Power BI環境ならFabricが有力な理由

本記事のポイント

    1. Power BIをFabricのデータ処理と一体で運用できる
    2. OneLake、ショートカット、ミラーリングにより、データをOneLakeに移すか、外部に残したまま接続するかを選べる
    3. 全面移行ではなく、1つの業務を対象にデータ、権限、レポート、運用を検証してから範囲を広げる

Power BIやMicrosoft 365への既存投資を生かし、データ基盤を一体で運用したい企業では、Microsoft Fabricが特に有力な選択肢です。Power BIを含む分析業務、データの取り込み・加工、DWH、リアルタイム処理を、OneLakeを中心に連携できるためです。Fabricを選ぶ際は、機能だけでなく、容量や権限、移行する範囲・手順、移行後のAI活用まで確認します。

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1. Microsoft環境でFabricが候補になる3つの理由


理由1 Power BIとデータ基盤を分断せずに運用できる

Microsoft Fabricには、Power BIに加えて、Data Factory、Data Engineering、Data Warehouseなどのワークロードが含まれています。データの取り込み・加工からSQL分析、可視化までを、同じSaaS環境で利用できます。

従来は、データ基盤側で加工したデータをPower BIへ受け渡し、障害時には基盤とレポートのどちらに原因があるかを別々に確認することがありました。Fabricでは、取り込みからレポートまでを共通のワークスペースで管理できます。そのため、処理の流れや担当者の役割を整理しやすくなります。

Power BI PremiumのP SKUからFabricのF SKUへ移行する場合も、既存のPower BIコンテンツを継続して利用できるケースがあります。ただし、容量の変更と、Azure Data FactoryやSynapse Analyticsの処理を移行する作業では、必要な対応が異なります。

理由2 OneLakeを共通のデータ基盤として使い、3層で権限を設計できる

OneLakeは、Fabricテナントに提供される組織全体の論理的なデータレイクです。Fabricの各ワークロードから、OneLake上のデータを共通利用できます。用途ごとのデータコピーを減らすことで、更新のずれ、保存費用、権限設定の重複を抑えられます。

OneLake上の表形式データにはDelta ParquetまたはIcebergが使われ、複数の分析エンジンから同じデータを利用できます。OneLakeには、表形式以外のファイルや、外部データを指すショートカットも配置できます。そのため、保存形式はデータによって異なります。OneLakeを採用しても、データ品質の基準と権限は別に定める必要があります。

Fabricの権限は、ワークスペース、アイテム、OneLake上のデータという3層で設計します。ワークスペースのAdmin、Member、Contributorには、広範囲の読み取り・書き込み権限が付与されます。そのため、OneLakeの行・列・テーブル単位の設定だけで制限できない場合があります。業務ユーザーには必要なアイテムとデータへのアクセス権だけを付与し、管理者・開発者のワークスペースロールとは分けて設計します。

理由3 外部データを残したまま接続する選択肢がある

データをFabricへ集約せず、外部に残したまま利用する方法もあります。

  • ショートカット: 別のワークスペースのOneLake、Azure Data Lake Storage、Amazon S3などに保存されたデータを、複製せずにOneLakeから参照する
  • ミラーリング: Azure SQL DatabaseやSnowflakeなど、対応するデータベースのデータをOneLakeへ継続的に複製し、分析に利用する
  • Data Factory: コネクタやパイプラインを使い、必要なデータを取り込み・変換する

既存システムをすぐに停止できない企業でも、接続方法を使い分ければ段階的に移行できます。利用できる機能、更新間隔、ネットワーク要件、転送費用は、接続先ごとに異なります。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

現在のPower BIレポートを1つ選び、データの参照元まで処理の流れをたどってください。データの取得、加工、保存、更新、権限設定に使うサービスと担当者を書き出します。データの流れと管理項目をどこまで減らせるかは、運用負担を測る指標の1つです。これらに、性能、費用、障害からの復旧時間も検証してください。

 

2. Fabricを選ぶ根拠になる主な機能


Fabricを評価するときは、現在の課題をどの機能で解決できるか、その機能を使うために何が必要かを確認します。

現在の課題 Fabricで確認する機能 導入時の確認事項
データが複数の分析基盤に重複している OneLake、ショートカット、ミラーリング 基準とするデータ(正本)の置き場所、同期の遅延、外部データの権限
取り込み、加工、DWH、BIが別々に運用されている Data Factory、Data Engineering、Data Warehouse、Power BI 既存処理の移行可否、監視、障害時の責任分界
IoTやログを受けてすぐに判断したい Real-Time Intelligence、Fabric Activator 許容できる遅延、イベント数やデータ量、通知後の業務手順
データを探す時間が長く、来歴を追えない OneLakeカタログ、Microsoft Purviewとの連携 メタデータの登録責任、公開範囲、感度ラベル
権限設定がサービスごとに分散している ワークスペース・アイテム権限、OneLakeセキュリティ 管理者・開発者に付与される広範囲の権限と、閲覧者向けの行・列・テーブル制御
SQL、Python、Power BIの担当者が別々に作業している Lakehouse、Warehouse、Notebook、セマンティックモデル 共通データモデル、開発環境と本番環境の分離、変更手順

