事例で解説!Azure移行を成功させるベストプラクティスとは?

IT基盤のクラウド化が一般する中で、クラウド環境への移行を進める企業が増えています。
クラウド移行を成功させるためには、成功事例を踏まえたベストプラクティスを参考にすることがポイントです。
この記事では、ファイルサーバーのAzure移行の成功事例をもとに、導入手順や気を付けるべきポイントを解説します。

目次

1.今回ご紹介する導入事例の概要

今回は、従業員数約5,000人、国内約40拠点のある製造業様にて、ファイルサーバーをAzureへ移行した事例についてご紹介します。

企業が抱えていた課題

この企業では、オンプレミス環境にてファイルサーバーを運用する中で、以下の課題を抱えていました。

  • 運用管理コスト軽減:全40拠点に存在するファイルサーバーを統合し、運用コストを削減したい
  • 保守・運用からの解放:ハードウェアのリプレース対応や運用業務を削減したい
  • BCP/DR対策:有事の際でも事業継続を行えるようにBCP/DR対策を実施したい

本企業ではこれらの課題の解決策としてファイルサーバーのクラウド移行を検討することになり、Azure Filesの導入を行いました。

実施スケジュール

Azure移行実施スケジュール

移行の検討においては、「設計」「構築」「運用」の3つのフェーズに分け、それぞれ設計フェーズを約7週間、構築フェーズを約6週間、運用フェーズを約3週間の合計4か月で数拠点のテスト導入までを完了しております。
その後、各拠点への移行を継続して実施し、最終的に運用負荷の30%削減を達成しました。
それでは、各フェーズではどのような手順で作業を進めたのでしょうか。以下で紹介します。

2.基本設計フェーズ

Azure移行基本設計フェーズ

目的・ゴール設計

目的・ゴール設計では明確なゴール設定を実施します。本事例では、運用負荷30%削減およびBCP対策の実現をゴールとして設定しました。

システム要件定義

システム要件定義では、既存環境の調査やヒアリングなどを通した要件整理を実施し、ゴールを達成するために必要となるシステム要件をまとめます。

コスト試算

次に、整理した要件に基づき、どの程度コストがかかるかを試算します。特に、クラウドのコストを算出する際には、トータルコストで比較することがポイントとなります。単にオンプレのハードウェア費用とクラウド費用を比較するのではなく、バージョンアップ費用や障害対応費用等も含めて整理することが大切です。

また、特にAzureにおいてはコストを下げるための様々な方法があります。具体的には、下表の通りです。これらを活用することで、重量課金制の料金と比較して最大85%のコスト節約を行うことも可能です。またAWSと比較して1/5のコストで移行が可能となります。

Azureハイブリット特典(AHUB) オンプレミスのWindows ServerやSQL Serverのライセンス保有者向けに、割引を行うサービス。
拡張セキュリティ更新プログラム(ESU) サポート切れの製品について、無償で3年間のセキュリティ更新プログラムが提供されるもの。
予約によるコスト削減(RI) 継続利用するインスタンスを予約し、利用をコミットすることで割引を行うもの。

 

全体構成

さらに、将来の運用を見据え、リスクを認識したうえで構成を検討する必要があります。本事例では、将来的にIT基盤全般のAzure移行を検討していたため、AzureでのIT基盤運用を見据えた構成としました。

また、全体構成を設計する際には、将来に起こりうるリスクを見据えたものとする必要があります。例えば、リスクとして以下のような観点が考えられます。

  • 請求単位を意識しない構成による想定外の手間
  • ブラックボックス化によるトラブル対応の長期化
  • ログ保管の設定ミスによるセキュリティ問題

これらのリスクを考慮したうえで、全体構成の設計を進めるべきでしょう。

3.詳細設計フェーズ

Azure移行詳細設計フェーズ

詳細設計フェーズでは様々な観点で設計を実施しますが、今回の事例においては特に以下の3つの観点がポイントとなりました。

ネットワーク設計

Azureの移行にあたっては、これまで運用していたオンプレミスのネットワークを、クラウド利用を想定したものに増強する必要があります。設計の段階で、どのような用途でどの程度の通信量が発生するか、予め見積もっておく必要があります。

