ファンクラブ会員の行動履歴に基づいた
One to Oneマーケティングの実践に向けて
ファンクラブのデータを集計し、MAツールと連携
チケット、グッズ、飲食などの売上データを活用し、シーズンチケット販売などのクロスセルの強化を実現

オリックス野球クラブ株式会社
事業本部 事業企画部 企画グループ
主任 洞井 知彦 氏

企業名:オリックス野球クラブ株式会社
阪急電鉄からの球団譲渡に伴い、1988年に発足。1990年の「オリックス・バファローズ」への球団名変更に際して、会社名も「オリックス野球クラブ」となる。京セラドーム大阪を本拠地とした主催試合の集客・チケット販売、ファンクラブの企画・運営などを行うほか、近年は練習風景のライブ配信、SNSを介した情報発信など、オンラインのマーケティング施策にも注力。

データに基づくマーケティングを支える
CRM基盤のデータ集計とMAツールへの連携

プロ野球球団「オリックス・バファローズ」の運営会社として、チケットの販売やファンクラブ運営のほか、新たなファンの獲得に向けたさまざまな施策を推進するオリックス野球クラブ株式会社。多くのプロ野球球団が独自のマーケティング戦略でファンを獲得する中、同社もファンクラブ「BsCLUB」での特別サービスや、女性向けイベント「Bsオリ姫デー」などを通じてファンとのエンゲージメントを高めている。

同社では、こうしたファンクラブの運営を2012年に導入したCRM基盤を使って管理を行っている。このシステムは売上データなどを管理する外部システムとも連携し、チケットやグッズの購入、飲食によってポイントが貯まる「Bsポイント」のサービスも提供している。

ファンクラブ会員データを管理するCRM基盤では、これまでスタジアムへの来場、チケットやグッズの購買履歴、ファンクラブへの登録状況など、さまざまな行動データを蓄積してきたが、データ分析に基づく効果的な施策は実践できていなかった。そこで同社が検討を開始したのが、既存のCRM基盤のデータを統合し集計するデータ連携基盤と、その分析結果をもとにマーケティング施策を実行できるMAツール「Marketo」の導入だった。事業本部 事業企画部 企画グループ 主任の洞井知彦氏は次のように話す。
「CRM基盤のデータを集計しMarketoに連携する最大の目的は、会員データに基づく効果的なマーケティング施策の実施にあります。これにより、例えば球場に来て来場ポイントを付与した会員に対して、その場でおすすめイベントの案内や、飲食、グッズなどに関する情報をお知らせするなど、リアルタイムな施策を実施できるようになります」

オリックス様コメント:「EAIツールを活用した低コストでスピーディな導入提案、豊富なデータ連携実績を評価して、日商エレクトロニクスにデータ連携基盤の構築をお願いしました」

低コストかつスピーディな導入提案と
厳格なセキュリティ要件への対応を評価

CRM基盤のデータ集計とMAツールとの連携に際しては、日商エレクトロニクスをパートナーに選定した。選定の決め手は、EAIツールを活用した低コストでスピーディな導入提案と、豊富なデータ集計・連携実績にあった。

「Marketoを導入したのが2019年11月で、オープン戦がスタートする2020年3月まで4カ月しかありません。複数のベンダーに提案を依頼した中で、コストと納期の両方に応えることができたのは日商エレクトロニクスだけでした。CRM基盤上のデータを加工して連携するという要件に対しても、柔軟に応えられるという回答をいただきました」(洞井氏)

また、同社のシステムはセキュリティ面でも金融サービスを提供するオリックスグループの厳しい基準に準拠する必要があるが、日商エレクロニクスの提案はこの要件も満たしていたという。「事前にセキュリティチェックシートをお渡しして回答をいただきましたが、オリックスグループ独自の基準を満たしており、安心して任せられると判断しました」と洞井氏は振り返る。

