目次
はじめに
ここ数年、クラウドサービスの普及が進んだことで、企業システムの多くがAzureや AWSなどのパブリッククラウド基盤に依存するようになりました。一方で、ニュースで度々話題になるように、クラウド側で障害が発生し、業務システムが一時的に利用できなくなるケースも増えています。障害以外でもサービスの不具合やデータセンター設備の故障、自然災害など、さまざまな要因でクラウド上のサービスが停止する可能性があり、それに伴い、企業はサービス提供や社内業務に大きな影響を受けてしまいます。
こうした背景から、高い可用性や災害対策は業務を継続する上で重要なテーマになってきます。ビジネスの継続性を守るためには、パブリッククラウドでも自分たちの要件に合う冗長性を設計することが必要になってきています。
Azure NetApp Files(ANF)は、Azure上で高性能なファイルストレージを提供するサービスで、上述した課題に対応するために複数の冗長化機能を備えています。ここでは、ANFの冗長性をより理解しやすくするために、まずAzureにおける「ゾーン」と「リージョン」の違いから整理しながら解説していきます。
ゾーンとリージョンとは?
リージョンとは?
リージョンは、Azureが世界各地に展開している地理的に分散されたデータセンター群を指します。
それぞれのリージョンは、1つ以上のデータセンターによって構成され、米国・ヨーロッパ・アジアなど、さまざまなエリアに配置されています。
現在、Azureでは70を超えるリージョンがグローバルに提供されており、その中でも日本には「東日本リージョン」と「西日本リージョン」の2つが存在します。
リージョンは、後述する複数の可用性ゾーンを内包する形で構成されており、「複数ゾーンをまとめた大きな地理的単位」として理解するとイメージしやすいです。
ゾーンとは?
前述したリージョン内には、物理的に分離された複数のデータセンターが用意されており、これらがゾーン(可用性ゾーン)と呼ばれています。一般的に3つ以上のゾーンが存在し、ゾーン 1・ゾーン 2・ゾーン 3 のように論理的に区分されています。
ただ、可用性ゾーンがサポートされていないリージョンもありますので、以下の公式ドキュメントをご参照ください。
(参考)Azure リージョンの一覧 | Microsoft Learn
各ゾーンは電源・ネットワーク・冷却設備などが独立しているため、データセンター単位の障害が発生した場合でも、他のゾーンに影響が及びにくい構造になっています。これにより、ゾーン障害に耐えうる高い冗長性を実現できます。
Azure NetApp Files における冗長性の種類
前述したゾーン、リージョンを踏まえて、ANFで提供されている3種類の冗長構成について説明します。Azure NetApp Filesでは、次の冗長構成がサポートされています。
- クロスゾーンレプリケーション
- クロスリージョンレプリケーション
- クロスゾーン・リージョンレプリケーション
① クロスゾーンレプリケーション
同一リージョン内の別ゾーンへデータを複製する方式です。

特徴
- ゾーン障害が発生した場合でも、短時間で復旧が可能
- ネットワーク転送料金が発生しない
- データの同期間隔は10分から設定可能
- ANFが利用可能なAZ対応リージョンで利用可能
クロスゾーンレプリケーションが適しているケース
- データセンター規模の障害に備えたい
- リージョン全体の停止までは想定しないアプリケーションやサーバ
② クロスリージョンレプリケーション
異なるリージョンにデータを複製する方式です。
特徴
- リージョン規模の障害(災害・大規模停電など)に備えられる
- ゾーンレプリケーションとは異なり、データ転送コストは別途かかる
クロスリージョンレプリケーションが適しているケース
- リージョン規模の障害に備えたい
- BCP対策として遠隔地にバックアップを持ちたい
③ クロスゾーン・リージョンレプリケーション
1つのソースボリュームに対して、「ゾーン間」と「リージョン間」両方へのレプリケーションを設定できる構成です。この機能は2025年12月から一般提供が開始された機能になっています。
ソースボリュームと2つのレプリケーションボリュームを組み合わせ、下記3パターンから冗長構成を選択することが可能です。
- ゾーン + リージョン

