIでは、最先端のオープンソースモデルを提供しており、必要なモデルを自由に選択することが可能になっています。5万を超える企業が活用中です。
これはすべてOpenAIとのパートナーシップで実現されています。
一般提供:GPT-4o
つい先週、AzureでトレーニングされたマルチモーダルモデルであるGPT4oを発表しました。人間のような会話が可能で、途中で中断しても正しく回答してくれる、高性能なGPTです。
下記のように、さまざまなベンチマークで最高のパフォーマンスがでているとのこと。
ここで、OpenAI社が発表したデモ動画が流れました。
デモの内容:
AIと会話しながら、マインクラフトを進める。
画面上にゾンビが出たら。逃げるか盾を作る旨の指示がCopilotから出される。
それに従いゾンビから逃げ、無事ゲームを続行できた。
マインクラフトについて何も知らない状態であっても、Copilotに質問しながら進められる、
画面やセッションをCopilotのプロンプトとして共有し、Copilotに手伝ってもらうことができる、
そんな画期的な内容でした。
一般提供:GPT-4o on Azure AI
GPT-4oを発表したのと同時に、Azure OpenAI ServiceでもGPT-4oをAPIで使えることが発表されました。これにより、Azure OpenAI Service上で、GPT-4oを使ったモデルトレーニングができるようになります。
このアップデートの最も期待すべきことは、どんなアプリ、webサイトでも基本的に完全マルチモーダルで双方向の会話を行えるキャンバスになることです。
ここでデモが挟まりました。
ハイキングに行きたい男性が、ビデオと音声を用いてCopilotに靴の相談をする。
途中で回答を止めて違う質問をしても、それに対応し最適な提案をしてくれる。
途中で英語からスペイン語になってもそれに対応し、回答する言語を変更してくれる。
デモは公式YouTubeなどで公開されるかと思いますが、まるで、マルチリンガルで優秀な人間のエージェントと話をしているようでかなり驚きました。
新しいMaaS(Models as a Service)
現在すでにたくさんのモデルがAzureAIに導入されており、あらゆる国、言語の幅広いサポートしています。
ここで新しく、さらに多くのモデルをサービスとして提供することを発表しました。これにより、マネージドAIモデルにより簡単に到達することができるようになります。
日本の企業、NTT Dataさんの名前もありますね!
Hugging Face とのパートナーシップ
2年前、はじめてHugging Faceと提携しAzureAIを介して最先端の言語モデルを備えました。そこから、Hugging Faceのより多くのモデルをAzure AI Studioに直接導入できるようになりました。
Microsoftは、LLM(大規模言語モデル)だけでなくSLMs(小規模言語モデル)にも注力しています。
SLMsのPhi-3ファミリーは、さまざまな言語推論、コーディング、性能とパラメータのカウント比がクラス最高峰です。新モデルを追加し、品質コスト曲線全体の柔軟性をさらに高めています。言語と視覚機能を備えた42億パラメーターのマルチモーダルモデルです。
Phi-3を用いると、web、アンドロイド、iOS、Windows、edgeにまたがるアプリケーションを構築できます。利用可能な際はローカルストレージを用いてそうでない場合はクラウドにフォールバックできるそうです。
すでに多くの開発者がこれを活用しており、アミティ・ソリューションズ社からはインドの農家が作物について質問できるCopilot、エピックヘルスケアさやは複雑な患者の履歴を迅速かつ効率的に要約することを実現している、という事例、そしてカーンアカデミーとの新しいパートナシップにより、AIアシスタントである「コミンゴ」をアメリカのすべての教師に無償で提供できることが発表されました。
一般提供:Azure AI Studio
昨年度パブリックプレビューが発表されたAzure AI Studioが一般提供されました。
AIモデルの構築、トレーニング、微調整について、「責任あるAI」を実現するためのエンドツーエンドの開発環境です。
モデル出力のハルシネーションの検出、リスクと安全性の監視、プロンプトインジェクション攻撃の検出とブロックが含まれます。
カスタムカテゴリにより、独自のフィルターをかけることもできるようになりました。
さらに、新たな脅威に対応する必要のある高度なアプリケーションについて、Azure AIカスタムモデルによってドメインに固有のカスタムモデルをトレーニングできるようになります。
ここからは、Copilot Stackの「データ」に話を引き上げましょう。
モデルをトレーニング、微調整、グラウンディングするにはデータを最適な状態にする必要があります。
Microsoftサービスにもさまざまありますが、インテリジェント・データ・プラットフォームの中核をなすのは「Microsoft Fabric」です。
>>関連記事:Microsoft Fabricの概要