クロスセル活性化などの成果を生み出すデータ連携基盤

8部門の施策の要件を連携項目に反映
常に最新のデータを利用できるよう再集計

CRM基盤のデータを集計しMAツールに連携させるプロジェクトは、2020年1月からスタート。要件定義、データ連携、連携確認テストなどを経て、2020年3月のオープン戦に間に合う形で無事に終了した。
プロジェクトには、企画グループを統括役に、ファンクラブ担当、チケット担当、グッズ担当、イベント運営担当、SNSの宣伝担当、シーズンチケット担当、飲食関連の関係会社を加えた8つの部門が参画。企画グループは各部門から実施したいマーケティング施策をヒアリングし、連携項目に落とし込んでいった。
データの連携でもっとも苦労した点は、データの再加工・再集計だった。同社では現在、例えばグッズの売上データであれば、CRM基盤などで管理している直近3カ月分のデータを集計し利用している。施策で使うデータは常に最新ものが必要となるが、大量のデータの集計処理には負荷がかかってしまう。
「データ量は、CRMや他の連携システムと合わせるとかなりの種類・量になります。ここに会員データを紐付けて、3カ月分の最新データを加工して抽出しなければなりません。こうした要件に対しても、日商エレクトロニクスはDBの仕組みを理解した上で柔軟に対応してくれました」(洞井氏)


ファンクラブ会員個人に対するOne to Oneマーケティングの実現

CRMデータの集計、MAツールへの連携は、管理するデータに応じて原則として1日1回の頻度でバッチ連携している。会員情報の更新は朝一番、チケット、グッズ、飲食などの売上データはすべてが確定する10時といった具合だ。例外として、試合中の会員データは1時間に1回連携し、来場者に対しておすすめ情報の案内などを行っている。
このデータ連携によって、CRM基盤で把握したファンクラブ会員の行動履歴や、チケット、グッズ、飲食の売上げ状況などに応じて、ファン個人に対するOne to Oneマーケティングが実施できるようになった。
「この点は以前の状況との大きな違いです。過去にグッズを購入してくれた会員に対しシーズンチケットを案内するなど、データをもとにした施策を実行し検証することができています。ファンクラブ会員がグレードをアップする際も、それがどのキャンペーンの成果によるものなのかを把握できるようになりました」(洞井氏)

実施した施策の成果は、各部門の担当者が集まる毎月の定例会でフィードバックし、新たな施策へとつなげている。
「定例会では、チケット担当からはファンクラブ会員ランクに合わせた内容の案内を送りたい、グッズ担当からは過去における同様の商品購入者に対して販促を行いたいといった要望が毎回のように出されます」(洞井氏)

各部門の担当者がデータをもとにしたさまざまな施策を考えるようになってきているため、組織が活性化し、クロスセルにつながっている。例えば、2021年に阪神タイガースから移籍した能見投手のグッズ売上が急増したことを受けて、シーズンチケット担当チームがグッズ購入者に対して高額なシーズンチケットを提案したところ、予想外の成果に結びついた例もあったという。
「結果として、データ連携基盤の構築コストとランニングコスト、MAツールにかかる費用をすべて合わせても、投資した数倍以上のコストメリットが出ています。特に2020年はコロナ禍で試合数も減り、無観客試合もあってチケット収入が激減する中、想定以上の効果がありました」(洞井氏)

顧客接点の強化に向けてIoTデータなどの活用も検討

オリックス野球クラブでは今後、一般のファンや球場への来場者、ECサイトの利用者など、オフライン、オンラインを問わず、これまで以上に広範なデータを収集・分析することで、さまざまなマーケティング施策につなげていく考えだ。顧客との接点もIoTデバイスやWi-Fiによる位置データの活用などを視野に入れており、新たなデータ基盤の構築も検討しているという。
「より広範なデータを収集・分析する横への拡大と、顧客接点を増やす縦への拡大。この2つを通じて部門を横断したデータ活用を促進し、より多くのお客様に喜んでもらえるサービスを提供していきます。この中で日商エレクトロニクスには、データの連携や加工を中心にさらなる支援を期待しています」(洞井氏)

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