1. はじめに

皆さん、こんにちは。

サンフランシスコで開催中の Data + AI Summit 2025、いよいよ初日を迎えました。Day2のキーノート前には、Databricksおよびそのパートナー企業による数多くのセッションが行われ、最新技術や実践事例が紹介されました。

中でも注目を集めたのは、Microsoftとの緊密な連携をはじめ、AIエージェント、MLflowの進化、合成データに関する革新的なアップデートです。

以下では、初日の主なハイライトをご紹介します。

2. Microsoft エコシステムとの統合をさらに強化

今回のサミット初日で特に印象的だったのは、Databricks が Microsoft のエコシステムとの統合をさらに深めたという発表です。Power Platform、Copilot、Power BI、Azure Data Factory といった既存ツールを最大限に活用し、AI エージェントの構築、データ分析、AI ワークフローの実装をより円滑にすることが目的です。

主なアップデート内容:

  • Power Platform とのネイティブ統合
    Databricks は、Power Apps や Power Automate とネイティブに接続できるようになり、アプリケーションや自動化プロセスの構築がこれまで以上に簡単になりました。

  • Copilot Studio での Databricks 活用
    Azure Databricks が Copilot Studio のナレッジソースとして利用可能となり、AI エージェントが Databricks のデータをもとにクエリ、推論、応答が行えるようになります。

  • LakeFlow における Power BI タスクの統合
    Power BI の可視化ステップを直接 LakeFlow のパイプラインに組み込むことができ、データ変更時のみ Power BI を更新することで、常に新鮮で効率的なダッシュボードを提供します。

  • Azure Data Factory によるオーケストレーション
    ADF(Azure Data Factory)から Databricks のノートブックやワークフローを直接呼び出せるようになり、エンドツーエンドのデータ統合と自動化がより簡単になります。

  • AI Foundry との接続
    AI Foundry コネクタを通じて、Databricks のデータと連携し、タスクの実行や LLM(大規模言語モデル)の活用が可能なカスタム AI エージェントを構築できます。

  • Microsoft Teams Bot Framework のサポート
    Bot Framework 上で構築されたボットが、Databricks の Genie Space と直接対話できるようになり、Microsoft Teams 上での AI インタラクションがよりスムーズになります。

3. AIエージェントが「迷走」するとき…その対処法

Data + AI Summit 2025で特に注目を集めたブレイクアウトセッションのひとつが、「When Agents Go Rogue – and How to Fix Them(エージェントが迷走するとき、そしてその修正方法)」です。このセッションでは、ますます複雑化するGenAIシステムにおいて、AIエージェントの監視、評価、最適化の方法について深い知見が共有されました。

同時に、MLflow 3.0の多くの注目機能も紹介され、エージェントの挙動をより正確に理解し、実運用における信頼性や制御性を大きく向上させるためのツールが提供されました。

注目ポイント:

  • 従来型ソフトウェア開発との比較:

    • Telemetry → Tracing(テレメトリ → トレーシング)

    • Unit Test → Evaluation(ユニットテスト → 評価)

    • YOLO → Vibe Checks(やってみよう → 雰囲気チェック )

  • MLflow 3.0 の新機能:GenAIアプリの構築と評価に特化

    • MLflow Tracing:エージェントの挙動をステップごとに記録し、ソフトウェアのログトレースのようにデバッグや分析が可能。

    • Agent Evaluation:エージェントのパフォーマンスを定量的に評価できる仕組み。

    • Predict Function:パイプラインに統合された予測機能。

    • Built-in Judges:エージェントの応答を自動で比較・評価する採点ツール群。

  • 業務専門家(SME)の重要性:
    現場の文脈や実践的な評価基準を理解している**領域専門家(Subject Matter Expert)**の関与は、エージェントの訓練や行動修正において不可欠です。

4. Databricks Apps:データとAIをより身近なアプリケーションへ

Databricksは、新たなアプリケーションプラットフォーム「Databricks Apps」を発表しました。

Databricks Appsは、サーバーレス環境でアプリケーションをホストでき、Databricksの利点(データガバナンス、AI・データ基盤)をそのまま活用できるのが特徴です。

このプラットフォームは、スキルレベルを問わず、誰でもAIアプリケーションを簡単に構築できるよう設計されています。

  • シンプルな業務から高度な分析タスクまで、Databricks Appsはナレッジ・実践知・AIツールをシームレスに統合。

  • 冗長なテンプレートコードは不要。アクセス制御やセキュリティ、直感的なUIがあらかじめ組み込まれた状態で提供されます。

  • これまで開発者に限られていた複雑な課題にも対応でき、より多くのユーザーがAIの恩恵を受けられるようになります。

参考リンク: Databricks Apps | Databricks

5. Nikon:需要予測のPoCから本番運用へ

Nikonは、MLflowと基本的な機械学習アルゴリズムを活用し、需要予測モデルを構築・運用するソリューションを紹介しました。

注目すべきポイント:

  • モデルのライフサイクル管理が容易に。

  • 各モデルのパフォーマンスを可視化し、最適なモデルを選定。

  • PoC(概念実証)から本番システムへのスムーズな移行が可能。

6. まとめ

Data + AI Summit 2025の初日は、「未来のAI」はオープンプラットフォーム、深い統合、高品質なデータ、そして誰にとっても使いやすい開発ツールの融合であるという強いメッセージを発信しました。

Microsoft、NVIDIA、MLflow、そしてSynthetic Personasなどの取り組みは、AIがよりスマートになるだけでなく、アクセスしやすく、信頼でき、実用的なものへと進化していることを示しています。

今回の記事が少しでもDatabricksを知るきっかけや、業務のご参考になれば幸いです。

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ファン コック トゥアン