「この前も同じ対応をしたよね……」
情シスの現場で、トラブルの再発案件があるたびに聞くような言葉です。
過去の対応が記録されていない、対応を依頼した部署でも誰も憶えていない、そんなことだから同じことがまた起きる。何度も起きるトラブル対応に追われると、情シスの時間はどんどん奪われていきます。
このように情シスが火消し係になってしまうのは、「再発防止策の不在」が原因と言えるでしょう。
都度の対応そのものではなく、同じ問題を再発させないような、「対応の質」が問われています。
目次
なぜ再発トラブルが減らないのか?
トラブルが再発するたびに大変な思いをするわけですが、対処時に過去の記録があてにならないケースが多く見られます。再発があるたびに「あのときどう対応したか?」を毎回聞き回ることになってしまうのはなぜか、原因を整理してみましょう。
・対応が属人化している
「あの人が前やっていた」で終わってしまうケースです。すべてその人任せになってしまうため、対応の記録や対処法が共有されずにいることが多くなります。他の人が対処することになったときは、また最初から対応をすることになってしまいます。
・「一件落着」で終わってしまう
多忙のあまりトラブル対処が完全に「来たらこなすもの」と認知されていて、終われば一件落着、その後に原因や対処を振り返る時間がない、ということも考えられます。そうなると記録などもされないので、やはり来るたびに最初からという悪循環が形成されてしまいます。
どちらのケースでも、結果として似たようなトラブルがあったときに前回の学びが活かされないことになります。「トラブルが再発するのは仕方のないこと」ではなく、「記録・共有・学習」の仕組みが不足していることによって再発が防止されない状況を作ってしまっているのです。
再発トラブルを防ぐ3つのアプローチ
再発を防止するため、「対応の質」を上げる仕組みを作る3つのアプローチをご紹介します。
1:「記録を残す」を当たり前にする(インシデントログの整備)
対応の記録を残し、必要なときにいつでも共有できる環境を整えましょう。
手軽な情報共有の方法としてはメジャーで多機能なコミュニケーションツールTeamsや、チーム用にポータルサイトを作成できるSharePoint、自由度が高くまさにノートのように扱えて共有も容易なOneNoteなどを使うのもいいですし、事案ごとのタスク管理として記録を残せる点ではAsanaを導入するのもひとつの手。発生日時、内容、対応者、対応内容をテンプレート化されたフォーマットで記録し、誰でも検索・更新しやすいツールで一元管理することが重要です。
そうすることで、定期的に「過去の対応履歴」を見直すことができ、再発傾向に早く気づける場面も出てくるでしょう。
2: 「ふりかえり」を仕組み化する(ナレッジとして共有)
トラブル対応後には、「なぜ起きたのか?どう対応したか?」を簡単に、共有できる形でまとめましょう。起因・影響・改善策の3点を短く整理すれば、扱いやすい実践記録となります。前述の1でご紹介したツールなどを介して情報共有することで、知見をチーム全体で持つことができるようになります。
3: 「次に同じことが起きたらどうするか?」を決めておく(対応の標準化)
よくある再発パターンは、標準対応フローやFAQに落とし込みましょう。これを元に対応のテンプレート化やチャットボットへ登録することで、次回以降の対応を効率化することができます。
これと合わせて、「誰が・いつ・何をやるか」を事前に決めておくことで、2回目以降の対応負担は確実に軽くなるでしょう。
再発の負担は減らせるもの
記録・ふりかえり・標準対応の3ステップで、2回目の同じトラブルは激減させることができます。情シスの負担を減らすルートは、“対応力”ではなく“学習力”を高めることと言えるでしょう。
トラブル再発は減らせないものではなく、再発させない仕組みがないというだけ。そういった意味では、「トラブルが再発するのは仕方ない」と思い込むことこそが、最大のトラブル再発の原因かもしれません。
この記事を書いた人

- 小杉 明恵
- マーケティング担当として、Azureを中心に情報を発信しています。
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