Real-Time Intelligenceは、継続的に発生するイベントやログの取り込み、分析、可視化に使います。Fabric Activatorでは、データの変化を条件として通知やPower Automateなどのアクションを起動できます。監視の担当者が画面を見て気づく運用から、条件を満たした時点で自動的に知らせる運用へ変えられます。

OneLakeカタログでは、Fabric内のデータ資産を検索し、詳細や来歴(データリネージ)を確認できます。データを登録しただけで利用者が正しく判断できるとは限らないため、説明、所有者、更新頻度、品質の情報を誰が管理するかも決めます。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

機能ごとに、置き換え対象となる既存作業を記録してください。たとえばActivatorを採用するなら、現在の監視、確認、連絡のどこを自動化し、通知を受けた人が何をするかまで決めます。置き換える作業がない機能は、初期導入の対象から外せます。

 

3. 全面移行ではなく、1業務から段階的に進める


Fabricへ移行する対象によって、必要な作業は異なります。Power BI PremiumのP SKUからF SKUへの変更は、主に容量の準備とワークスペースの再割り当てです。標準的なPower BI項目は継続して利用できます。一方、Azure Data FactoryやSynapse AnalyticsなどをFabricへ移行する場合は、パイプライン、テーブル、ノートブックなどを業務単位で移植し、既存環境と同じ結果になるか確認します。

ステップ1 対象業務と成功条件を決める

最初の移行対象には、データの参照元、加工処理、レポート、利用部門を把握できる業務が適しています。成功条件には、処理時間や費用だけでなく、権限変更にかかる時間、障害を検知する方法、問い合わせ先も必要です。

ステップ2 データの接続方法を決める

接続方法には、OneLakeへの移行、ショートカットによる参照、ミラーリングがあります。基準とするデータをどこへ置くか、どれだけの遅延を許容できるか、削除をどう反映するか、障害のあとにどう再同期するかを、接続方法ごとに比べて決めます。

ステップ3 同じ結果を再現する

既存のレポートとFabric側のレポートは、指標、集計期間、更新時刻を同じ条件にします。数値に差がある場合、原因の候補は元データ、加工ロジック、セマンティックモデルです。

ステップ4 権限と運用を試す

権限試験には、閲覧者の追加・削除と、担当者の異動を想定した権限変更を含めます。障害試験では、処理の失敗やデータ遅延が起きた状況をつくり、誰がどの画面で検知し、どう復旧するかまで確認してください。

ステップ5 拡大または見送りを判断する

ステップ1で決めた成功条件と検証結果を照らし合わせます。条件を満たした場合は隣接する業務へ広げ、満たさない場合は構成を見直すか、既存サービスを残すかを決めます。

 

Fabricへの段階移行

💡STech I ワンポイントアドバイス

検証用のレポートは、閲覧数の多さだけでなく、データの取得元と計算式を説明できるものを選んでください。結果が違ったときに原因を追えないレポートでは、Fabricの問題か既存処理の問題かを切り分けられません。

 

 

4. データ基盤をAI活用につなげる3つのシナリオ


Fabricでデータを管理すると、AIが参照するデータを用意しやすくなります。AIを業務で使う前に、AIの参照を認めるデータと利用方法を決めてください。AIの出力を確認する担当者も必要です。

シナリオ1 データ準備や分析作業をCopilotで支援する

FabricのCopilotは、対応するワークロードで、自然言語によるコードやクエリの生成、データ変換、レポート作成を支援します。ただし、生成結果は利用者が確認する必要があります。

Copilotの利用には、F2以上の有料Fabric容量またはP1以上のPower BI Premium容量、管理者設定、対応リージョンなどの条件があります。トライアル容量では利用できません。条件は変更されることがあるため、検証前にはテナントと容量について公式情報による確認が必要です。

シナリオ2 最新データに基づいて異常を検知し、行動につなげる

Real-Time Intelligenceは、設備、アプリケーション、業務イベントから継続的に届くデータを扱えます。Fabric Activatorには、条件を検知すると通知や処理を起動する機能があります。たとえば、在庫の急減、設備値の異常、応答時間の悪化を担当者へ知らせる流れです。