- リージョン + リージョン

- ゾーン + ゾーン

特徴
- ゾーン障害とリージョン障害の両方に備えられる
- 1つのソースボリュームから、2つの異なる保護用ボリュームを作成可能
- 要件に応じた柔軟な冗長構成をとることが可能
クロスゾーン・リージョンレプリケーションが適しているケース
- ゾーン障害・リージョン障害の両方に備えたい
- 重要度の高いシステムで多段階の保護を求める
- DR先を2箇所用意したい(例:同リージョン内の待機環境+遠隔地DR)
ANFの冗長構成をとる際の注意点
これまでANFの冗長構成について説明してきましたが、実際に冗長構成をとる場合に考慮しないといけない点についていくつかご紹介します。
- レプリケーションは「非同期方式」
ANFのクロスゾーン/クロスリージョンレプリケーションは非同期方式のため、RPOはゼロにはなりません。レプリケーション間隔は(10分/1時間/1日)から選択でき、RPOは一般的に「同期間隔の2倍未満」となります。例:10分間隔 → RPOは20分未満 - レプリケーションしているボリュームは読み取り専用
非同期であるため、通常時はソースボリューム以外のボリュームには書き込みが出来ない仕様です。フェイルオーバー操作を実行した場合のみ、レプリケーション先ボリュームへの書き込みが可能になります。 - フェイルオーバーは自動移行されないため手動対応が必要
フェイルオーバー/フェイルバックはすべて手動操作です。自動切替機能は現時点(2026年1月時点)では提供されていません。 - SLAについては冗長性の種類に限らず99.99%
ANFのSLAは冗長性の種類に限らず、すべて99.99%に定められています。ANFは高い冗長性を取ることでSLAが高くなるわけではありませんので、ご注意ください。 - リージョンレプリケーションとペアリージョンの制約
ANFのリージョンレプリケーションは、ペアリージョンとして定義されているリージョン間でのみ構成可能です。Microsoftでは各リージョンに対してあらかじめ「ペアリージョン」が設定されており、リージョンレプリケーションを利用する場合は必ずこのペアリージョン同士である必要があります。
(参考)Azure NetApp Files レプリケーションについて | Microsoft Learn
例えば、東日本リージョンのペアリージョンは西日本リージョンのみです。そのため、東日本リージョンにソースボリュームをデプロイした場合、レプリケーション先として選択できるのは西日本リージョンのみとなります。この制約により、2026年1月時点だと日本リージョン内では、クロスゾーン・リージョンレプリケーションのようにレプリケーションボリュームを2つデプロイする構成は実現できません。一方で、米国リージョンには複数のペアリージョンを持つリージョンが存在します。そのため、リージョンの選択次第では、複数のレプリケーションボリュームを用いたクロスゾーン・リージョンレプリケーション構成を実現することも可能となります。
まとめ
Azure NetApp Files の冗長性は「クロスゾーンレプリケーション」「クロスリージョンレプリケーション」「クロスゾーン・リージョンレプリケーション」の3つを軸に構成されており、それぞれ異なる種類の障害に備えることができます。
- ゾーン障害に耐える構成 → クロスゾーンレプリケーション
- リージョン障害に耐える構成 → クロスリージョンレプリケーション
- どちらの障害にも備えたい → クロスゾーン・リージョンレプリケーション
クロスゾーン・リージョンレプリケーションは、これまでより柔軟で強力な冗長化を実現できる新機能となっております。
弊社はAVDのプロファイル管理をはじめとした多数のANF導入実績がございますので、要件に合わせた最適な構成をご提案可能です。
「ANF導入したいけどイメージが湧かない」「ANFの冗長化を検討している」など気になる点がございましたら弊社にお気軽にご相談ください!
この記事を書いた人

- Azure支援デスク 管理者
- 双日テックイノベーション(旧:日商エレクトロニクス)特設サイト「Azure導入支援デスク」サイトマスターです。
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