AI活用にも欠かせないデータ基盤、その中でも注目されているFabricに、いくつかアップデートがありました。
パブリックプレビュー:Rreal Time Intelligence in Microsoft Fabric
組織全体からのシグナルを最大限に活用してリアルタイムで意思決定やアクションを推進できるようにする新しいワークロード、リアルタイムインテリジェンスがパブリックプレビューになりました。
さらに、Copilot と AI の機能を活用することで、ユーザーは自然言語を使用してリアルタイム データに関する複雑な質問を簡単に行うことができ、「見つけにくいが価値の高い異常」に関するアラートを自動的に受け取ることができるようになります。
パブリックプレビュー:Microsoft Fabric Workload Development Kit
さらに、Fabricの設計、構築、独自のアプリケーションとの相互運用が容易になる機能がパブリックプレビューになりました。
ISVがMarketplace上でOneLakeを基にしたサービスを提供できるためより自社ニーズにマッチしたツールを活用することができます。
AI Search
つづいては、AI Searchです。
現在、RAGがAIを活用したアプリケーションの中核となっています。
AI Searchを利用することであらゆる規模でRAGを実行できるようになります。
非構造化データにも自動的にインデックスが作成されます。
Azure AI Studioにも統合されているため、独自の埋め込みモデルの導入がサポートされるのです。
つづいて、「開発者環境」に移ります。
開発者ツールの企業として創業から約50年がたった今、ソフトウェア開発を再定義しているそうです。
その中で、自然言語でプログラミングをすることができるGitHub Copilotは生成AIの時代の最初のヒットとなりました。
そんなGitHub Copilotについて、さらにいくつかのアナウンスがされています。
プライベートプレビュー:GitHub Copilot Workspace
GitHub Copilot Workspaceは、どんな人でも一瞬でアイディアをコードに移行できる世界に近づける、そんなツールです。
これは、「Issue」を自然言語で作成すると、それを基にCopilotが仕様や、計画、コーディングまで、一貫して実行してくれる、というものです。つまり、Issueを作成後はコーディングすることなく形にすることができるのです。(Copilotの回答を編集することもできます。)
さらに、このCopilotを3rd-Partyが活用することも可能になります。より多くのサービスにおいて、自然言語による開発が実現できることになります。
パブリックプレビュー:GitHub Copilot for Azure
これが使えると、CopilotからAzureのリソースを自然言語で制御できるようになります。
Copilotとのチャットで、使用可能なAzureリソースを確認したり、問題があれば診断してくれたりします。
つづいて、「Copilot」についてです。
アナウンス:Microsoft Copilot connectors
Copilotを、ビジネスプロセスやワークロードに合わせてカスタマイズできるようになります。
PowerPlatform、Fabric、DataverseなどMicrosoftサービスはもちろん、Adobe、Atlassian、ServiceNow、SnowflakeなどのSaaSアプリケーション用の3rd-Partyコネクタが使用できるようになりました。組織独自の知識とデータを素早く取り込むことができます。
アナウンス:Team Copilot
Teamsがプラットフォームになる、と昨年言っていたものが、ついに発表されました。(チーム”ズ” コパイロットではなく、チームコパイロット、なんですね)
Teamsで共同作業行う場所ならどこでも、議題の作成、議事メモの作成、重要アクションの通知などを行えます。
しかも、Copilot Studioを活用すると、エージェント機能を備えたものに進化します。
何をしてほしいかをインプットするか、事前に作成したテンプレートを選択すると、バックグラウンドで動いてくれるのです。人は必要な作業に集中するだけで、周辺の課題が片付きます。
より、能動的な支援を受けられることになります。
最後に、重要なセキュリティについてです。
詳細はDay2のキーノートで語られるそうですが、Microsoftは、すべてのスタックを安全に使える様尽力している点を強調していました。
以上です!
開発者が、より多くの人・企業に対してエンパワーできるよう、より効率的に、安全に開発できるような機能が盛りだくさんでした。
この記事を書いた人
- 鈴木梨玖
-
マーケティング担当の鈴木です。
VDIやDataAI製品を中心に、セミナー、ブログ、メルマガなどで情報を発信しています!
よろしくお願いいたします_(._.)_
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