AIや自動判定を使う場合は、誤検知が起きたときの対応、通知先、対応期限も決めます。データをリアルタイムに処理できても、通知を受けた担当者が対応できなければ業務では使えません。

Real-Time Intelligenceで取り込んだデータをOneLakeなどへ反映し、生成AIが検索するデータも更新すれば、参照データの鮮度を保てます。最新情報を必要とする業務では、許容できるデータの遅れを要件として定めます。データの取り込みから、生成AIの検索結果に反映されるまでの時間を検証してください。

シナリオ3 OneLakeのデータを生成AIアプリケーションへ供給する

OneLakeのファイルをMicrosoft Foundryのナレッジソースとして利用する構成があります。連携には、FabricのLakehouseに加えて、同一テナントのAzure AI Searchなどが必要です。データがFabricのコンプライアンス境界や地理的リージョンの外で処理・保存される場合もあります。製品仕様、社内規程、顧客対応履歴などを使う場合は、検索対象とアクセス権を定め、更新頻度とデータの処理場所を確認します。回答内で参照元をどう示すかも決めてください。

Microsoft製品間で連携すると、接続方法と管理方法をそろえやすくなりますが、回答の正確性が保証されるわけではありません。利用者が参照元を確認できる設計と、評価用の質問・正解例が必要です。

 

💡STech I ワンポイントアドバイス

AIの検証では、業務で想定する質問を先に作り、期待する回答と参照すべきデータを記録してください。回答できるかだけでなく、権限のないデータを表示しないか、古い情報を参照しないか、回答の根拠を確認できるかも評価します。

 

5. Fabricが向く条件、慎重に検討する条件


状況 Fabricが候補になる理由 慎重に確認すること
複数部門でPower BIを使い、共通のワークスペースや容量を管理している 可視化とデータ基盤を同じFabric環境で設計できる 容量、閲覧者・作成者のライセンス、既存ワークスペース
Microsoft 365とEntra IDの運用が定着している 既存の認証・管理体制との接続を検討しやすい Fabric固有のワークスペースとアイテム権限
取り込みからBIまでの管理が分散している 複数のFabricワークロードとOneLakeで構成をまとめられる 既存サービスから移す範囲と残す範囲
リアルタイムデータを業務対応につなげたい Real-Time IntelligenceとActivatorを利用できる 遅延、イベント量、誤検知時の運用
複数クラウドや外部DBにデータがある ショートカット、ミラーリング、Data Factoryで接続できる 接続先ごとの対応状況、転送費用、データ所在

Power BIが主要なBIツールではない企業は、Fabric以外の製品も同じ条件で比較します。特定クラウドに依存しない構成を最優先する場合や、既存のデータ処理をコード中心で細かく制御している場合も同様です。Microsoft製品を使っているだけで、Fabricの採用を決めることはできません。

 

6. よくある質問


Q. Power BIを使っていれば、Fabricへ移行しなければなりませんか。
Power BIの利用だけを理由に、データ基盤全体をFabricへ移行する必要はありません。既存ライセンス、容量、データ接続、今後必要な分析・AIの要件を確認し、Fabricへ移行する範囲を決めます。

Q. 既存のAzure Data FactoryやSynapse Analyticsは廃止しますか。
一律に廃止する必要はありません。業務単位でFabricへ移行し、既存環境と処理結果、費用、運用方法を比較します。移行効果がない処理や、Fabricで要件を満たさない処理は、既存環境に残すことも選択肢です。

Q. Fabricを導入すれば、すぐに生成AIを使えますか。
Fabricはデータを準備・管理する基盤とAI支援機能を提供します。業務で生成AIを使うには、対象データのアクセス権と品質基準、利用するモデル、出力を評価・監視する方法をあらかじめ決める必要があります。Copilotの利用にも、容量や管理者設定などの利用条件があります。

 

7. まとめ


Microsoft環境を持つ企業でFabricが有力候補になる理由は、Power BIを含むデータ活用の各工程をOneLake上でつなげられることです。ショートカット、ミラーリング、Data Factoryを使い分ければ、既存データをすべて一度に移行しなくても、段階的に構成を変えられます。

選定時には、機能の数だけでなく、現在複数のサービスに分かれている作業をFabricへどこまで集約するかを検討します。その際、データの正本、権限、運用責任も明確にします。まず1つの業務で既存の結果を再現し、権限変更と障害対応まで試したうえで、対象を広げてください。AI活用は、所有者と品質基準が決まっているデータを使う業務から始めます。

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8. 出典


詳細は以下の公式ページよりご確認ください。

この記事を書いた人

伊丹 優花
インフラ、Data&AIのマーケティング担当