1. はじめに

2025年6月、世界中のデータおよびAIの専門家が一堂に会する「Databricks Data + AI Summit」がサンフランシスコで開催されました。この年次イベントは、最新のテクノロジー、業界動向、そして今後のビジョンを共有する場として注目を集めており、企業のデータ活用や生成AI戦略を考えるうえで欠かせないカンファレンスとなっています。

2日目の基調講演では、Databricksが目指す「オープンでインテリジェントなデータ基盤」への進化を象徴する数々の発表が行われました。データエンジニアやデータサイエンティスト、AI開発者にとって実用的かつインパクトのある新機能が紹介され、今後の業務やプロジェクトに直接関わってくる内容が満載です。

本記事では、その中でも特に注目されたアップデートを厳選し、分かりやすくまとめました。Databricksの最新動向を押さえたい方、生成AIやアプリ開発のトレンドを知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

2. Databricks Free Edition: 永久無料の学習環境

Databricksは、誰でも利用できる無料の永続版「Free Edition」を正式発表しました。

  • データとAIの主要機能に無料でアクセス可能。

  • 学習や実験、スキル習得に最適。

  • トレーニングと教育分野に1億ドルの投資を約束。

3. Lakebase: AIに最適化された新しいデータベース

Lakebaseは、オープンソース(PostgreSQLベース)を基盤とした新しいデータベースサービスで、Databricksがホスティングとセキュリティを提供します。

  • ストレージとコンピュートの分離により、高速な処理性能と優れたスケーラビリティを実現しています。

  • サーバーレスに対応しており、起動時間は1秒未満で、使用した分だけ課金されるモデルです。

  • Gitのようなブランチ機能や、コピーオンライトクローンも追加コストなしで利用できます。

  • Lakehouseとの完全なデータ同期をサポートしており、常に最新の状態でデータを扱うことが可能です。

Lakebase上では、アプリケーションの開発からデータの提供、さらに高度なデータ分析に至るまで、すべてのプロセスを一貫して行うことが可能です。
これにより、データの取得・管理・活用までを効率的かつ統合的に進めることができます。

4. Databricks App: オールインワンのアプリ開発プラットフォーム

Databricks上でネイティブにアプリケーションを構築できる新機能「Databricks App」が発表されました。

Databricks Appの特徴:

  • LakebaseやLakehouseとの統合がワンクリックで簡単に実現できます。
  • 認証やシングルサインオン(SSO)、ログ管理など、エンタープライズ向けの基本機能が標準で備わっています。
  • アプリはDatabricksが管理する安全なコンテナおよびインフラ上で実行されるため、セキュリティや運用面でも安心です。
  • 開発にはPythonの主要なフレームワークに加え、Node.jsやReactなどの人気テクノロジーにも対応しています。
  • 利用可能な20以上のオープンソースパッケージが事前にインストールされており、迅速なアプリ開発をサポートします。

5. Agent Bricks: AIエージェントの監視と最適化

Databricksは新たに「Agent Bricks」を発表しました。Agent Bricksは、マルチAIエージェントの性能とコストの最適化を支援する最新ソリューションです。

  • LLM Judgesによってエージェントの出力品質を評価し、人のフィードバックを活用した自動的な最適化を実現します。
  • コストと品質のバランスを可視化して最適な提案を行います。
  • CEOレベルの複雑な質問にも対応できるように、財務、研究開発(R&D)、マーケティングなど複数のデータソースかエージェントが連携して回答することができます。
  • Genie SpaceやMCP Serverなどの他のソースとも連携が可能です。

6.その他にも多くのアップデートが発表されました。

  • MLflow 3.0 の正式リリース

  • GPU が Serverless Compute に対応
  • MCP(Model Customization Platform)がDatabricks上で利用可能に
  • SQLのAI機能: スケールワークロードで競合他社より3.2倍速い。
  • ベクトル検索: 数十億のベクトルにスケールし、最大7.5倍の低コスト。
  • SQLのドキュメントインテリジェンス: 新機能 ai_parse_document が導入されました。
  • オンラインフィーチャーストア: フィーチャールックアップのレイテンシーが10ms未満。
  • モデルサービング: 高いQPS(Queries Per Second)で250K+ QPS。
  • LLMサービング: サービングが最大1.5倍速い。
  • モデルカタログプラットフォーム(MCP): DatabricksがホストするMCPサーバーが /api/2./ml/mcp-catalog/functions で利用可能。
  • AIゲートウェイ: 一般提供(GA)。
  • データ品質モニタリング: Unity Catalogのテーブルをモニタリングでき、現在ベータ版。
  • AIワークロード用のコンピュート最適化GPU: A100 & H100 GPUがAIワークロードに対応。

7. まとめ

Databricksは、LakebaseやAgent Bricksなどの新機能でAIとデータ活用を大きく前進させました。生成AI、アプリ開発、分析がより統合され、今後の業務に直結する進化が示されました。

今回の記事が少しでもDatabricksを知るきっかけや、業務のご参考になれば幸いです。

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