クラウドの利用が一般化する中で、自社のIT基盤をMicrosoft Azureをはじめとしたクラウド環境へ移行する企業が増えています。
この記事では、クラウド活用のファーストステップとして、ファイルサーバーのクラウド移行を検討されている方向けに、Microsoft Azureで構築するファイルサーバーの概要や機能などについて詳しく解説します。
こんな人にオススメの記事です
・ファイルサーバーのクラウド化を検討している方
・Azureでのファイルサーバーの構築に関して概要が知りたい方
目次
1. Microsoft Azure でのファイルサーバー構築の選択肢
Microsoft Azureでファイルサーバーを構築する方法にはどのような選択肢があるのでしょうか。
以下で解説します。
Azureでクラウド化する4つの方法
Azureでは、以下の4つの方法でファイルサーバーを構築することができます。
手法 | 概要 |
Azure Files | ・フルマネージドのサーバーレスファイル共有サービス。 |
Azure File Sync | ・Azure FilesとWindowsサーバー上のフォルダや共有フォルダを同期。
・Azure Filesで不足する機能をWindows Serverで補完可能。 |
Azure NetApp Files | ・NetApp社のONTAPストレージをAzureサービスとして利用。
・高いパフォーマンスが特徴 |
Azure VMのファイルサーバー | ・Azure上にVMベースのファイルサーバーを構築する方法。
・SLA等の要件に合わせて柔軟な構成を実現 |
4つの方法を比較
それぞれの方法にはどのようなメリット・デメリットやユースケースが考えられるのでしょうか。下表で比較を行います。
手法 | メリット | デメリット | ユースケース |
Azure Files | ・導入が容易で低コスト
・SMB、NFSでアクセス可能 |
・カスタマイズ性が低い | ・低コストでのファイルサーバー運用 ・運用負荷の低減 |
Azure File Sync | ・オンプレミスへアクセスするためパフォーマンス向上が可能 ・階層化機能で容量の削減ができる |
・オンプレミス側にキャッシュサーバーを構築する必要がある | ・オンプレファイルサーバーの容量削減 ・メンテナンス削減 |
Azure NetApp Files | ・導入が容易 ・SMB、NFSでアクセス可能 ・パフォーマンスに優れる |
・コストが比較的高い | ・ファイルサーバーの読み書き性能を重視 |
Azure VMのファイルサーバー | ・オンプレミスとの互換性が高い ・カスタマイズ性が高い ・要件に応じてVM・ストレージを選択できる |
・仮想マシンの管理が必要 | ・監視ツールの継続利用など、現行のファイルサーバーの運用を変更したくないケース |
以下では、それぞれの方法について詳細を解説します。
2. Azure Filesとは
Azure Filesの概要
Azure FilesはAzure上で提供されるファイル共有サービスです。Windows、Linuxなど様々なOSで利用することができます。また、ファイル共有で一般的であるSMB(Server Message Block)及びNFS(Network File System)プロトコルを採用しているため、現行のオンプレファイルサーバーから移行する際に互換性の問題が起きにくいのも特徴です。
セキュリティ面でも、SMB3.0での暗号化、もしくはHTTPSによる暗号化を実施することができます。
Azure Filesのバックアップ方式
Azure Filesでは、「共有スナップショット」及び「Azure Backup」にてバックアップを行うことができます。
共有スナップショットでは、特定時点のデータを読み取り専用でコピーできます。最大で200スナップショットまで取得可能であり、Azure Filesと同じアカウント内にバックアップが作成されます。
一方でAzure Backupでは、別のアカウントにバックアップできるため、可用性が向上するというメリットがあります。バックアップジョブもAzure Backup内で管理でき、スケジューリングも設定することができます。
3. Azure File Syncとは
Azure File Syncの概要
Azure File SyncはオンプレミスのWindowsサーバー上のフォルダをAzure Files上のファイルと同期し、分散キャッシュとしてどこからでも同じファイルを扱うことができるサービスです。Azure Filesとデータを同期させることで、各拠点のファイル共有を一元化できます。
Azure File Syncの利用シナリオ
Azure File Syncは主に以下のような用途で利用できます。
項目 | 概要 |