セキュリティ設計

セキュリティ設計のポイントはアカウント管理とアクセス制御です。本事例では、クラウド側でも現行オンプレミスADのルールを適用する方針とし、Azure上のアカウント管理とアクセス制御を実施しました。本事例では、オンプレミスADとAzure ADを同期させることでアカウント管理とアクセス制御を実現しました。

監視設計

本事例のお客様では詳細な監視要件が求められました。そこで、Azure monitorを導入してメトリックやログを監視し、閾値を超えた際にメールでアラートを上げられるように設計しました。

監視設計では、システム全体の構成や、アプリケーションの動作、可用性・バースト対策を考慮することがポイントです。

これらの詳細設計を実施するためには、Azureの専門知識が必要となります。

4.構築フェーズ

構築フェーズでは、実際にAzure及びオンプレミスの構築を実施していきます。本事例の場合、以下の手順で構築を進めました。

  • STEP1 テスト移行
  • STEP2 マニュアル作成・スキルトランスファー
  • STEP3 オンプレミスとの接続設定
  • STEP4 自社リソースで本移行開始
  • STEP5 オフショアにて拠点ごとに随時本移行
  • STEP6 構築完了

本事例では、各拠点への本移行については拠点ごとのタイミングに合わせてお客様自身で段階的に実施しました。
また、本事例のように既存ADと連携するなどオンプレミスとの接続がある場合は、既存環境の理解も必要となります。

5.運用フェーズ

Azure移行運用フェーズ

運用作業には自分たちで対応できるものと、専門家を活用すべきものがあります。例えば、社内のユーザーサポートなどは比較的自分たちで対応しやすいですが、クラウド環境のモニタリングやサービスの機能進化に合わせた機能改善などは専門家の支援を活用したほうがよいといえます。自社のリソースなども加味して、どのような作業を自分たちで実施し、何を専門家に外部委託するかの整理する必要があります。
本事例では、本来業務への集中を重視し、専門家を有効活用する選択肢を取りました。

6.Azure移行フレームワーク「CAF」とは

Azure移行フレームワークCAF

ここまで紹介してきた導入手順については、Microsoftが提供するAzure移行におけるフレームワークである「CAF(Cloud Adoption Framework)」に沿ったものです。
CAFでは、戦略の定義、計画、準備・検証、導入・移行、ガバナンス、管理などの段階ごとのベストプラクティスを提供します。
クラウド導入が失敗に終わる理由の一つに、このCAFに準拠しないで導入を実施してしまうことが挙げられます。
CAFに準拠することで、典型的な失敗を避けることができるでしょう。クラウド移行を成功させるためにはCAFの活用が有効といえます。

まとめ

この記事では、ファイルサーバーのAzure移行の成功事例をもとに、導入手順や気を付けるべきポイントについてご紹介しました。
本事例では、ファイルサーバーのAzure移行により、以下の効果を得ることができました。

実施内容 効果
各拠点に点在するファイルサーバーの統合 ハウジング環境からの解放
ハードウェア運用保守からの解放・運用委託 管理負荷30%軽減
Azure Filesの冗長構成機能を活用 手間・コストをかけることなくBCP・DR対策を実現
将来の運用を見据えた構成の採用 Azure環境の促進と安定稼働を実現
本移行を自社で実施 移行の効率化とコスト削減を実現

本記事で紹介したように、Azureへの移行においては専門的な知識も必要となります。自社の技術力や知見に不安がある場合は、外部ベンダーへの協力も依頼しながら進めることがポイントとなります。

 

本内容は、2022年3月4日に開催いたしました、「ファイルサーバーからはじめるAzure移行セミナー」にて詳しく解説しております。
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この記事を書いた人

Azure導入支援デスク 編集部
Azure導入支援デスク 編集部
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