マルチサイトアクセス | 複数拠点でデータを同期して利用することができる |
クラウド階層化 | 利用頻度の高いものはオンプレのWindowsサーバーにキャッシュし、それ以外はAzure上に格納することで効率化できる |
クラウドへの直接アクセス | SMBやRESTによりAzureへ直接アクセスできる |
共有スナップショットによるバックアップ | 上述した共有スナップショットによるバックアップを行う |
迅速なDRの実施 | オンプレのWindowsサーバーのファイルが破損した場合にも、すぐにAzureから再同期できる |
Azure File Syncのアーキテクチャ
Azure File Syncでは、配下にいくつかの同期グループを設置することができます。ひとつの同期グループ内には、同期対象とするクラウドエンドポイントとしてAzure Filesを指定の上、さらにその配下に最大で50のサーバーエンドポイントを設置することができます。
使用頻度が低いファイルはAzure Filesへ保管し、頻度が高いもののみをキャッシュとしてサーバーエンドポイントに保管できます。その際、ボリューム空き容量のうちどの程度の割合をキャッシュに利用するかや、キャッシュ対象ファイルをどの様な条件に基づき選択するかなど、条件を指定することができます。
4. Azure NetApp Filesとは
Azure NetApp Filesの概要
Azure NetApp FilesはNetAppのONTAP※を基盤としたストレージサービスです。Azure NetApp Files はAzureのネイティブサービスとして提供され、サポートもMicrosoftが実施します。クリティカルな環境向けにも活用できるパフォーマンスが特徴であり、SLAでの稼働率は99.99%となっています。
※ONTAP:NetAppが提供するストレージ用のOS
Azure NetApp Filesのアーキテクチャ
Azure NetApp Filesは、Azureのデータセンター内にベアメタルストレージとして設置されています。ストレージはAzureの内部ネットワークに接続されており、サーバー構築から障害やセキュリティの監視と対応まで、フルマネージドサービスとして提供されます。
Azure NetApp Filesのバックアップ方式
Azure NetApp Filesでは、以下の3つのバックアップを利用することができます。
ボリュームスナップショット | クロースリージョン レプリケーション |
Azure NetApp Files Backup(プレビュー機能) | |
保存先 | ・ボリューム内 | ・DR向けリージョン | ・Backup Vaultの内蔵Blobストレージ |
バックアップ方法 | ・手動 or スケジューリング | ・スケジューリング | ・手動 or スケジューリング |
料金 | ・ボリュームの空き容量を利用するため別途料金は不要 | ・DRリージョンの容量 および データ転送に対して発生 | ・使用されるバックアップ領域 および 復元されたバックアップの容量に対して発生 |
利用シナリオ | ・オペミス時のデータ復元、以前の状態へのリストアなどへの対応 | ・災害対策要件があるケース | ・Azure NetApp Files外にデータをバックアップしたいケース |
5. まとめ
この記事では、ファイルサーバーのクラウド移行を検討されている方向けに、Microsoft Azureで構築できるAzure Files、Azure File Sync、Azure NetApp Files、Azure VMのファイルサーバーの4つのファイルサーバーの概要や機能などについてご紹介しました。
例えば、低コストでファイルサーバーの運用を行いたい場合には、Azure Filesが向いているといえます。また、オンプレファイルサーバーの容量削減を目的とする場合は、クラウド階層化が可能であるAzure File Syncが有効です。一方で、ファイルサーバーの性能や可用性などを重視する場合には、Azure NetApp Filesが選択肢となります。自社の要件に応じて、どのサービスを利用するか検討することをおすすめします。
また参考資料(「Azureで構築できるファイルサーバー 4つの方式を解説」)も用意しております。ぜひご活用ください!
\ Azureで構築できるファイルサーバー 4つの方式を解説! /
本内容は、2022年3月4日に開催いたしました、「ファイルサーバーからはじめるAzure移行セミナー」にて詳しく解説しております。
オンデマンド動画をご用意しておりますので、宜しければ上記資料とあわせてご覧ください。
この記事を書いた人
- Azure導入支援デスク 編集部
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